NAFLDが
脂質異常症や高血圧などの 
生活習慣病不良グループ仲間とつるむこと
前回ご説明しましたが

NAFLDと最高にウマがって 
最悪の腐れ縁を形成するのが糖尿病です

そもそも NAFLDの概念が確立する前から

糖尿病患者さんで多いがんは
膵がん 大腸がんについで 
肝細胞がんだったり

糖尿病患者さんの死因の17.5%が 
肝疾患であることが
報告されていました

一方 肝臓が悪くなると 
糖尿病の治療効果が悪くなる

逆に 糖尿病があると 
肝臓病の治療効果が悪くなる

そうした臨床的な経験から
糖尿病と肝臓は関係がありそうだな? 
と疑われていました

そして 
NAFLDという病気の存在が確立されたことで
NAFLDと糖尿病の腐れ縁が 
明らかとなったのです

どれくらいひどい腐れ縁か?

<糖尿病におけるNAFLDの併存の程度 NAFLDへの悪影響>

アメリカでは 
糖尿病患者さんの65%にNAFLDを認めます


糖尿病の65%にNAFLDが見られることの説明図


日本での
糖尿病患者さんのNAFLD有病率は

空腹時血糖正常群では27%
異常群では43%
糖尿病患者群では62%

やはり糖尿病患者さんで高率にNAFLDが発症しています

また NASHの有病率は 
糖尿病があると1.9倍増加し

糖尿病はNAFLDの線維化進行の危険因子
と考えられています

糖尿病がNAFLDの線維化進行因子であることを示す図


以前ご紹介したように
糖尿病のコントロール状態が悪いと
NAFLからNASHに進行する
という報告もあります

さらに これも既にご紹介しましたが
糖尿病が合併していると
合併していない場合に比し
NAFLDにおける肝がんの発症を数倍も高める
というデータもあります

糖尿病があると肝がんの発症率が高まることを示すグラフ

このように
糖尿病があるとNAFLDになりやすいだけでなく
NAFLDの肝内線維化を進ませてしまうリスクがあります


<NAFLDにおける糖尿病の併存の程度 糖尿病への悪影響>

糖尿病がないNAFLD患者さんの
30~40%に
糖尿病を発症する前段階ともいえる耐糖能異常を認め

NASHでは 
20~75%に糖尿病や耐糖能異常を認めます

NAFLDでは高率に耐糖能異常が見られることを示すグラフ


NAFLDと診断された時点で糖尿病でなくても
経過中に高率(NAFLDでない人の3.5倍)に
糖尿病を発症します

つまり 
NAFLDは独立した糖尿病の発症危険因子なのです

また一般的に
肝臓の状態が悪いと 
糖尿病のコントロールは悪くなりますから
NAFLDやNASHが糖尿病の経過に悪影響を及ぼしているのは
想像に難くありません

NAFLDがあると 
糖尿病になりやすいだけでなく
糖尿病の治療効果を弱めてしまうリスクがあるのです

ですから 
NAFLDの方を経過観察したり治療する場合は

定期的に血糖やインスリンの状態を評価して
糖尿病の早期発見を心掛けなければなりません

このように 
NAFLDと糖尿病は 
お互いの発症リスクを高め

併発していると 
互いの病気の進行を促進しあってしまう

まさに 腐れ縁 といえます

糖尿病とNAFLDの相互に及ぼす悪影響を解説している図

前にもご説明したように

NAFLDも糖尿病も その根っこには 
インスリン抵抗性という 
共通した原因が存在するわけですし

肝臓は 
糖質や脂質の代謝の中心的臓器ですから
もともと糖代謝状態の影響を受けて 
脂肪をため込みやすい

ですから 
NAFLDと糖尿病が最悪の腐れ縁を形成するのも
致し方ないこととも言えます

<片方を治療すれば もう片方も良くなる!>

しかし 
腐れ縁で悪影響を及ぼし合いますが
腐れ縁が転じて 
良い成果をもたらすこともあります

NAFLDの状態が改善しない方の
糖尿病発症率は16.1%ですが

生活習慣を改善されてNAFLDが良くなった方は
糖尿病発症率が3.1%に低下します

NAFLDが良くなれば 
糖尿病の発症リスクも減る

つまり 生活習慣を改善して 
NAFLDまたは糖尿病がよくなれば
互いに及ぼし合っていた悪影響がなくなり

糖尿病が改善すれば 
NAFLDは良くなりますし

NAFLDが良くなれば 
糖尿病は改善します


不幸にして 
NAFLDと糖尿病の両方を患っておられる方は
ご自分の努力次第で
こうした「一粒で二度おいしい」効果を
得られるわけですから

やはり大切なのは 
地道な努力による生活習慣の改善

これに尽きるのですね

高橋医院