去年の夏の話題で恐縮ですが

生まれて初めて
サイン会なるものに参加してきました!

AKBの握手会ではありませんよ!(笑)

ちょっと立ち寄った八重洲ブックセンターで
目にとまったこの広告

古井由吉さんのトークショーのポスター

定員100人と記されていたので
大丈夫かなと思い問い合わせたら
まだ空きがあったので
すぐに申し込んだ次第です

書き手がいくらミーハーだからと言って
芥川賞をとられた又吉直樹さんに
興味があったわけではありません

申し訳ないですが
又吉さんを芸人としてTVで拝見したこともないし
火花も読んでいません

書き手を生れて初めての
サイン会にいざなったのは
古井由吉さんです

古井由吉さん

まだ多感だった中学生の頃
古井さんの芥川賞受賞作の
杳子(ようこ)」を読んで

とても大きな衝撃を受けて
古井さんが描く不思議な世界に迷いこみ
それ以来ずっと古井文学のファンです

かなり重くてコアな作品を
書かれる作家さんなので
ご存じない方の方が多いでしょうか?

決して万人受けする内容でもないし
読んで楽しくなったり
愉快になったりするわけでもない

むしろ逆に
重苦しい気分になったり
考えさせられたりすることの方が多い

でも個人的には
そういうのも文学の楽しみのひとつだと
思っています


どうやら対談相手の又吉さんも
古井文学ファンのようで

最近の杳子の文庫本の腰巻には
又吉さんの写真が出ていました

又吉さんの写真が腰巻に出ている 杳子の文庫本 

仕事を終えてから会場に向かったので
後方の席しか空いていませんでした

こういう機会は初めてだったので
どんな客層の方が来られるのか
興味がありましたが

意外に若い人が多く
女性が半分以上

平均年齢は40歳を越えているかな?

そして定刻通り
古井さんと又吉さんが登壇して
トークショーが始まりました


古井さんは 80歳を越えられたのかな?
それなりの年齢を感じさせる風貌ですが
柔和な笑顔で とても自然体です

又吉さんは 真面目な好青年という雰囲気

TVなどでのお笑いの場での彼の姿を
見たことがないので
普段とギャップがあるかはわかりませんが
“お笑い芸人”という雰囲気は全くありません


ふたりのトークは
季節に関する話題から始まりました

「今年の夏は暑かったですね」
と又吉さん

「でも 夏は暑くないと
 夏のことはうまく書けない
 冬に夏のことを書こうとしたりすると
 うまくいかないからね」

古井さんはそう答えて そして続けます

「季節の移ろいが
 文章を書く気持ちをインスパイアしてくれるから
 四季があることは
 文学にとってとても大切なことです」

「若い頃は
 そのエネルギーと衝突するから
 春は苦手だったね
 
 そういえば男女が分かれるには
 冬がいちばんイイよ」

ポツポツと語る古井さん

そうだよね 四季の移ろいは大切だよね 
と思いながら聴き入ります

そういえば 古井さんはどこかで

「移ろい」であって「変化」ではない 

と書かれていました

どうでもいいことかもしれませんが
こういう語感にこだわるのは
大切なことだと思います


やはり又吉さんは
昔からの古井文学ファンだったそうで
古井さんの新作の「雨の裾」を読んだ感想を
語り始めます

古井さんの新刊・雨の裾

「今の自分と過去の自分が混在しているような書き方が
 とても印象的でした」

それを受けて古井さんは
こんな風に語ります

「歳をとると
 あらゆる年代の自分が同居できるようになる

 若い頃の自分や 中年の頃の自分が
 今の自分の中にまだいることに気がつく
 
 来世が見えてくることもある」

「今の自分よりも
 若い頃の自分の方が賢い判断をしていたことに気がついて
 驚いたりすることもあるのですよ」

ちょっと意味不明なところもあるけれど
でも面白い

これこそまさに
古井さんの文学の世界だなあと思いながら

前かがみになって話を聴いていきました

長くなるので つづく


高橋医院