夜はやっぱり暗くないと
睡眠時間の短縮や質の低下が糖尿病を引き起こすことを ご紹介しましたが そもそもヒトにはどうして 寝たり起きたりする睡眠リズムが あるのでしょう? 16世紀にガリレオが 「それでも地球は動く」と異端訊問でも頑張ったように 地球は自転していますから 太陽がきらめく昼と 月が輝く夜が 交互に訪れる ヒトは太古の昔から生存するために そうした抗いようもない自然環境に適応した生き方を 身に着けてきました それがサーカデイアンリズム(概日リズム)です 朝 明るくなったら目覚めて活動する 夜 暗くなったら活動をやめて体を休めて寝る そのリズムを繰り返すことで ヒトは自転する地球の上で生きながらえてきたのです そして ヒトのさまざまな生体反応は この概日リズムに支配されています 睡眠はもちろん ホルモン分泌 血圧や体温の調節 栄養素の代謝 などなど、、、 つまり これらの生体反応は昼と夜では働き方が異なる ここが大きなポイントです しかし現代社会では この概日リズムが乱れてきています その大きな原因のひとつは 照明によって夜が明るくなってきたこと 昔は夜になると暗くなったので ヒトは自然に寝ていましたが 照明で明るい夜になったので いつまでも寝ない宵っ張りの人達が現れた 夜眠くなるのは メラトニンという脳内で分泌されるホルモンの影響が大きい メラトニンは昼間の分泌量が少なく 夜になると分泌量が増し 夜中2時に最高値になる メラトニンの作用によりヒトは眠くなりますが 夜に光を浴びると脳が昼間と勘違いして メラトニンの分泌が抑制されるので 眠たくなくなってしまいます だから夜に明るいのはマズイ! もうひとつの大きな原因は 不規則な時間の食事です 冷蔵庫ができて コンビニやファミレスができて 夜何時でも食事できるようになった (なぜ食事が関わってくるかは こちらをご覧ください) しかも夜のコンビニは異常に明るい! こうした社会環境の変化は ヒトの概日リズムを 大きく狂わせるようになりました その乱れが 概日リズムで支配されている ホルモン分泌 栄養素の代謝 自律神経などの乱れ を誘い さまざまな障害が生まれてきているのです 概日リズムの変化は さまざまな病気の発症に関与しています もちろん糖尿病もそのひとつです それにしても ここまで書いてきてつらつら思うのは 太古の昔は食糧事情が悪かったので ご先祖様は飢餓に耐えられる体質を作った しかし今は飽食の時代になり その体質があだになり糖尿病が増えてきてしまった 塩が貴重だったので ご先祖様は塩分を体内に保持する体質を作った しかし今は塩が簡単に手に入り 外食で沢山の塩分をとるので 高血圧が増えてきてしまった そして今度は 昔と異なり 夜が明るく いつでも食べられる社会環境になったので 慨日リズムに反した夜更かしや夜食が増えて さまざまな健康面での障害が出てきている 現代人が抱える生活習慣病や健康問題の多くは ご先祖様から引き継いだ体質と社会環境の変化の コンフリクトから生まれてきているようで そう思うと なんだか複雑な気分です 現代社会は便利になったけれど その代償で(?) さまざまな健康上の問題が出てきてしまった かといって 原始人の生活に戻るわけにはいきませんしね、、、 ちなみに 個人的には暗い夜は嫌いではありません 照明は直接より間接の方が落ち着くし 明るい青い光より 少し暗い暖色系の光が好きです やっぱり夜は暗くないと 今宵は部屋の照明を落とし気味にして 谷崎の陰翳礼讃でもひもときましょうか、、、
高橋医院