先日のニューズウイーク

超富裕層への富の集中がアメリカを破壊する

というタイトルのコラムが掲載されていました

アメリカでは 
所得額トップ1%が 
国家の富の約20%以上を握っており
下位90%が有する富は 
約23%に過ぎない

所得額トップ1%が 国家の富の約20%以上を握っていることを示すグラフ

という現状を踏まえて

カネが世界を動かし 選挙の流れを決め 
権力の担い手を決めている

アメリカをはじめとする
先進国で進む富の集中は
社会と民主主義の安定を危険にさらしている

これは 世界を崩壊させる恐れがある 
最も深刻な長期的な問題だ

富の集中が グローバル化と組合わさると
ポピュリズムが高まり 
民主主義は衰退する

と 危惧を呈します


2年ほど前に 
21世紀の資本 が大流行したトマ・ピケティ

「21世紀の資本」の表紙と著者のトマ・ピケティの写真


資本は自己増殖する
ひとたびその仕組みが確立されると 
自己増殖のスピードは
生産によって国民の所得が蓄積されるスピードを
超える

との指摘を引用し 
現在進行中の 富の一極集中の理由を推察します

投資家や金持ちは 
大金の海原をゆうゆうとクルージングしていけるが

大金の海原をゆうゆうとクルージングする大金持ちの姿

庶民は 
ボートが沈まないように 
必死でこぎ続けなければならない

ボートが沈まないように必死でこぎ続ける庶民の姿

アメリカでは 
ルーズベルトのニューディール政策以来行われてきた
市場経済が一定の規制を受け

金持ちほど税負担が大きく 
貧困層を支援する政策により
平等主義的な社会が築いてこられたが

ニューディール政策にサインするルーズベルトの姿

それが80年代にレーガンが開始した
「レーガン革命」により中断され
政府による富の再配分が行われなくなったことが
大きな原因であると 
指摘します

レーガンの姿

この流れには 
サッチャーさんも絡んでましたよね

レーガンとサッチャーの写真

そして 
富の集中が民主主義に緊張をもたらしている 
と指摘します

民主主義の要である 
「ひとり1票」の原則は
今や「1ドル1票」 に
取って代わられようとしている

選挙の投票箱にドル紙幣を投じる人の姿

トランプのアメリカで見られた 
白人至上主義者たちと民衆との衝突を
引き合いに出して
格差の拡大は 社会の緊張も高めていると 
警鐘を鳴らし

そして コラムをこう結びます

富の格差が拡大すると 
社会の緊張が高まり
これまでにないほど 
民主主義が緊張にさらされる

そして その次は 
為政者のクビが飛ぶ
しかも暴力的な方法で

暴徒化する大規模なデモに参加する多くの人々の姿

うーん 最後の〆が ちょっと衝撃的ですね、、、


そういえば
昨年末の12/28の
ファイネンシャル・タイムスの社説でも

民主主義を脅かす格差拡大

というタイトルで

権力は富を生み 富は権力を生む

この連鎖を止める方法はあるのだろうか?

と 現代社会の富の一極集中状態に 
危惧を呈していました

現代社会の富の一極集中状態を描く戯画

この社説では

これまでの人類の歴史で 
ヨハネの黙示録に出てくる 
人類に破滅をもたらす4つの悲劇

すなわち 

戦争 革命 疫病 飢饉

が  格差の拡大に歯止めをかけてきた 

と指摘し

ヨハネの黙示録に出てくる 人類に破滅をもたらす4つの悲劇を示す絵画

今後 そうした破滅をもたらす事態が
発生しない限り
我々は無限に拡大する格差に
再び直面していく可能性が大きい

と 悲観的な予測を立てます


しかし
現代国家は
所得と富の不平等を是正すべく
様々な政策を導入しようと思えばできる

税金と社会保障が 
格差を縮小させてくれるだろう 
と希望的な観測も述べます

はたして それが出来るのでしょうか?


大きな政府 小さな政府の 格差縮小への取り組みを比較した戯画

この社説でも 最後に
こうした現代資本主義社会における民主主義の危機を 
憂います

20世紀の混乱の中で
自由民主主義を守り通してきた
アメリカにおいてさえ
今 ポピュリズムと富裕層による金権政治が
台頭している

将来的には 
大衆を常に分断しつつも従順にさせておきながら
富裕層が力を握る金権政治が続く時代が 
到来するかもしれない

民主主義と書かれた看板の上に置かれるポピュリズムと書かれた看板

あるいは 独裁者が台頭する可能性もある 

エリートの富裕層に批判的なことは言うが
富裕層に対する抵抗勢力のふりをするだけで
決して彼らに不利なことはせず
エリート層に抱いている大衆の不満を利用して
権力を握る独裁者だ

格差拡大は 最終的には 
民主主義をも殺してしまうかもしれない

格差拡大は 最終的には 民主主義をも殺してしまうかもしれない と警告を鳴らすチラシ

訴えている内容がとても類似した
ニューズウイークのコラムと 
ファイネンシャル・タイムスの社説を
タイミングよく短期間の間に連続して読んで

普段 あまりそうしたことを
考える機会がない書き手も

うーん 今の世界の社会って そんな感じなの? と

ちょっと思いにふけったというか 
びっくりもしました


トランプ大統領がアメリカに出現したのは
突拍子もない現象だったのではなく 
拡大した富の格差による結果
ということですよね?

そして そのトランプは 
レーガンを見習った経済政策を行い
彼の品のない言動に愛想を尽かしているアメリカ国民も
彼の政権下での経済の好調さには 
一定の評価を下しているとか

先週のダボスでも 
トランプさんの評判は良かったとか!

レーガンと握手する若き日のトランプ
ダボスで熱弁をふるうトランプ

ヨーロッパでは
グローバリズムがもたらしたひずみを基にした
ポピュリズムが徐々に跋扈しようとしている?

ポピュリズムがEUで拡大している様子を示すイラスト

そんな世界の状況は
個人的にはあまり実感できず
あなたの知らない世界 ではあるのですが

でも 現実的には 
そうした世界に生きているのですよね

世界の現実を示す図

大きな政府が
富の格差問題を改善して 
民主主義の危機を救えるのでしょうか?

それとも 
ファイネンシャル・タイムスの社説で指摘された
戦争 革命といったカタストロフィーを
待つしかないのでしょうか?

社会の現実と向き合わずに現実逃避する人を揶揄する戯画

うーん 世界は どうなっていくのでしょう?

こんなふざけた 現実逃避的な漫画を
最後に引用している場合じゃないのかな?(苦笑)

でも 面白い漫画を見つけてきたでしょう?

アラ還暦になっても まだ モラトリアム?(笑)


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