冬の感染性胃腸炎といえば 
ノロウイルスが有名ですが

今年はノロウイルスによる感染性胃腸炎の
大流行が懸念されています

<2015年シーズンのノロウイルス感染性胃腸炎は
 変異ウイルスに要注意!>

既にノロウイルスによる
感染性胃腸炎の感染が広がっていて

この時期としては
大きな流行となった2006年に次いで
過去10年で2番目の多さとのことで
厚労省が注意を呼びかけています

ノロウイルスの警鐘ポスター

というのも
今年流行しているノロウイルスは
昨年まで流行していたウイルスとは
遺伝子型が異なるため

誰もこのウイルスに対する
免疫を有していないので
大流行する危険性があるのです

ノロの流行を伝えるテレビニュース

2014年12月までは
GII.4という遺伝子型の
ノロウイルスが流行していましたが

2015年1月から
GII.17変異株(正式にはGII.P17-GII.17)が
検出され始め

2月にはGII.17変異株が優位となり
今年10月になり新たに感染が増え始めても
その傾向が続いているのです

報告されたノロウイルス感染者数とその遺伝子型
上の表に示されているように
昨年は下から6番目の
GII.4が多かったのですが

今年に入って1番下の
GII.17変異亜株が
急に増えてきているのがわかります

このGII.17変異株
これまで流行した遺伝子型とは
全く異なる新規の遺伝子型で

これまでノロウイルスに感染したことがあり
ノロウイルスへの抗体を有していても
その抗体はGII.17変異株の感染防御には
役立たないと考えられます

つまり 
現段階ではGII.17に対する免疫を持っている人は稀で
それだけに 予防や対策をしっかり行わないと 
今年は例年以上に 
多くの方が感染する確率が高いと推測されているのです

厚労省が注意を喚起するのには こうした事情があります

<ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒の概説>

@流行する時期

ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は
例年 11月くらいから
発生件数は増加しはじめ 
12月~翌年1月が
発生のピークになる傾向があります

冬に多い胃腸炎の代表選手です

ノロウイルスは
わずか1日で100個ほどのウイルスが
10万~1億ほどに急激に増え
感染力のみならず増殖力も高い厄介なウイルスです


@症状

手指や食品などを介して経口的に感染して
ヒトの腸管内で増殖して
感染から1~2日の潜伏期を経て
嘔吐 下痢 腹痛などの症状を起こします

下腹部を抑えながら嘔吐する女性

突発的な腹痛や吐き気を催すことが多く
トイレにこもりきりにならざるを得ないような
激しい嘔吐や下痢
認めることが少なくありません

下腹部を抑える女性

頭痛 発熱 悪寒 筋痛 咽頭痛 倦怠感などを
伴うこともありますが
発熱は軽度な場合が多い

健康な方は 
これらの症状が1~2日続いた後に治癒して
後遺症も残りませんが

子供やお年寄りなどでは 
脱水症状を起こして重症化する可能性があるので
充分な注意が必要です


@治療

残念ながらワクチンはないので 
治療は輸液などの対症療法に限られます


@感染経路

感染経路は主に経口感染
人から人へ感染する場合 と 
食中毒による感染 
に大別されます

ノロウイルスの感染経路

人から人への感染は
*ノロウイルスが大量に含まれる
 患者さんの糞便や吐物から
 人の手などを介して二次感染する

*家庭や共同生活施設など
 ヒト同士の接触する機会が多いところで
 飛沫感染等により人から人へ直接感染する
 
といった場合があり

食中毒による感染は
食品取扱者
(食品製造等に従事する方 飲食店で調理する方など)
 が感染しており
 その方を介して汚染した食品を食べた場合
 近年増加傾向にあります

*汚染されていた二枚貝を
 生あるいは十分に加熱調理しないで食べて感染する

といった場合があります


@検査

ノロウイルスに感染しているかは
糞便中のノロウイルスを検査キットで
検出して調べますが

健康保険では
3歳未満 65歳以上の方に適用が限られており
それ以外の年齢の方の検査は自費扱いになります

ただし 検査でノロウイルス感染が明らかになっても
前述したように治療は輸液などの対症療法に限られます


ノロウイルスによる感染性胃腸炎は
不幸にして感染された患者さんが出た場合に
いかにして感染を拡大させないかが
重要なポイントです

冒頭に書きましたように
今年は新しい遺伝子型のウイルスによる
大流行が危惧されていますので
例年以上に注意する必要があります

次回はノロウイルスの予防法について
詳しく解説します
高橋医院