インフルエンザワクチン・2016情報
先週は遅めの夏休みをいただき ご迷惑をおかけしましたが 今日から通常通りの診療ですので 宜しくお願いします さて 今年も インフルエンザワクチンの話題を 提供する頃になりました 1年がたつのは 本当に早いですね ちょうど去年の今頃の 2015~2016シーズンのインフルエンザワクチンについて ご紹介したブログで *なぜインフルエンザワクチンが有用なのか *ワクチンの接種は いつ頃した方が良いか? といった重要な疑問について解説しましたので 興味がある方はご覧ください 少し復習しますが 昨年 2015シーズンのインフルエンザワクチンは 2014シーズンまでのワクチンとは 少しモデルチェンジをしました なぜかというと ひとくちにインフルエンザウイルスといっても 色々な亜型(サブタイプ)が存在していて それらのうちのいくつかが 同じシーズンに流行します ですから たとえば2015年に W X Y Z という4種類の亜型が 流行したとしたら W亜型のワクチンを接種した人は W亜型には免疫を有するから かからないけれど X Y Z亜型には免疫を有していないから かかるリスクがある ひどい場合は Xにかかっで治ったあとに Yにかかり 1シーズンに2回も インフルエンザにかかってしまうリスクもある 実際に ワクチンを接種されていない方の中には そうした不幸な方が毎年おられます そこで そのシーズンに流行しそうな インフルエンザウイルス亜型を予測して それらの全てに対する免疫力ができるような ワクチンを製造する そこが大きなポイントになります さて 2014シーズンまでは 3価ワクチンという 3種類(A型2種類・B型1種類)のインフルエンザウイルス亜型 に対する免疫力を誘導するものでしたが 2015シーズンは 4価ワクチンになりました 2014シーズンに流行した インフルエンザウイルスの動態を解析した結果 2015シーズンは 複数の亜型のB型インフルエンザウイルスが 流行しそうだと予測されたため B型インフルエンザウイルスの新たな亜型の抗原が 追加されたのです さて はたして その予想は当たっていたのでしょうか? 少しオタクな話になり恐縮ですが 今年8月末に 国立感染症研究所と厚生労働省結核感染症課が 2015シーズンのインフルエンザウイルスの流行状況のまとめを 発表しましたので それを読みながら 検証してみることにしましょう 昨シーズン インフルエンザの流行がスタートしたのは 年が明けた今年1月上旬からで 例年に比べると約2週間 立ち上がりが遅くなりました (下グラフの赤線が2015シーズン) 2014シーズンは 12月中に流行が開始し 年末年始にはピークに達していたので (下グラフの緑線が2014シーズン) それと比べるとずいぶん遅い印象がありました ピークは2月上旬~中旬にかけてで 例年よりやや遅かったのですが そのピークの高さ=患者さんの数は 例年に比べて多く 過去10年間で2番目の高さとなりました ゆっくり始まり ゆっくり終わり 患者さんの数は多かった そんなシーズンでした さて 流行したインフルエンザのウイルスの亜型ですが 2015シーズン(下図・上段グラフ)は A・H1亜型(赤)がメインでしたが(50%) 2014シーズン(下図・下段グラフ)では A・H1亜型の流行は ほとんどみられませんでした(1%) 一方 2014シーズンに85%を占めて主流だったA・H3亜型(緑)は 昨シーズンでは8%に過ぎませんでした また 例年 シーズン当初はA型が流行し 後半にB型が出てきますが 昨シーズンは 最初から B・ビクトリア系統 B・山形系統も 多かったのが特徴です これは 当院に来られるインフルエンザ患者さんを 拝見していて実感しました 最初の頃からB型が出てきたので びっくりしたものです ちなみに A型とB型では症状が異なってきます また 2014シーズンで 1%に過ぎなかったB・ビクトリア系統(青)は 昨シーズンでは 18%に増加し 2014シーズンは 12%だったB・山形系統(ピンク)は 昨シーズンは やはり22%と増加していました このように 年によって流行するウイルス亜型のパターンは 異なります で 前述したように 昨シーズンのワクチンには 新たなB型亜型が追加されましたが 追加されていたのは 2014シーズンでは1%だったのに 昨シーズンは18%に増加していた B・ビクトリア系統だったのです! つまり 予想は大当たり! しかも 早期から B・ビクトリア系統もB・山形系統も 流行していましたから 早目にワクチン接種を受けていた方は つらい思いをしなくてすんだことになります うーん さすがにプロの予測はすごいです! びっくりしました! さて 今シーズンのワクチンですが こうした2015シーズンの 流行亜型の解析結果などを踏まえ 以下の4種類のインフルエンザウイルス株で 製造されています *A/カリフォルニア/7/2009(X-179A) H1N1 *A/⾹港/4801/2014(X-263) H3N2 *B/プーケット/3073/2013 ⼭形系統 *B/テキサス/2/2013 ビクトリア系統 昨シーズンのワクチンと異なるのは A・H3N2の株が スイス/(NIB-88)から ⾹港/(X-263)に変更されたことです これは 昨シーズンに流行したインフルエンザウイルスの解析により 流行したA・H3N2ウイルスの抗原性は ワクチンに用いられたスイス/(NIB-88)よりも ⾹港/(X-263)に類似していることが判明したからです 一方 残りのA・H1N1 B・山形 B・ビクトリアは いずれも実際に流行したウイルスの抗原性と ワクチンに用いた株の抗原性が類似していたことから 前年と同じ株が利用されることになりました なるほど そういう理由で ワクチンに使われる株が決められているのですね ちなみに 当院では昨年までは 写真のような 既にシリンジにワクチンが詰められているタイプのものを 使用していました これだと いちいちバイアルからシリンジに 吸い取る必要がないので 防腐剤も入っていなくて良かったのですが 今年は熊本地震で 天草地方にある大手ワクチン製造メーカーの工場が被災したため このタイプのワクチンは製造されなくなり 製造されるのはバイアルタイプのみです ワクチン供給量も 前年度より少し減る模様です こんなところにも 地震の影響が及んでいるのですね ということで 当院でのインフルエンザワクチン接種は 10月から開始予定です 但し 薬品卸の会社に問い合わせたところ 10月初旬はワクチンの入荷数が少ないかもしれませんので 念のために事前に電話で問い合わせていただいてから ご来院ください 接種費用は昨年同様 税込み3200円 です 今年の流行はいつ頃から始まるかわかりませんが 2014シーズンのように 12月から始まる可能性もありますので 11月中には 接種しておかれることをお勧めします ご不明なことがあれば 遠慮なくお問い合わせください あ ネコのワクチンは当院では扱っておりませんので ご容赦ください(笑)
高橋医院