家庭や職場でのノロウイルス対処法
昨日のブログで説明したように ノロウイルスの感染は 人から人へ感染する場合 と 食中毒による感染 に大別されますが 人から人へ感染は 多くの場合 ウイルスが大量に含まれている 患者さんの糞便や吐物 が 感染源となります 家族や会社の方が 万が一 自宅や職場で吐かれたりした場合 誰かがその処理をせざるを得ません その時点では 吐かれた方がノロウイルスによる 感染性胃腸炎かは不明ですが ノロによる可能性を考えて 適切な処理を行う必要があります そこで そうした状況での対処法と注意を解説します <手洗い> ノロウイルス感染予防の基本は 手洗いの励行です 手洗いは 手指に付着しているノロウイルスを減らす 最も有効な方法で *調理を行う前 (特に飲食業を行っている場合は食事を提供する前も) *食事の前 *トイレに行ったあと *患者さんの汚物処理やオムツ交換等を行った後 (手袋をして直接触れないようにしていても) には 必ず行いましょう 常に爪を短く切って 指輪等をはずし 石けんを十分泡立て ブラシなどを使用して 手指を洗浄します すすぎは 温水による流水で十分に行い 清潔なタオル又はペーパータオルで拭きます 石けん自体には ノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが 手の脂肪等の汚れを落とすことにより ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります 消毒用エタノールによる手指消毒は 石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりませんが すぐに石けんによる手洗いが出来ない場合 補助として用い得ます <次亜塩素酸溶液で消毒する> ノロウイルスの予防に関して まず知っておきたいことは アルコールやエタノールでは ウイルスを消毒できないことです ノロウイルスを消毒できるのは 次亜塩素酸だけです 糞便や吐物が付着した 床やトイレ 衣類などの消毒には 次亜塩素酸ナトリウム0.1%(1000ppm)の消毒液 おもちゃ 調理器具 直接手で触れる部分 などの消毒には やや薄めの0.02%(200ppm)の消毒液を用います 家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも 代用できますが 使用に当たっては 必ず「使用上の注意」を確認してください @漂白剤を使っての次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方 *次亜塩素酸ナトリウム0.1%(1000ppm)の消毒液は 500mlペットボトルに 通常飲料が入っている程度の水と キャップ2杯分の漂白剤を入れればOK *0.02%(200ppm)の消毒液は 2Lのペットボトルに 通常飲料が入っている程度の水と キャップ2杯分の漂白剤を入れればOKです <患者さんの糞便や吐物を処理する際の注意> ノロウイルスによる胃腸炎患者に接する場合は ウイルスが大量に含まれている 患者さんの糞便や吐物を適切に処理し 感染を広げないようにすることが大切です こうした状況は 医療機関だけでなく 家庭や職場でも起こり得ます @汚染から時間がたった物からも感染する! 注意したいことは 糞便や吐物に汚染されたものから 汚染されてからかなり長い期間たっても 感染するリスクがあることです 10日以上前にノロウイルスに汚染されたカーペットを通じて 感染が起きた事例もあり 時間が経っても 患者の吐物や糞便により汚染された 床や手袋などには 感染力のあるウイルスが残っている可能性があります このため これら感染源となるものは 必ず処理する必要があります @処理の具体的な手順 実際に処理を行う際の手順 注意は *使い捨てのガウン(エプロン) マスク 手袋を着用 (手袋は2枚重ねで着用する) *処理者以外を近くに立ちよらせない *汚物中のウイルスが飛び散らないように 糞便 吐物をペーパータオル等で静かに拭き取る *拭き取った後は 次亜塩素酸ナトリウム溶液で 浸すように床を拭き取り その後しばらくたってから水拭きする *広範囲に洗浄する *おむつ等は速やかに閉じて 糞便等を包み込む *おむつや拭き取りに使用したペーパータオル等は ビニール袋に密閉して廃棄する *この際 ビニール袋に廃棄物が充分に浸る量の 0.1%(1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム溶液を 入れるのが望ましい *ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い これが口に入って感染することがあるので 吐物や糞便は 乾燥しないうちに床等に残らないよう速やかに処理し 処理後はウイルスが屋外に出て行くよう 空気の流れに注意しながら十分に喚気を行う *処理後には 手洗い うがいを忘れずに行う @トイレでの注意 特に感染源になりやすいのはトイレで 充分な注意が必要です トイレのドアノブも 忘れないように消毒してください トイレの便座 *トイレの便座は ノロウイルスに非常に感染しやすく 気付かないうちに感染している恐れが大いにあるため 座る前に便座の除菌はしっかりと行う *便座クリーナーをトイレットペーパーにつける *便座を拭き 拭いたペーパーを流す *これを2~3回繰り返し行います *1度使ったペーパーで 再度便座を拭かないようにすること! ドアノブ以外にも カーテン リネン類 日用品などからも ウイルスが検出されることがありますから 注意が必要です @職場などで 汚物処理のシュミレーションをしておきましょう! たとえこうした注意を読まれていても 実際に患者さんが急に吐かれたりした場合は きっとびっくりしてしまい あたふたして 感染を広げるような不適切な行動を とってしまう可能性がありますから 家庭や職場で どなたかがリーダーとなり 皆さんで一度シュミレーションされておくことを お勧めします
高橋医院