大人も楽しめる くるみ割り人形
くるみ割り人形 の コール・ド・バレエ について語りましたが 以前 新国立劇場バレエ団の プリンシパルの小野絢子さんが 同劇場のHPのインタビュー記事で コール・ド・バレエを踊る難しさについて 次のように語っておられました コール・ド・バレエを美しく見せるには 常に全部の⽅向に 神経を配らなければならないし 音楽とうまく調子を合わせることも大切で ほんの紙⼀重でもテンポがずれると ダンスの感覚が変わり 遅いテンポだと ばらつきが出るし 速いテンポだと ついていけなくてガタガタになってしまうので 本番は与えられた音楽で ダンサーたちがどうにか料理しなくてはなりません なるほどです そういう意味では コール・ド・バレエは バレエ団の実力や底力が 如実に出るように思います タレントあふれるプリマやプリンシパルがいれば 彼ら彼女らのソロや ふたりで踊るパ・ド・ドゥで 魅せることはできますが でも 20人以上が一同に踊るコール・ド・バレエは ソロやパ・ド・ドゥとは異なる魅力があります そして メンバー全体のスキルが 高いレベルで揃っていないと コール・ド・バレエは美しくなりません 前回も言及しましたが くるみ割り人形は 幼いクララのイブの夢物語がモチーフなので まあ お子ちゃまは それだけでも充分に楽しめるでしょうが 正直言って大人的には ストーリー展開に少し物足りなさも感じます だから 雪と花の ふたつのワルツのコール・ド・バレエを愛でながら バレエ団の力を評価するといった そんな鼻持ちならない(?:苦笑) 大人の楽しみ方もできる演目かな? とも思います で 大人のいやらしさで くるみ割り人形にもう一歩踏み込むと(再苦笑) 花のワルツは 夢の世界の女性リーダーの 金平糖の妖精が踊るバージョンと クララ自身が踊るバージョンの 2種類があります 今回のキーエフは後者でしたが 書き手は前者のバージョンが好みです というのも 前者のバージョンでは まず クララを夢の世界に引きずり込んだ 老人のドロッセルマイヤーが 花のワルツの主役の金平糖の妖精を クララに紹介して 幼い少女のクララが 大人の女性の金平糖の妖精に憧れて 彼女の仕草や表情を必死に真似て踊るのですが ドロッセルマイヤーは その様子を 舞台の隅からじっと眺めているのですよ そして そのあと 王子を登場させてクララと踊らせる その様子も ドロッセルマイヤーは 舞台の隅からじっと眺める 舞台では クララ 王子 金平糖の妖精らが入りまじり 見事なコール・ド・バレエが展開される これって 思い切り深読みすると 谷崎潤一郎の「痴人の愛」とか 渡辺淳一の「化身」で表現されていた 微妙で隠微なコンテクストを 感じられません? そんな突拍子もない解釈をするのは ひねくれた大人の書き手だけでしょうか?(笑) 物語の最後に 一夜の夢から醒めたクララは 少し大人になって朝を迎える 仕掛け人のドロッセルマイヤーは どこで どんな気持ちで そんなクララを見ているのでしょう? そして くるみ割り人形だった王子は 実は刺身のツマだった? ドロッセルマイヤー 恐るべし?(笑) ほらね お子ちゃまが喜ぶ くるみ割り人形 大人だって こんなふうにして楽しむことができるのですよ?(笑) 良い子の皆さん ゴメンナサイ!(苦笑)
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