短鎖脂肪酸の生理的作用
中央区・内科・高橋医院の 健康のための栄養学に関する情報 腸内細菌の作用により 水溶性食物繊維が発酵されて生じる 短鎖脂肪酸について説明します 脂肪酸の解説 腸内細菌叢の作用の解説で 短鎖脂肪酸は登場しましたが 今日は まとめて詳しく解説したいと思います <種類> 水溶性食物繊維は 腸内細菌により発酵され 短鎖脂肪酸を生成しますが 構成する炭素の数によって 3種類に分かれます @酢酸 炭素が2つ 60~75% @プロピオン酸 炭素が3つ 15~25% @酪酸 炭素が4つ 10~15% これらの短鎖脂肪酸は 大腸局所の粘膜細胞でエネルギー源として 使用されますが 腸管から吸収されて全身にいきわたり 全身のさまざまな細胞のエネルギー源になるだけでなく さまざまな生理機能を有することが明らかになり 病気との関連からも注目されています <腸管内での生理作用> @腸内を酸性にして 腸内細菌叢を調整する = プレバイオティクス効果 短鎖脂肪酸は 腸内を酸性にすることにより *酸性に弱い 大腸菌 クロストリデイウム属の増殖を抑制する *酸性に強い ビフィズス菌 乳酸菌の増殖を維持する といった 腸内細菌叢の調整を行います 腸内細菌叢の項で説明したように 腸内細菌には善玉菌 悪玉菌があり *大腸菌 クロストリデイウム属は悪玉 *ビフィズス菌 乳酸菌は善玉 ですので 短鎖脂肪酸は 腸内細菌叢を良い状態に変化させるわけです また プレボテラ菌が増え 高脂肪・高タンパク食で増えるバクテロイデス菌との 比率が増えることで 耐糖能が改善すると報告されています こうした作用の結果として *菌種の多様性が増加し *バクテロイデスが増加 *プロテオバクテリアが減少 することになります このような腸内細菌叢の調整が *機能性胃腸障害 *炎症性腸疾患 (クローン病 潰瘍性大腸炎) *脂肪肝 *糖尿病 *肥満 *大腸がん *自閉症 *多発性硬化症 *アレルギー などの種々の病気の病態に 関与することが明らかにされています @腸管の血流を増す 腸管の運動を調整する @大腸での生理活性物質の産生を亢進する 大腸は 便を形成したり水分を吸収しているだけでなく さまざまな生理活性物質を産生して 体の機能に影響を及ぼします 短鎖脂肪酸は 下記の生理活性物質の産生を亢進します *L1細胞から産生されインスリン分泌に関与する インクレチン・GLP-1 *食欲調節ホルモン PYY *EC細胞から産生される 腸脳相関に関与する セロトニン このように 大腸内で作られた短鎖脂肪酸は 現場でさまざまな作用を発揮しています
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