体の中では
核酸やタンパク質を傷害する 
有害な活性酸素フリーラジカル
かなり頻繁に産生されていることを説明してきましたが

実は 
生体内では活性酸素やフリーラジカルによる実害は 
それほど起きていません

それは 
活性酸素やフリーラジカルを処理するシステムが
働いているからです

ほとんどの活性酸素は 
抗酸化酵素抗酸化物質で消去されているのです


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しかし

過度の運動や運動不足 
偏った食事 喫煙などの不健康な生活習慣
さらに 慢性炎症などによって

活性酸素の生成と消去のバランスがくずれると 
酸化ストレスが生じて
糖尿病 動脈硬化 がん 老化などの原因となると
考えられています

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生きるために酸素を取り込み
その酸素によって体に有害な活性酸素が生まれてしまう

そうした原初的な不条理に対して
ヒトはしっかりと防衛システムを築き上げたのです

抗酸化システムでは

*活性酸素やフリーラジカルの発生を抑制

*発生したラジカルを捕捉して分解処理

*生じたダメージを修復・再生

という 3種類の防御策がとられています


その働きの中心をなすのが 
抗酸化酵素 抗酸化物質 です

抗酸化酵素は 
 活性酸素の発生を抑える予防的な役目を果し

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抗酸化物質は 自らが活性酸素により酸化されることで
 活性酸素を安定な分子に変化させる働きを
 示すようになります

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たとえば
酸素から活性酸素のメンバーが産生される過程で
抗酸化システムがどのように働いているかみてみましょう

最初の 
酸素からスーパーオキシドができるステップでは
SODという抗酸化酵素が働いて 
スーパーオキシドを消去します

スーパーオキシドが過酸化水素になるステップでは
カタラーゼ グルタチオンペルオキシダーゼ グルタチオン
などの抗酸化酵素過酸化水素を消去します

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このようにして
最大の悪者であるヒドロキシラジカルが産生されないように
抗酸化システムは働いているのですが


そうした抗酸化システムの防御網をくぐり抜けて
ヒドロキシラジカルができてしまうと

この最悪の厄介者を消去する防御システムを
ヒトの体は有していません

うーん なかなか うまくいかないものですね、、、


さて 運命を嘆いてばかりいないで
抗酸化システムについて 
もう少し詳しく勉強していきましょう

ラジカルの発生を抑える予防的な役割を果たす
抗酸化酵素

適度な有酸素運動で生じる
微量のフリーラジカルの刺激によって
酵素活性が高められ 
その効果は数日間持続します

過度な運動は
活性酸素の産生を高めてしまいますが

適度な運動は
むしろ抗酸化システムを活性化するようです


活性酸素やフリーラジカルを補足する抗酸化物質には

水溶性抗酸化物質脂溶性抗酸化物質があり

お互いが相互補完しながら
巧みなネットワークを形成して
生体を酸化障害から守っています

抗酸化酵素や抗酸化物質以外にも

活性酸素により損傷を受けた核酸やタンパク質を修復・再生する
*ホスホリパーゼ 
*プロテアーゼ 
*DNA修復酵素 トランスフェラーゼ
などの修復再生型抗酸化物質も存在しますし

フェントン反応により悪玉ヒドロキシラジカルが産生されるときに働く
フリーの鉄イオンや銅イオンが存在できないように 
それらを制御する
*フェリチン
*トランスフェリン
*セルロプラスミン
*メタロチオネイン
といった金属制御タンパクも 抗酸化システムの一員です

次回は こうした頼もしい抗酸化システムのメンバーについて
もう少し詳しく紹介します

 

高橋医院