録画しておいた 
市川海老蔵さんのドキュメンタリー番組を
2本見ました

1本目は 
海老蔵さんご自身にフォーカスをあてた内容で

歌舞伎界の大名門である“市川宗家”の継承を
運命づけられた彼の
精進と苦悩の日々が描かれていました

2本目は 
海老蔵さんのご子息の
初舞台に向けての稽古の様子や 
1か月に及ぶ実際の公演の日々を
親子や家族の絆といった視点から 
切り込んでいた内容でした

海老蔵さん

海老蔵さんの舞台は 
ナマで拝見したことがありません

ご本人には失礼なことと思いますが
なんとなく チャラいというか 軽いというか
そんなイメージがありました

何年か前に 
六本木の酒場で傷害事件に巻き込まれたことが報道されて
そのニュースや騒ぎを見て 
酷な言い方かもしれませんが

そうした事件が起きてしまうのは
絡まれた方にも何らかの落ち度があるのかなと
感じたりしていました

でも考えてみれば
芸能関係の報道はバイアスがかかっていることが
多々あるようですし

そんな報道を介して感じる人物像なんて 
まさに虚をつかむような 
得体の知れないものかもしれません

一般人が有名人に対して抱くイメージなんて 
そんなものかな?(苦笑)

で 2本のドキュメンタリー番組を見て

海老蔵さんに対するイメージが
変わりました

いちばん印象深かったのは 
海老蔵さんが芸に対する思いを語ったシーン

そんなに目いっぱい肩に力を入れて演ずるのではなく
少しいい加減に ちょうどいい塩梅に 
演じられたら良いと思う

といったニュアンスのことを語られていたのが 
とても興味深かった

舞台の上の海老蔵さん

昨年末に公開された
映画のスターウォーズに関する特集記事で
海老蔵さんが

「スターウォーズは歌舞伎でしょ?」

と語っていたのを想い出して
(なかなか的を得ている と思ったのですが)

彼にとって歌舞伎とは 
継承すべき伝統芸能ではあるけれど

それにもまして 
観客を楽しませるものであって

それ以上のものでも それ以下のものでもない

のだろうと感じました

だからこそ 
宗家のお家芸である演目の歌舞伎十八番の復興にも積極的だし

その一方で 
若い観客層の掘り起こしを目的として
宮本亜門さんらとのコラボで 
新作の自主公演を定期的に行い

宮本亜門さんと記者会見する海老蔵さん

歌舞伎を世界に広めるために
アジアやアメリカでの歌舞伎公演にも 
積極的に取り組んでいる

しかも 
外国人に“本物”に触れてもらうことが重要だと思うので

海外公演で 
登場人物が英語で話すようなことはせず
日本でやっている古典歌舞伎をそのまま演じる

海老蔵さんの海外公演のポスター

そんな心意気やスタンスには 
とても共感が持てました

彼は 名門中の名門 市川宗家を継ぐ宿命を 
生まれたときから背負い
常にその運命と抗ってきたようですが

前述した
「いい塩梅に演じる」という境地に達したときに
その抗いが和らいだというか 
吹っ切れた感じがする

と語っていたのが印象的でした

お父様の団十郎さんと海老蔵さん

また2本目の 
息子の初舞台をモチーフにした番組では

海老蔵さん自身が幼い頃 
亡きお父様の團十郎さんに
芸の手ほどきを受けていた過程で

自分は将来 
自分の息子にどうやって芸を伝授するかを
ずっと考えていた

と語る場面があって 
これもとても印象深かった

名門に生まれ 
芸を継承していく運命を背負った人は
幼い頃からそんなことを考えているのですね

びっくりしました


たまたま目にした
某ビジネス雑誌のインタビューでは
海老蔵さんはこんな風にも語っていました

ビジネス誌のインタビューで語る海老蔵さん

どんなことであれ
見えないリスクについて悩むのは
まったくの無意味で

悩むぐらいだったら
まずはやってみようと思う

「前はこうだったから」
と経験則で考えた段階で 

過去にとらわれてしまい 
新しい情報が入り込む余地はなくなり
新しい状況を純粋に見ることができないから 
臨機応変な対応力も低下してしまう

「それまでの努力」のようなものを
評価しすぎるのも問題で

歌舞伎の公演だって 
いくらみんなが何カ月も練習していても
そんなことはお客様には一切関係ない

いいものを見せることが
一番大切なのだから
必要なら直前になって
すべてをひっくり返すのもアリでしょう


しかし 物事の本質を掴むうえで 
毎日同じことをするのは大切なことで

同じことを毎日続けるからこそ 
0.01ミリメートルの違いに気づける

毎日のルーティンを大切にするのは 
きたるべき決断のための感覚を 
研ぎ澄ませているのです

争いを避け 
みんなと仲良く歩調を合わせるのが 
日本社会では歓迎されるのかもしれません

ですが それでは本質を見失います

なるほどねえ

まあ 盛り場でチンピラに因縁をつけられてしまうのは
確かに彼の振る舞いが生意気だったせいも
あるかもしれませんが

決して生意気なことだけが
原因ではないのでしょう

凡人や”常識人”が聞いたら耳が痛いことを
ズケズケと言うのは
危険なことでもありますから(笑)

彼は 
市井の人の理解を越えたパッションを有していて
時としてそれが無意識のうちにほとばしって
周囲を刺激してしまうのかな

ドキュメンタリー番組で描かれていた
彼の立ち居振る舞いや言動を見聞きして

そんなことを勝手に想像したりしました(笑)

疑問に思ったのが

彼がどのようにして 
いい塩梅 を尊ぶ境地に達するに至ったのか?

そのあたりを 番組やインタビューのなかで
もう少し突っ込んで 
彼に語らせて欲しかったです

市川宗家のお家芸である 荒事

いちども生で観たことがないので 
是非 観てみたくなりました
高橋医院