夏の食中毒
暑い夏に注意したい病気の最後に 食中毒 の解説をします 食中毒は 身体にとって有害な微生物や化学物質などを 食品と一緒に食べることで 下痢 嘔吐 腹痛 発熱 などの症状が 起こってくる病気です <夏は細菌による食中毒が多い> 原因の多くは 細菌やウイルスによるものですが 冬の食中毒の原因は ウイルス性(ノロやロタなど)が多いのに対し 夏の食中毒は 細菌性が多い 上のグラフは 月ごとの食中毒の発生数と原因を示していますが 黄色の細菌性は 5月~9月の夏場に多く 水色のウイルス性は 11月~3月の冬場に多いことが わかります 食中毒を起こす細菌の多くは 20℃くらいの室温で活発に増え始め 人間の体温くらいの温度で 増殖のスピードが一番速くなり また 湿度を好みます ですから 夏は細菌性の食中毒に注意する必要があります 食中毒の多くは 飲食店の料理や仕出し弁当が原因になりますが 全体の1~2割は 家庭で起こっていますから 家で料理をする人は 食材の取り扱いに注意が必要です <食中毒の起こり方> 細菌による食中毒は *感染型 *生体内毒素型 *毒素型 に分類されます @感染型 感染型の細菌は 腸に行くまでに消化液によって消化されますが 大量の菌を食べた場合は 食中毒菌が腸まで達して食中毒を引き起こします 体内に入ってから 1〜3日ほどかけて増殖し その過程で胃腸に障害を起こします カンピロバクター サルモネラ 腸炎ビブリオ などがあります @生体内毒素型 感染後に体内で増殖してから 毒素を作って放出するので 潜伏期間は5日前後と ほかのタイプより長くなっています これによる食中毒の症状は ときに生命を脅かすほど激烈で O157などの腸管出血性大腸菌や コレラ菌 が代表です @毒素型 口に入る段階ですでに毒素を持っているので 食べた後 数時間で発症します 黄色ブドウ球菌 ボツリヌス菌 がこのタイプです <対処と治療> 症状が軽い場合は 家で安静にして充分に水分補給を行いますが 下記のような症状があれば すぐに医療機関を受診すべきです *嘔吐で 水分を充分に取ることが出来ない *水のような激しい下痢が 頻回に起こる *腹痛や嘔吐がひどくて 口から物が食べられない *血便がある *高熱がある 医療機関での治療は まず安静を保ち 下痢と嘔吐による脱水を改善するために 水分と栄養を点滴で補います 腹痛や脱水がひどい時 発熱がある時 粘血便がある時などは 食べたもの 食べてから発症するまでの時間 などから原因菌を推定し さらに糞便などから原因の細菌を特定し その細菌に効く抗菌薬を投与します このように *食べたものの種類 *食べてから どれくらいで症状が出たか によって ある程度は原因菌が推定でき 抗生剤投与を開始できますから 医療機関を受診する際は これらの点をしっかりと伝えてください 強い下痢止めは 腸内に原因菌を閉じ込めてしまい 悪化させることもあるため 症状がひどい場合以外は使用せず 下痢止めを使用する場合は 必ず抗生剤も併用します 早く受診して原因細菌を特定し 原因に応じた治療をすれば 数日の治療で治るのが普通です 注意が必要なのは 腸管出血性大腸菌で 発見が遅れると 命を落とすこともあり得ます 特に もともと体力の弱い子どもや高齢者は 急激に重症化しやすいので 早急に受診することが大切です <予防> 食中毒の予防は 細菌やウイルスを *つけない *増やさない *死滅させる という 予防の3原則に従います @つけない 調理する人や場所を清潔に保ち 食品に細菌やウイルスを食品に付着させない こまめに手を洗う 肉や魚を切るときは使用する毎に 包丁やまな板を洗剤で洗う 肉や魚の汁が 他の食品につかないように分けて保存する といった注意が必要です @増やさない 細菌の多くは 10℃以下で増殖のペースが落ち -15℃以下で増殖が停止しますから 細菌が増えないように 生鮮食品は速やかに冷蔵庫に保管します 冷蔵庫内の温度上昇を避けるため 冷蔵庫のドアを開ける時間を短くし 冷蔵庫に食品を詰め込まないように注意します @死滅させる ほとんどの細菌は 加熱によって死滅しますから 食品を十分に加熱調理してから食べ 生食は避けます また 肉 魚 卵を調理した調理器具に 熱湯をかけ 調理器具を台所用殺菌剤で殺菌することも 励行します
高橋医院