危険な早朝高血圧
血圧の値は一日の間でかなり変動します 一般的には *朝 目覚めとともに急上昇し 午前中は高いまま維持する *午後少し下がり 夕方にまた高くなる *夜には下がり 寝ているあいだは10~20%ほど低下する といった1日の変動パターンを呈します 高血圧の人も 同様の日内変動パターンを呈します このような日内変動を サーカディアンリズムと呼びますが 朝から午前中にかけては *血圧を上げる作用を持つ交感神経の働き *ホルモンの分泌 が活発になり 夜はそれらの働きが弱まることによって 血圧が下がります この血圧のサーカディアンリズムに 異常が見られることがあり 特に夜間から早朝にかけての 血圧低下に異常をきたすパターンが 臨床的に重要です *夜間血圧があまり下がらないタイプ :non-dipper型 *早朝血圧の上昇が著明なタイプ :Riser型 睡眠時無呼吸症候群 心不全 腎不全 糖尿病による自律神経障害 などが原因で生じますが この血圧のサーカデイアンリズムの異常は 侮れません というのも 夜間血圧が下がらないタイプは 心血管病の危険因子となる と報告されているからです 特に危険なタイプが 早朝高血圧 です 早朝血圧が 寝る前の血圧より15mmHg以上高く 135/85mmHg以上 ある場合で 薬による血圧治療を受けている患者さんの 半数以上が早朝高血圧との報告もあります 寝る前にも血圧測定していただきたいのは この早朝高血圧を見つけるためです 早朝高血圧には *夜間の血圧低下がわずかで さらに早朝に上昇するタイプ *夜間は血圧が低下するが 早朝に急激に血圧が上昇するタイプ があり 早朝に急激に上がるタイプは危険で 心血管病 脳卒中のリスクが 通常の高血圧と比べても高くなります 早朝には 血圧上昇作用がある交感神経系 ホルモン系(レニン系 コルチゾール系) が活性化し さらに血管のなかで 血が固まり血栓ができやすくなる傾向があるため 脳や心臓の血管が詰まりやすくなると考えられています 実際に 心血管病や脳卒中は 午前6時~11時頃の時間帯に多発しますが その原因に 早朝高血圧が大きく関与していると思われます このような 早朝高血圧による心血管病や脳卒中を避けるためには *目覚めて10分間くらいは 布団やベットで安静にしていて 交感神経系が急に活性化するのを防ぐ *起きたあとも余裕をもって行動する *起床後に室温が低いため急な温度の変化が起きると 余計に血圧が上昇するので 起床後に寒いと感じないように すぐに暖かい上着を着る 部屋を暖かくする といった「起床の仕方」に注意する必要があります 早朝高血圧は 危険なタイプの高血圧ですから 高血圧で薬を飲まれている方は 家庭血圧を測定され ご自身に早朝高血圧の傾向があるか確認されることを お勧めします サーカデイアンリズムがあるのは 血圧だけではありません この問題は奥が深くて 睡眠障害はもちろん 糖尿病などの生活習慣病にも関わってきます またサーカデイアンリズムが形成される機序も だいぶわかってきました このあたりは興味深いですので また別のシリーズでご説明します
高橋医院