胃食道逆流症の診断には 
どのような検査が行われるのでしょう?

<自己記入式アンケート>

この病気でいちばん問題なのは
病的な胃酸の逆流によって起こってくる
胸やけなどの自覚症状により
患者さんの日常生活の質・QOLが
障害されてしまうことです

ですから まず
QOLがどの程度ダメージを受けているかを
明らかにし
初期診断の手助けとするために

患者さんに
アンケートに答えていただくことが多いです


自己記入式アンケートの現物

自己記入式アンケートには 
何種類かありますが
いずれも症状の頻度を点数化しているので

得られた点数により
初期診断や治療効果判定を
客観的に行うことが出来ます

たとえば よく用いられるReQUEST問診票では

過去1週間の症状について

*胸焼け 不快感 むかむか感 痛み などにより
 普段の生活に支障があったか?

*具合が悪くなることが心配で 
 充分な量の食事がとれず
 不満に思うことがあったか?

*具合が悪くなることが心配で 
 食べたいものが食べられず
 不満に思うことがあったか?

*寝床についてからすぐに眠れず 
 困ったことがあったか?

*夜中に目が覚めたり いつもより早く目覚めて 
 困ったことがあったか?

の5つの質問を

全然ない 
わずかにある 
少しある 
かなりある 
非常にある

の5段階評価で答えていただき 点数化します


前回
食道のびらんや病的な胃酸逆流をともなわない
非典型的なタイプ
があることを説明しましたが

そうした厳密なタイプ分けの診断のためには 
以下の検査が有用です


<内視鏡検査>

目で見て

*食道のびらん 潰瘍の有無

*重症度判定 (LA分類)

*病理組織検査によるがんなどとの鑑別

を行います

内視鏡検査をしている様子

びらん性か 非びらん性かを鑑別は 
内視鏡検査を行わないと解りません

また あとで詳しく解説しますが
酸分泌抑制薬を長期間継続する
維持治療を行うべきかどうかの判断にも
内視鏡検査で得られる情報は 
極めて重宝します

なかなか患者さんの同意を
得ることが難しいのですが
できれば治療前に内視鏡検査を
受けていただきたいものです


<24時間食道pHモニタリング>

タイプ別の診断に必須の検査です

内視鏡を用いて 
食道下部 LES上縁5cmのところにセンサーを設置し
その部位の酸度pHを 24時間 継続的に測定します

胃酸が食道に逆流すると 
pHは4以下になりますが
その時間が60~70分(1日の5%)を超えると
病的な胃酸逆流があると診断されます

24時間食道pHモニタリングを行っている様子


<24時間食道インピーダンス・pHモニタリング>

さらに進んだ検査で

*食道下部に逆流する液体 気体の鑑別

*順行性・逆流性の鑑別

*酸以外の物質の逆流率の測定

を行います

24時間食道インピーダンス・pHモニタリングの解析結果

現時点で 
逆流現象の詳細を捉え得る 
最も高感度の検査で

これにより 前回説明した
非びらん性胃食道逆流症のサブタイプの鑑別が
可能になります

また 
治療後にこの検査を行うことで
酸逆流量がまだ多い場合は
治療に用いた酸分泌抑制薬の用量不足が判断できます


<PPIテスト>

内視鏡検査を行わず
酸分泌抑制薬の治療効果により 
タイプの判断を行う手段として
PPIテストがあります

服用するPPIの錠剤の写真

強力な酸分泌抑制薬である
プロトンポンプ阻害薬(PPI)を7日間服用し
効果があるかみるもので

胸やけなどの症状が良くなれば
病的な胃酸逆流による胃食道逆流症逆流性の
可能性が高いと判断します

24時間食道pHモニタリングによる診断に比し
感度78% 特異度54%とされています

どうしても内視鏡検査が出来ないときに 
考慮すべき検査です

また 下記の検査により 
下部食道括約筋(LES)の働きを評価できます


<食道内圧測定検査>

食道の動き 
下部食道括約筋の働きを測定します

食道内圧測定検査の機械と解析結果


<バリウム検査>

LESのゆるみ具合を評価します

これらの検査は専門的なので
大学病院や専門病院を紹介して
行うことになります
高橋医院