脂質過酸化反応
前回 ご説明したように 核酸やタンパク質が 酸化反応で傷害をされると 遺伝情報やさまざまな生体機能に支障をきたして マズイことは容易に想像できますが 脂質が酸化されると どうマズイのでしょう? <脂質の酸化により 連鎖的脂質過酸化反応が起きる> 脂質に対する 活性酸素やフリーラジカルによる攻撃は *細胞膜 *ミトコンドリアやミクロソームなどの膜 を構成する脂質に対して起こります 膜の脂質(特に多価不飽和脂肪酸)は 構造的に 活性酸素・フリーラジカルの攻撃を受けやすく ヒドロキシラジカルと遭遇すると 水素(電子)が引き抜かれて 不対電子を持つ脂質ラジカルになり 連鎖反応の脂質過酸化反応が開始されます 脂質ラジカルが酸素分子と反応し 脂質ペルオキシラジカルになり 脂質ペルオキシラジカルは 他の脂質と反応し新たな 脂質ラジカルを生成させ 自らは 過酸化脂質(脂質ヒドロペルオキシド) になります この反応が 連鎖的に繰り返されるのです <過酸化脂質は動脈硬化を進ませる> 過酸化脂質が蓄積すると 細胞膜・細胞機能が傷害されますが 血液中の過酸化脂質は 動脈硬化 心筋梗塞 急性期脳梗塞 糖尿病 劇症肝炎などで 増加していることが 明らかにされています <不飽和脂肪酸が脂質過酸化反応を受けると 反応性が高い低分子アルデヒトが生じる> また 不飽和脂肪酸が脂質過酸化反応により分解されると さまざまな種類の 反応性の高い低分子アルデヒドが生成されます アルデヒドは 核酸 タンパク質 リン脂質などと 容易に反応し 最終的にDNA ミトコンドリア リソゾームなどを 傷害します <脂質の過酸化反応で核酸やタンパク質を傷害する 過酸化脂質 低分子アルデヒドが生じる> このように 活性酸素やフリーラジカルにより 脂質の過酸化反応が起こると *過酸化脂質 *反応性の高い低分子アルデヒド が産生されて それらが 核酸やタンパク質に悪さをしかけるのです 脂質の酸化により 有害な飛び道具がいくつも産生されてしまうわけで なんともたちが悪いものです <脂質の糖化が有害な酸化反応を誘導する> ここにも糖化が絡んできます 細胞膜のリン脂質が糖化されて アマドリ化合物になると これが原因で 脂質過酸化反応が起こり 過酸化脂質や 反応性の高い低分子アルデヒドが産生され 病態が増悪していきます タンパク質では 糖化によりAGEができて大きな問題でしたが 脂質でも 糖化が有害な酸化反応を誘導するとは 糖は本当に色々な場面で悪さを繰り返していて 厄介なものです 酸化ストレスは 糖質・脂質にも影響を及ぼし 最終的にタンパク質の変性を起こして体に害をなす 酸化ストレスの複雑さや怖さを ご理解いただけたでしょうか?
高橋医院