マイコプラズマ大流行
かぜシリーズの最後に 今年 大流行の兆しが見える マイコプラズマ の最新情報を提供します マイコプラズマは 非定型性肺炎を起こす原因として紹介しました かつては流行のタイミングが 4年に1度のペースで ちょうど夏季オリンピックの開催年に 重なっていたことから 「オリンピック病」 と呼ばれたこともありました そうか 今年は リオ・オリンピックだったし、、、 というのは ちょっと早とちりで(笑) ソウル・オリンピック(1988年)を最後に このような4年周期の流行の規則性は なくなっています 日本で最後に大流行が見られたのは 2011~2012年シーズンでしたから それからすでに 4~5年が経過しており いつ流行がみられてもおかしくないと されていましたが 国立感染症研究所の10月の発表によると 今年10月のマイコプラズマ感染者の報告数は 2011~2012年シーズンの同時期のそれを 上回っています 赤のグラフが 今年の患者さんの数です ご覧のように 東京都内でも患者さんの報告数が増えています また 世界的にも マイコプラズマ肺炎の患者さんの増加が報告されていて 今年は当たり年になりそうな気配です <マイコプラズマ肺炎とは?> で マイコプラズマ肺炎 って なに? マイコプラズマ・ニューモニエ という微生物により引き起こされる肺炎で 1年を通じてみられ 冬にやや増加する傾向があります 子どもや若者に多くみられ 近年の報告では 約80%が14歳以下で発症しており そのピークは小学校低学年(7~8歳)です 大人では その病状は一般に軽く 肺炎に至る例は感染者の3~5%で 多くは感染しても 上気道炎 気管支炎などですみます さて このマイコプラズマ 自己増殖可能な最小の微生物で ウイルスと細菌の中間的な性質を有する 病原体です ウイルスのように 他の生物の細胞の力を借りて増殖するのではなく 細菌と同様に自分の力で増殖しますが ウイルスに近いほど小さく その外側には細胞壁はありません <感染経路> マイコプラズマは *患者さんの咳のしぶきを吸い込んだり *患者さんと身近で接触したりすることで感染し 家庭のほか 学校などの施設内でも感染の伝播がみられます 感染力が強く 家族内感染が多く見受けられるので すでに診断された人が 身近にいるかどうかが 診断に重要な情報になります このように 感染経路は かぜやインフルエンザと同じですので 予防のためには 普段から手洗いをすることが大切で また 患者さんの咳から感染しますので 咳の症状がある場合には マスクを着用するなど咳エチケットを 守ることも予防上大切です <潜伏期間> 感染してから発症するまでの 潜伏期間は長く 2~3週間くらいで そのため 感染拡大の速度は遅く 人が多く集まる 保育園 学校 会社 病院などでは 施設内で流行が始まると それが落ち着くまで 何か月もかかってしまうこともあります <症状> 代表的な症状は 発熱 と 咳 で 咳は 乾性咳嗽と呼ばれ 痰をともなうことが少なく 発熱から数日遅れて出現することもあり 経過に従い徐々に強くなり 熱が下がっても 頑固な咳が長く続く(3~4週間)ことも多い また 全身倦怠感 頭痛 筋肉痛 関節痛などを 伴うこともあります <診断> 2015年に マイコプラズマ抗原簡易検査キットが販売され インフルエンザや溶連菌と同様に より早期により簡便に測定できるようになりました (保健医療です) <治療> 抗生剤を用います 抗生剤の中には 細菌の壁を壊すことで効くものが多くありますが マイコプラズマは細胞壁がないので このタイプの抗生剤は効きません したがって マイコプラズマに効果があるのは 細胞壁には作用せずに効果を示す抗生剤で *タンパク質合成を阻害する マクロライド系 *DNA合成を阻害する ニューキノロン系 という種類の抗生剤が用いられます ということで 最初に述べたように 今年はマイコプラズマの 当たり年になりそうですから 頑固な咳でお悩みの方は 早目に受診されてください
高橋医院