薬物と食品の飲み合わせにより 

薬物の効果が 
予想以上に強く現れたり 
逆に期待した効果が得られなくなる

ことがあります

血圧が高く降圧剤を服用されている患者さんは
降圧剤の種類によっては
グレープフルーツジュースを飲まないように
指導されたり

不整脈や脳梗塞の治療で
抗凝固薬のワーファリンを服用されている患者さんは
納豆を食べすぎないように注意されたり

こうした
「ある種の食品は 薬を飲むときはダメ」
という事実だけが
詳しい解説抜きでネット上にでまわっていて

それを読まれた 
降圧剤以外の薬を服用されている患者さんが
「私はグレープフルーツジュースを飲めないのですか?」と
過度に心配されて聞かれることが少なくありません

お気持ちは解りますが
心配のし過ぎは 
精神衛生上よくありません


一方で 
グレープフルーツや納豆などの食品だけでなく
健康食品やサプリメントも
種類によっては薬物との相互作用がみられるので
注意が必要です

サプリだから大丈夫と安心していると
心配な結果を招いてしまうこともあります

そこで 薬物シリーズの最後に
食品・サプリメントと薬物の相互作用について
説明します


食品・サプリメントと薬物の相互作用の解説図


<どんな食品・サプリメントがマズいの?>

既にお酒と健康に関する解説で
アルコールと薬物の相互作用については
説明しましたが

薬物との相互作用で問題となる食品・嗜好品は
タバコとアルコールで
全体の50%以上を占めます

それ以外には

*高蛋白食
*牛乳
*チラミンを多く含む食物
 :チーズ・ワイン・ビール・コーヒー カジキ・ニシン・タラコ・スジコ
  そら豆・鶏レバー・イチジク など
*お茶・コーヒー(カフェイン含有飲料)
などがあり

セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ) 
クロレラ イチョウ葉エキス ビタミン含有品などの
健康食品やサプリメントの一部でも
薬物相互作用が起こり得るので注意が必要です


<どんな薬剤が 影響を受けるの?>

これらの食品やサプリメントにより
代謝に影響を受ける薬物は

*中枢神経薬
 断然多くて4割近くを占め

次いで多い
*循環器官用薬
*抗生物質

の3種類の薬物が 7割を占めます

中枢神経薬のなかには 
風邪や頭痛で使われる
総合感冒剤解熱鎮痛消炎剤が含まれていますし

循環器官用薬には
血圧や脂質異常症の薬も含まれます

抗生物質も
ひどい風邪や膀胱炎などでよく使われますから

食物との相互作用を注意すべき薬は
意外に日常的に使われる薬が多いので 
注意が必要です


<具体的な例>

@アルコール

アルコールは既に解説したように
薬物代謝酵素に対し阻害と亢進の両方向に作用
代謝酵素を阻害すると 
薬物の作用を増強させることがあります

また 
アルコール常飲者は
薬物代謝酵素活性が亢進しているため
他の薬物に対しても代謝を促進し
薬効を減弱させることがあります

具体的には

*インスリン・トルブタミド・グリベンクラミドなどの
 糖尿病薬
 血糖降下作用が強く現れることがあり

*トリアゾラムなどの
 ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬で作用が強まり
 ふらつき めまい 記憶障害などが起こることがあります

@煙草

煙草に含まれるニコチンなどが
薬物代謝酵素を活性化させるので
薬物の作用は減弱することが多いとされています

薬物相互作用の項で解説した
喫煙患者は非喫煙者より 
喘息薬のテオフィリン効きが悪くなることを
参照してください

グレープフルーツジュース

グレープフルーツに含まれる
フラノクマリン類(ベルガモチン ジヒドロキシベルガモチン)が
CYP3A4 を阻害するので 
薬品濃度が高まり作用が数倍増強されます

3A4で代謝される薬物には

*降圧剤のカルシウム拮抗剤 
 (ペルジピン アダラート コニールなど)

*脂質異常症の薬のアトルバスタチン 
 (リピトール)

などがあります

グレープフルーツの薬物に対する相互作用は
比較的長く持続し
長いものでは3~7日間持続するとの報告もあります

しかしSNPの項で解説したように
3A4による薬物代謝能もグレープフルーツの影響も
かなり個人差があります

これまで報告されている相互作用の検討結果は
血中薬物濃度の変化を検討したものがほとんどで

薬効 (例えば血圧の低下作用) に著しい影響が出たという研究報告は
あまり多くありませんから

過度に神経質にならず 
主治医とよく相談されるのが良いでしょう

グレープフルーツの薬物に対する相互作用の解説図

@納豆

ワーファリン納豆の関係も有名です

納豆は 腸内でビタミンKを産生しますが
このビタミンKが 血液凝固因子の働きを強めるので
抗凝固作用を持つワーファリンの効果を減弱させることがリスクです

ワーファリンの投与量の調整は
降圧剤や脂質異常症に比べてより重要で微妙ですので
必ず主治医の指示に従ってください

@セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)

最後にハーブ系の健康食品
うつ状態に対するヒトでの有効性が示唆されている
セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)ですが

CYP3A41A2などの酵素誘導が起こるので
*ジゴキシン(強心薬) 
*シクロスポリン(免疫抑制薬) 
*テオフィリン(喘息薬) 
*ワーファリン(血液凝固防止薬) 
*経口避妊薬
などの効果が減少する可能性があります

食品やサプリ・健康食品と薬物の相互作用の説明図

こうした薬を飲まれている方は
健康食品やサプリだからと言って安心せずに
よく主治医と相談されてください

このように 
頻度はそれほど多くはありませんが
食品やサプリ・健康食品と薬物の相互作用は
意外にバカにできません

心配な方は 
是非 主治医にご相談ください
高橋医院