酸化ストレスと病気
酸化ストレスは がん パーキンソン病 アルツハイマー病 慢性の炎症疾患 老化など 多くの病気の病態形成に 関与していますが 主に生活習慣病の治療を行っている 当院のブログですから 肥満 糖尿病 動脈硬化と酸化ストレス との関連について解説します <肥満> 肥満の脂肪組織では 活性酸素の産生に関わる NADPH オキシダーゼの発現が上昇し その一方で 抗酸化機構の主たるメンバーである SOD グルタチオンペルオキシダーゼ カタラーゼ などの発現が低下しています つまり 肥満では 酸化ストレスが亢進しているのです 酸化ストレスの亢進により MAPK NF-κBなどの ストレス応答シグナルが活性化され アディポサイトカインの 分泌異常が生じて インスリン抵抗性が誘導されます また肥満の脂肪組織では 尿酸合成酵素のキサンチンオキシダーゼが 過剰に発現・産生されており キサンチンオキシダーゼそのものが 活性酸素産生を促すのに加え 尿酸が脂肪組織で過剰に産生され 細胞内に引き込まれ 酸化ストレスが誘導される可能性もあります このように 肥満では 酸化ストレス状態にあり それが 糖尿病などの肥満により生ずる病気の発症に 関与している可能性があります <糖尿病> 糖尿病では 活性酸素産生系の キサンチンオキシダーゼ NADPHオキシダーゼが活性化 しており 高血糖状態では ミトコンドリアからのスーパーオキシド産生が増加 しています 一方で 抗酸化系のSODが 糖化により変性し活性低下しており 還元型グルタチオンやカタラーゼも 減少しています 肥満と同様 糖尿病でも 酸化ストレス亢進状態にあります 酸化ストレス亢進状態にあると 膵臓β細胞での インスリン遺伝子発現低下 分泌低下がみられますし 肝臓や骨格筋でのインスリン抵抗性も誘導されます また 前回にも解説しましたが 高血糖状態で生じる 糖が酸化されタンパク質と結合した 異常な糖化タンパク質の増加も大きな問題です 糖がタンパク質と結合すると アマドリ化合物が生成され 自己酸化する過程で活性酸素を産生します さらにアマドリ化合物はAGEとなり AGEも酸化ストレスを誘導します AGEは 分解されずに沈着して 血管内皮細胞の障害を引き起こすので 糖尿病性血管合併症の増悪因子となります 糖が高いと ろくなことがありません、、、 <動脈硬化> 動脈硬化の病態形成にも 酸化ストレスが大きく関与しています 血中LDL が上昇していて 血管内皮に生じた傷口へ 付着すると LDL 受容体を介してLDLは 血管壁内に移行します 血液中では 種々の抗酸化物質が存在しているために LDLは容易に酸化されることはありませんが 血管壁内では マクロファージ 好中球 血管内皮細胞などが 活性酸素・フリーラジカルを産生し さらに 抗酸化物質が存在していないため LDLが酸化されて 酸化LDLになります LDLを構成するリン脂質が 不飽和脂肪酸でできているので 活性酸素やフリーラジカルにより 酸化されやすいのです 以前にも説明したように 血管壁内では マクロファージが スカベンジャー受容体を介して 酸化LDLを貪食して泡沫化して壁内に沈着します こうして 動脈硬化の病態が 形成され進行していきます このように 酸化ストレスは 肥満 糖尿病 動脈硬化の病態に 深く関与しています ということは 酸化ストレスをうまく制御すれば こうした病気の改善につながる可能性があるということ? そろそろ 抗酸化ストレスの話をした方がよさそうですね
高橋医院