中央区・内科・高橋医院の
健康のための栄養学に関する情報


最近注目されている食物繊維には 
どのような働きがあるのでしょう?

<胃 小腸での働き>

@胃

水を吸ってゲルを形成して
内容物を増すので
食物の停留時間が長くなり 
満腹感が得られる効果があります


@小腸

*食物の移動 吸収速度を遅らせて 
 血糖値の急激な上昇を抑える

*胆汁酸 コレステロール 
 ミネラル 有害物質などを吸着し
 体外への排出を促進する

といった働きがあります 


胃 小腸での食物繊維の働きをまとめた図




<保水性・吸着性・粘性>

このように
食物繊維が有する 保水性・吸着性・粘性 を
中心とする機能は
古くから指摘されてきました

@保水性
 糞便量の増加 腸管の蠕動運動を亢進し
 便秘 大腸がんの予防になる

@吸着性
 有害物質 ナトリウムの排泄を促進し
 大腸がん 高血圧の予防になる

@粘性
 胃内滞在時間の延長 栄養素の吸収遅延を促し
 肥満 糖尿病 脂質異常の予防になる

ことが利点となります


<排便促進>

また不溶性食物繊維による排便促進には

排便促進作用の説明図

*水を吸収して膨潤化して 
 便を軟らかくして 量を増やす

*排便が促され 便の消化管通過時間が短くなる

*発がん予防

*発がん物質 アレルギー性物質を吸着して
 体外に排出する

*便秘の予防 改善

といった さまざまな利点があります

水溶性 不溶性両方の排便促進作用をまとめた図



<腸内環境の調整>

さらに 最近は新しい機能が注目されています

それが水溶性食物繊維による腸内環境の調整です

腸内細菌叢の項でも解説したように
最近 腸内環境が
さまざまな病気の病態形成に関与することが明らかにされ
腸内環境をいかにして良い状態に保つかが 
注目の的になっています

そして

水溶性食物繊維が 
腸内細菌により短鎖脂肪酸に分解されるとともに
腸内細菌叢を調整することにより 
腸内環境を整える

というのです

食物繊維が腸内細菌により短鎖脂肪酸に分解されることを示す図
これは 食物繊維の注目度 
赤丸急上昇ですよね!(笑)


詳しく説明すると

水溶性食物繊維は 
腸内細菌により発酵され
酢酸 プロピオン酸 酪酸などの
短鎖脂肪酸を生成しますが

短鎖脂肪酸が生成される過程を示す図

これらの短鎖脂肪酸が
腸内細菌叢を調整して 
腸内環境を整えるのです

また 短鎖脂肪酸は
腸上皮細胞のエネルギー源となるとともに
腸管から吸収され 
全身性にさまざまな生理活性を発揮します

短鎖脂肪酸の働きをまとめた図

短鎖脂肪酸については のちほど詳しく解説します


<生活習慣病の予防>

一方 食物繊維は
生活習慣病の予防にも関与することが
明らかにされています

水溶性食物繊維

*小腸内で コレステロール 胆汁酸を吸着して
 再吸収を妨げ便中に排泄させるので
 その結果として血中コレステロール値が下がる

食物繊維がコレステロール値を下げることを示す図

*食物の移動 栄養素の吸収速度を緩やかにし 
 血糖の急激な上昇を抑える

*エストロゲンの腸肝循環を阻害して 
 便への排泄を促し 
 乳がんを予防する

といった作用があります


@糖尿病への影響

これまでに何度も説明して来たように
食後の血糖値の急激な上昇を抑えることは 
糖尿病の予防に重要です

食物繊維が食後の血糖値の急激な上昇を抑えることを示す図

食物繊維の
糖尿病への発症・進展への影響については

*10g/日の食物繊維の摂取増加で 
 糖尿病の発症率が9%減少し
 特に穀物由来の繊維が有効で 
 発症率は25%も減少する

*HbA1cの低下

インスリン抵抗性の改善

インスリン GLP-1の分泌促進

*体重減少

といった効果が報告されています

さらに 
食物繊維は膨潤してかさが増し 
胃内停留時間を延長させるので
満腹感が得られ 
過食による肥満を防止することができます


このように 食物繊維は

*腸内環境の調整作用

*生活習慣病・糖尿病の予防作用

といった
健康関連の最もup to dateな分野での貢献が
注目されているのです


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