パイプオルガンの裏側
鈴木雅明さんが 中部ドイツ・ザクセン地方の 小都市を旅して その地の教会にあるパイプオルガンを 弾いて回る という特番を NHKで放映していました 鈴木さんは バッハ・コレギウム・ジャパンを主催される 世界的な指揮者で オルガン奏者でもあります 書き手たちも 毎年クリスマスにメサイア公演を 楽しませていただいています 番組の冒頭で 僕は指揮者でなくオルガニストだ と言われていました 全てはオルガンから始まる そうで それだけ パイプオルガンに対する思い入れが強いのでしょう 番組の進行が楽しみです さて 番組の内容を紹介をする前に 主役であるパイプオルガンについて 説明します ヨーロッパでは ある程度の規模の教会には 必ずパイプオルガンがありますし 日本の大きなコンサートホールにも パイプオルガンがあることが多い ですから パイプオルガンには馴染みがあるのですが でも どうやって あの荘厳な響きを出しているか ほとんど知りませんでした 番組では 簡単にその構造などの説明もしていたので とても勉強になりました パイプオルガンは 立派なものは本当に大きい 教会の壁面全体を覆い尽くすかのように たくさんのパイプが林立していて その装飾も豪華絢爛で 思わず口をあけて 下から上まで見上げてしまいます そして その裏側は 実に込み入っていて、、、 パイプオルガンの音色を出す原動力は パイプに送られる風です 昔のオルガンは こんな風にフイゴで空気を送って 音を出していましたが パイプオルガンでは もっと大掛かりなフイゴになります ひとつのパイプオルガンに必ず2つ以上 規模が大きいオルガンでは 4つ以上備わっているそうです ひとつのフイゴが閉じる前に 別のフイゴを開けて 次々に引き継いでいく仕組みで 現代のオルガンでは 自動的にフイゴの操作がされていますが 昔はフイゴ職人さんが 手作業でフイゴを操作して 風を送っていたそうです 今でも 風の送り具合にメリハリがあるので 機械より人の手によるフイゴ操作を好む 演奏家もいるとか そして 音色を出すのが 林立したパイプ 木製もあれば 金属製もあり 長さも千差万別ですが パイプの素材 形を工夫して音色の違いを出し さまざまな楽器に近い音を だせるようにされています しかし 1本のパイプからは 1種類の音しか出せません ですから ハーモニーのある音色を奏でるためには たくさんのパイプが必要です ひとつのパイプオルガンには 何千本ものパイプがあり オルガンの規模が大きくなればなるほど パイプの本数も増えます サントリーホールのパイプオルガンには 5898本ものパイプがあるそうで 1本のパイプから出る音色を ストップ と呼びますが オルガンの演奏中に 音色を切り替える装置が ストップレバー です このストップレバーの操作で 鳴らしたい音が出るパイプ群に 風が通るようになります フルートの音を出したい 弦楽器の音を出したい 奏者がそう思ったら それぞれの音のパイプにつながる ストップレバーを引き出します そうすると トラッカーと呼ばれる装置が連動して動いて どのパイプに風が送られるか決まります ストップレバーは 鍵盤の両隣にボタンのような形で設置されていて 奏者や助手さんが 演奏中におりに触れ 引っ張ったり戻したりしています 当然 大きなパイプオルガンでは ストップレバーの数も多く サントリーホールのオルガンには 74種類ものストップレバーがあるそうです そして 音階を決めるのが鍵盤で 鍵盤とストップレバーの組合せにより どのパイプに風が通るか決まり 奏でたい音色が決まります ピアノの鍵盤とは異なり 単なる音色のオンオフ・スイッチなので 強く押しても弱く押しても 音量と音色は変わりません むしろ演奏家的には いつ押して いつ離すかの タイミングが重要だそうで パイプオルガンを演奏している姿は ピアノを演奏しているように見えますが 鍵盤を操作しながら 管楽器を演奏している感じなのでしょう パイプオルガンから どのようにして あの華麗で荘厳な音が出るのか その仕組みがよくわかりましたが 想像していた以上に大掛かりで 何千本ものパイプを組み合わせて どんな音を出すか考えるなんて なんだか気が遠くなるような作業です それを 18世紀から手作りで製作していたなんて きっと大変だったのだろうなあ と いたく感心した次第です
高橋医院