生まれて初めて参加した
サイン会の続きです

古井さんは執筆中の葛藤について
語り始めました

「書いていると 自分離れしてくる というか
 自分とは違うところから
 声が聞こえてくることがある

 そして大抵の場合は
 その声に従った方が面白いことが多い
 声が聞こえないときは
 聞こえてくるまで待つのですよ」

作家がものを書かれるときは
そんな感じなのか

まさに 言葉を紡ぎ出す
という作業なのでしょうか?

なんとなく理解できるような気もするけれど
でも 実感することはできません、、、

「自分のことは
 自分がいちばんわからない
 
 自分のなかには
 自分が知らない色々な自分がいるのですよ」

うーん 精神病理の世界とクロスするような、、、

でも 芸術家はそうなのでしょうね

こういう非日常的なわけのわからない話は
たまに聞くと面白いです(苦笑)

語る古井さん

さらに古井さんは
こんなことも語られます

「表現者というものは 
 
 感じたものの
 ダイレクトな表現を貫くべきか
 
 それとも
 感じたものを解釈してから表現するべきか
 
 どちらの立場に立てばいいのだろうと
 思うのですよ」

そりゃ 解釈なんかしてはダメですよ
文学なのだから

いや 解釈することこそ
文学でしょう?

そんなことを思いながら聞いていると
頭の中がこんがらがってきます(苦笑)

インスパイアされた気持ちを
ナマで出すか 料理して出すか

どちらがいいのでしょうね?


又吉さんが 匂いに関する話題を振ると
古井さんはこう反応しました

「視覚というものは
 最初から能動的に対象に働きかけてしまうので
 面白くない

 それに対して 聴覚や嗅覚は
 向こうからやってくるものを感じる
 受身なものなので
 忘れられないし興味深い」

「私は空襲のときの匂いを
 恐怖の匂いとして憶えている
 
 けれど
 今でもときどきその匂いが甦ることがある
 
 世の中には
 見えない形の恐怖が
 潜在しているのかもしれません」

こんなことを
ニコニコと笑いながら語られるのですよ

全く 浮世離れというか
非日常の極みというか(笑)

でも 書き手には
古井さんが語られた
「視覚と聴覚の差異」に関するニュアンスは
なんとなくうなずけるところがあって

心の中でニタニタしながら
頷いているところもありました

なんだかちょっと 危ない世界ですね(苦笑)


古井さんが又吉さんに気を使われて
舞台で演じることと文学を書くことの共通性の話題を
振ります

「どこからどういう自分が出てくるかわからないから面白い」

「思い通りにうまくいかないとき
 なんらかの破れがあるときの方が 
 結果としてはいちばん面白くなる
 
 筋書き通りに運んでしまうと
 結局はつまらなくなってしまう」

そうね 確かに文学は
 “破れ” があった方が面白いかもしれません

というか
そういうことを意図して語ろうとするのが
文学なのかなとも思います

語る古井さん2

トークショーの最後は
作家らしく
言葉に関する拘りの話が展開されました

又吉さんが

「古井さんの文学で好きな理由は
 文章が説明をしていなくて
 雰囲気を感じさせるから」

と語られましたが

それに対する古井さんの回答が
予想外で面白くて

「それは 僕が叙述が下手だからです
 だから感覚的な文章になるし
 詩の方向に流れてしまう
 叙述力のある人がうらやましくて」

なるほどねえ

でも そこが古井文学の魅力じゃないの? 
と思って聞いていたら

古井さん こう続けました

「言葉というものは
 それ自体が矛盾を嫌うものなのですよ
 
 だから 言葉で表現するのは難しい
 
 それが故に 感覚的なことは頭で書いていてはダメで 
 体で書かないとうまくいかない」

うーん わかるような わからないような

情を理で表現することは難しい 
ということでしょうか?

でも 文学の表現手段は
言葉しかないわけだし

そこが 文学者の葛藤なのでしょうか?

頭でなく体で書く  うーん、、、

書き手は古井さんの語りを聞いて
考え込んでしまいました

でも
最後に古井さんの世界の真骨頂を見せていただき気がして
なんとなく心地よかったです

トークショーが終わり
又吉さんが退場されて
古井さんのサイン会になりました

又吉さんのファンが多いのかなと
思っていましたが
ほぼ全員がサイン会に残っていたのでびっくり

前の席に座っている方から順番だったので
後ろの方に座っていた書き手は
小一時間待つことになりましたが

待っている間
古井さんが語られたことを思いかえして
ひとりでなんとなく頷いていました(笑)

100人近くサインされてお疲れ気味の古井さん

サインをしていただいたときに
「100歳まで書き続けてください」
とお声をお掛けしたら

「そりゃムリでしょう」
と笑って答えてくださいました

でも 古井文学信者としては
100歳の古井文学の世界
是非とも堪能したいです!

どんなふうに 
人と人との関係を表現されるのかな?

生まれて初めてのサイン本
大切に持って帰りました

いただいた古井さんのサイン

2回にわたり 
かなりオタクな
意味不明な話題にお付き合いいただき恐縮です

どうも失礼致しました(苦笑)

でもね 文学って大切だと思うのですよ

そうえいば 最近
あまり文学を読んでいないなあ

あ 春琴抄を読み直したか(笑)
高橋医院