ひとくちに便秘といっても

*便が結腸を通過する時間の長さ

*便が直腸から肛門を出るときの障害の有無

により 次の3タイプに分類されます


<結腸通過時間正常型>

慢性便秘の
大半を占めるのがこのタイプで(約59%)

便意を感じないのが重要なポイントで

患者さんは 
便意の低下を自覚し 
腹部不快や腹痛をしばしば伴います

便意は感じないけれど 
便は直腸に溜まっているので
直腸壁から脊髄への内臓知覚伝達が起こり 
腹部膨満感などが生じるのです

原因として推定されているのは

@ダイエットなどによる食事量減少
・便の量が少ないので便意を感じない

@意識的排便抑制の結果として生じる
 直腸の感受性低下
・感受性が低下すると 
 かなりの量が溜まらないと大脳へ便意が伝わらない

@幼少期からの排便の意識的抑制や虐待

などです

このタイプは 
食物繊維や緩下剤によく反応します

便秘型過敏性腸症候群に
合併することが多いのも特徴です

結腸通過時間正常型の特徴を示した図

<結腸通過時間遅延型>

食後などの結腸の運動低下に起因するタイプで
頻度は13%と比較的少ない

排便回数が週に1回以下 
月に1回など極端に少なく

強い腹部膨満感 腹痛 不快 
便意消失を訴えるのが特徴です

圧倒的に女性に多く
初潮とともに発症し 
年齢とともに徐々に悪化していきます

このタイプでは食物繊維が無効で
繊維サプリなどの摂取により
症状がむしろ悪化することが多いのが特徴です

ストレスや大腸刺激性下剤の乱用も
関与していると考えられています

また 女性ホルモンの影響も推定されています



<便排出障害型・骨盤底機能異常型>

前回説明した 
肛門から便が排出されるメカニズムである
骨盤底筋や肛門括約筋の協調運動に
異常が生じることにより
直腸から肛門への出口部分に便が溜まり 
排便が障害されているタイプで

直腸に糞便が充填され
直腸壁の進展刺激により
大脳が便意を感じるにもかかわらず
それがうまく排泄できないので 
強い怒責を感じてしまい

この強い怒責が 
いちばんの特徴になっています

頻度は25%と比較的多く 
高齢者に多いのが特徴で

上述の結腸通過時間正常型 
結腸通過時間遅延型便秘 
としばしば合併します

高齢者になると 
骨盤底筋群や腹筋が弱くなり
便排泄に必要な筋力が
確保できなくなることが
主な原因と考えられ

若い女性でも
筋力の不足で同様のことが起こります

ですから 
そうした方々においては 
腹筋の強化が必要とされています

便排出障害型・骨盤底機能異常型の特徴を示した図
骨盤底筋 肛門括約筋の協調運動の異常を示した図

また女性では 
直腸と膣の間の隔壁が脆弱なことがあり
下部直腸が肛門方向でなく
直腸前壁に向かって拡張していることがあり

この状態を直腸瘤と呼びます

直腸瘤だと
排便時の怒責で便の排泄ベクトルは
肛門に向かう方向でなく 
直腸前壁に向かい
力んでも便は直腸前壁を押すのみで
排泄されない状況となりますから

患者さんは知らず知らずのうちに
膣に指を入れ直腸前壁を圧排することで
排便を促すことを行っている(用手圧迫)ことが
少なくありません

直腸瘤による便秘の特徴を示した図


このように 
女性は排便にともなう不都合が 
色々と多くてお気の毒です

一方 浣腸の乱用などで 
肛門や直腸下部の損傷をきたし
内肛門括約筋の働きが異常になり
反射的肛門管の弛緩が行われない患者さんも
増加しています

便秘で悩んでおられる方 
ご自分はどのタイプでしょう?

タイプにより 
原因や対処法が異なりますから

よくわからない 心配だという方は 
相談にいらしてください
高橋医院