ウイルス性のかぜであれば 
わざわざ医療機関を受診しなくても

家で安静にして 
水分や栄養を充分に補給して
暖かくして たっぷりと睡眠をとれば 
1週間ほどで自然に治癒します


しかし 忙しい方は 
そうそう家でのんびり休めないでしょうし
症状がつらくて我慢できないことも多い

そんな訴えで来院される患者さんには お薬を処方します

でも、、、

<かぜは薬で治るのか?>

患者さんの多くは

*症状がつらいから 早く治して欲しい

*仕事が休めないから 
 一発で治る注射をして欲しい

といった希望を持たれて 
医療機関を受診される場合が多いです

早く治してほしいと希望する人

しかし そうした期待に沿えずに申し訳ありませんが
残念ながら 
かぜを一発で治せるような薬や注射は 
ありません

かぜで処方される薬は 
症状を和らげる薬(対症薬)です

風邪薬はあくまで対症薬なので 休養が大事であることを強調する図

つまり 
薬はかぜを根本的に治すものではなく
あくまで症状をやわらげる
手助けをするものにすぎず

内服したから早く良くなったり 
悪化を防ぐわけではありません

かぜで当院を受診される患者さんに 
よくお話しするのですが

かぜを治すのは 
あくまで患者さんご自身の体力や免疫力であって
薬は症状を和らげますが 
根本的に治すわけではありません

かぜを治すには 
薬を服用するだけでは不充分で

*安静にして
*水分や栄養を充分に補給して
*暖かくして 
 たっぷりと睡眠をとる

ことが不可欠です

そして 薬を飲んでも 
1日や2日では治りません

体力 免疫力で治すのですから 
改善するのに数日はかかります

なるべく早く患者さんのかぜを
治して差し上げたいのですが
上述したような事情を 
ご理解いただけると幸いです

<かぜに抗生剤は必要か?>

一方 問題となるのは 
かぜにおける抗生剤の使い方です

以前にご紹介しましたが

不必要なシチュエーションで抗生剤を使用することは
百害あって一利なしです

不適切な抗生剤の使用に警鐘を鳴らすポスター

不適切な抗生剤の使用は
抗生剤に耐性を持つ細菌を
増やしてしまうことになり
結果として 
人類全体に不利益をもたらしてしまいます

ですから 
世界保健機構・WHOも 各国の医療・保健機関も
安易な抗生剤投与に警鐘を鳴らし 
その対策を積極的に行っています

ましてや 
これまでにご説明しましたように

かぜの原因のほとんどは 
細菌でなくウイルスなので

風邪の原因のほとんどがウイルスであることを示すグラフ width=

かぜに抗生剤を投与しても 
効果は期待できません

抗生剤は 
ウイルスには無力なのです

抗生剤はウイルスには効かないことを示す図

そして 基礎疾患のない若い方の多くは
抗生剤など使わなくても 
対症療法だけで自然に治癒します

もちろん 原因がウイルス以外の
細菌もしくは非定型病原体による場合は
それぞれに適した抗菌薬を投与します

抗菌剤を使うべき状況としては

*痰に色がついたり 
 ねばねばした汚い痰がでたり

*咽頭への白苔の付着が見られ

細菌感染の合併が疑われる場合

*熱が1週間以上も続く場合

などがあげられます

一方 欧米の学会では 
不適切な抗生剤使用を避けるための手段として

*かぜで来院された患者さんに対しては
 受診当日に抗生剤を処方せず 
 再受診時に処方する

*最初に処方する場合は 
 症状が悪化してから服用するように指示する

といったことが推奨されています

抗生剤はかぜの特効薬ではないことを強調するポスター

かぜで受診されて
早く治したいので抗生剤をください
と希望される方は
実際のところ少なくありません

世の中の “抗生剤信仰” は 
かなり根強いのが事実です

ですが 
これまでに説明しましたように

原則的に 
かぜには抗生剤は効きませんし

不適切な抗生剤の使用は 
結果的に人類に不利益になります

ですから 
抗生物質の処方を希望されていても
症状 診察所見などから
抗生剤は必要ないと判断される患者さんには
その旨を説明するのですが

直なところ 説明が上手くいかず
納得していただけないことも多々あります

そうした場合は
患者さんも医者も 
お互いにフラストレーションが溜まってしまいます

ストレスは かぜに良くないのですが、、、(苦笑)

ですから 
抗生剤は必要ないと思われる状況なのに
どうしても抗生剤が欲しい 
と希望される患者さんには

上記のことをよく説明して

抗生剤は処方しますが 
予防的に飲むのはやめてください

高い熱が出てきたリ 
汚い痰や鼻水が出てきたら
そのときに服用してください

とお話して 
ご理解いただくようにしています
高橋医院