能を観たときの体験談を
お話していますが

とにかく美しい!

立ち姿の能役者

初めてリアルで 
女性のシテの姿を見た印象は
その一言に尽きました

色鮮やかな装束を身に纏い 
白い能面を付け
舞台中央で 
やや前傾姿勢ですっくと立ち尽すその姿

まさに 美しい のひとことで

言葉を失い 
思わず口が開いてしまいそうでした

舞台をすり足で歩く能役者

それと 
ナマで観て初めて感じたことですが 
意外にスタイルが良い!

装束はややコテコテ系なので 
もったりとした印象は拭えませんが
立ち姿はとても均整がとれていて

全身が まさにモデルのような 
すらりとした八頭身スタイルに見える

すらりとした姿の能役者

これは予想外だったので 
とてもびっくりしました

それから 
能装束が美しいのですよ

以前 
能装束展を見に行ったことがありますが
唐織(からおり)縫箔(ぬいはく)と
呼ばれる女性の上着は

唐織という女性の上着

量感のある生地に
鮮やかな色の刺繍や金銀が
ちりばめられた模様がほどこされ
息をのむほどの美しさでした

シンプルな力強さ 
秘めたる自己主張の強さ のようなものも感じられます

縫箔という女性の上着

能は 
余計なものをできるだけ削ぎ落して
幽玄の美の世界を表現する

と言われますが

能装束は 
そうした美感の表現にまさに適しているようにも
思いました

さて うーん これは凄いと思いながら
オペラやバレエを観に行く時の習慣で
ごく自然に持ってきたオペラグラスに
手を伸ばしましたが

ふと気がついてまわりを見渡すと
オペラグラスを使っている人なんて
誰もいません!

まあね 確かに
無表情をもって演じるのを良し 
とされる舞台の鑑賞に
オペラグラスは不要だったかもしれません(苦笑)

でも 能面や装束の細部を観たい
という衝動に勝てず
グラス越しに覗くと 
眼に飛び込んできたのは

白い能面の下にひろがる 
ちょっとたるんで見える肌色の顎と首筋

白い能面の下にひろがる ちょっとたるんで見える肌色の顎と首筋

ええーっ!(笑)

そうか 
遠くから美しい八頭身スタイルに見えたのは
面が小さかったから?

そこで初めて
トリックに気がついたわけですが(苦笑)

これぞ 
ナマ鑑賞でしか味わうことができない醍醐味です?(笑)

うーん 能役者たるもの

テレビCMに出てこられる
某美容クリニックの院長先生のように
歳をとっても顎のラインのお手入れを
きちんと行っておかないと?

などと フトドキモノは感じましたが(苦笑)

ところが 
舞台になじんでくるうちに

面の下にたるんで見えるリアル顎と
面のハーモニーが
妙に一体化した 
美しいラインに見えてくるので不思議です


これは ウケを狙ったオチではなくて

実は能面は 
観る者にそうした印象を与えることを目的に
実際の顔よりも小さく作られているそうで

役者さんのナマアゴが見えることで
能面はシテの身体と一体化した印象を
与えることをができる

敢えてそこを狙っているそうで

そうすると
能面にさまざまな表情が
見えてくるようになる

えーっ そんなことまで計算づくなの?

役者さんのナマアゴの動きがポイントと解説する図

特に 江戸時代以降に
面を掛ける位置が
顔の上の方に少しずれてきて
このような”面アゴ効果”が
強調されるようになったそうです

うーん やっぱり 能は奥が深いです!!


高橋医院