欲望の色彩
昨年は 一昨年のクラーナハ展のように これは見に行きたい! と思う企画展がありませんでした 運慶は行きたかったけれど すごい混雑だったようで パス(苦笑) そのなかで 唯一 食指が動きそうだったのが 東京都美術館で開かれていた テイツィアーノとヴェネツィア派展でした でも 開催期間中はなにかと忙しくしていて 残念なことに行く機会を逸した 幸い この展覧会について特集していた NHK番組の日曜美術館を録画しておいたので それを見て我慢することにしました(苦笑) それにしても 番組のタイトルが 欲望の色彩 ですか? 最近いろいろな分野で 欲望がキーワード?(笑) テイツィアーノは 16世紀のヴェネツィア派を代表する画家ですが 正直言って ヴェネツィア派には馴染みがありませんでした あの頃のイタリア絵画というと どうしてもフィレンツェとかローマが 興味の対象の中心となり ヴェネツィア派まで守備範囲が広がらない というか 日本にはあまりプロパガンダされていない?(笑) でも NHKさんがいみじくも 欲望の色彩というタイトルをつけられたように フィレンツェが 素描にこだわった のに対し ヴェネツィアは 色彩にこだわった ミケランジェロが テイツィアーノの作品を見て 彩色は良いのに素描がなっていなくてもったいない と語ったという話もあるぐらいで(ホントかな?:笑) それくらい フィレンツェとヴェネツィアでは 目指す方向が対照的だったようです で 個人的にどちらが好みかといえば 天邪鬼な書き手は 素描を重視する正統派・フィレンツェより 感性にうったえかける 色彩を重視するヴェネツィア派の方が好みかな 今回の展覧会の目玉作品のひとつが テイツィアーノのフローラ 20代に描いた彼の出世作ですが 番組のゲストたちが絶賛します *匂い立つリアリティ 官能美 *内側から色香がにじみ出ている *可愛らしく品がよく いやらしさがなく 癒しすら感じる *肌がなまなましくふくよかで さらに透明感がある 確かに魅力のある作品ですが そこまで誉める?(笑) 美術評論家の方たちは *自分の世界を押し付けず 見る人を楽しませる工夫がある *視線がはっきりしない 手の動きも曖昧 といった曖昧さが立体感を醸し出し 見る人の想像力に訴えかけるリアリティがある とも 指摘されます 見る人の想像力をくすぐる 大切なことですね この作品は それ以降 美人画の定番とされ その革新的な色使い 奔放な筆使いは 近代絵画の先駆けともされ ベラスケス ゴヤ ルーベンス そして印象派の画家達に 大きな影響を与えたそうです また テイツィアーノは それまで神話のモチーフとして描かれていた ヌード画を よりリアルな身近なものとして描いた 先駆者でもあり 彼のヌード画には ヴェネツィアの成功した商人たちから リクエストが殺到したそうです 書き手は ウルビーノのヴィーナス がお気に入りですが 円熟期に バチカンの枢機卿からのリクエストで描いたとされる ダナエ ギリシア神話に登場する王女ですが その美貌に目をつけゼウスが 自らを黄金の雨に姿を変え関係を持った とされていて この絵は まさに天から降ってくる金貨と交わらんとする瞬間を 描いています 快楽に身をゆだねる恍惚とした表情が 生々しくエロテイックで これに比べると ウルビーノのヴィーナスなんて修道女程度にしか見えない などという過激な(?:笑)コメントもされていました 書き手は ウルビーノのヴィーナスの方が好みですが まだ大人の世界がわからないお子ちゃま ということ?(笑) ちなみに ダナエは何枚も描かれていて 最初の頃の作品では脇に天使がいたのですが 後の作品では 天使の代わりに 降ってくる金貨を袋に入れようとする老婆が描かれています 人間 歳を重ねると 世の中が良く見えてくるということでしょうか?(笑) それにしても思ったのですが 以前ご紹介したクラーナハのヌード画とは 全く異なりますね 両方とも 官能にうったえかけてくるのですが うったえ方の質が異なる この差は面白いです イタリアとドイツの自然環境 文化 人々の性格の差 によるものでしょうか? そんなことを考え始めると また色々と楽しめそうですね(笑)
高橋医院