中央区・内科・高橋医院の
健康のための栄養学に関する情報


食物繊維の重要性を説明してきましたが

日本人は日々の食事で 
充分量の食物繊維を摂取できているのでしょうか?

<日本人の食物繊維の摂取量は減少し続けている>

残念ながら 
摂取量は年々減少しています

1950年は 
1日に20g摂取できていましたが

2015年の1日あたりの摂取量は

*男性15.4g (水溶性3.5g 不溶性11.3g)

*女性14.7g (水溶性3.4g 不溶性10.8g)


日本人の食物繊維摂取量は年々減少していることを示すグラフ


食物繊維全体の1日あたりの目標摂取量

男性 20g 女性 5.6g

水溶性食物繊維の1日あたりの目標摂取量

男性 6.3g 女性 5.6g

とされていますが

いずれも 目標値に遠く及びません

目標値に遠く及ばないことを示すグラフ

@若年層での不足が目立つ

摂取量は 年齢とともに増加し

*若年者 20代 男性12.4g 女性11.5g

*30代男性13.5g 女性12.6g

*40代男性13.5 g 女性12.2g

*50代 男性14.1 g 女性14.2g

*60代 男性16.6 g 女性16.4g

*70代以上 男性17.3 g 女性15.5g

となっています

つまり 若年層での摂取不足が目立つ

若年層での摂取不足が目立つことを示すグラフ


<なぜ食物繊維の摂取量が減少しているか?>

こうした変化は 
食生活の欧米化 ライフスタイルの変化によると考えられ

*米を食べなくなった

*大麦などの雑穀を食べなくなった

ことが 大きな原因と推察されています


@白米を主食にしているから?

欧米人に比べ 
日本人は食物繊維の摂取量が少ないのですが
これは意外に思われるかもしれません

というのも

日本人は
食物繊維を含む海藻や野菜を
たくさん食べているイメージがあるからです

しかし 
食物繊維の摂取源が海藻 野菜のために 
逆に少ないのです

欧米人が主食としているパンは 
全粒穀物のものが多く繊維が多いのに対し

日本人の主食の精製された白米には 
繊維が少ない

だから海藻 野菜でいくら補っても 
繊維不足になってしまいます

主食としては
お米なら 玄米や五穀米 
パンならライ麦パンや精製度の少ないパンの方が
食物繊維がたくさん摂れます

玄米の写真


<食物繊維の健康促進効果>

食物繊維の摂取量を増やすと 
病気の改善が認められるのでしょうか?

さまざまな疫学研究がなされています

@欧米からの報告

摂取量が7g/日の増加で

*心筋梗塞などの冠動脈疾患が9%

*脳卒中 心血管病が9%

それぞれ発症が減少するとされ

10g/日の増加で

循環器病 喫煙関連がん 消化器病 呼吸器病
などの死亡リスクが
10%減少すると報告されています


さらに 
摂取量が最多と最小の地域間では 
死亡リスクが19%異なり

糖尿病は34% 呼吸器病は21% 
心血管病は20% 感染症は17%
慢性腎臓病は9% がんは15%

それぞれ死亡率が減少します

食物繊維の疾病による死亡抑制効果を示すグラフ


体重減少効果も認められ

1日30gの高繊維食の摂取により 
他の条件を無視しても
体重減少効果が得られると報告されています


また うつ病との関連も指摘されています


@日本での検討

8.7万人が参加したJPHC studyでは

女性では 
不溶性食物繊維の摂取により
循環器疾患の発症リスクが減少しましたが

男性 喫煙者ではこの傾向は認めず

一方 
前立腺がんは減少し
大腸がんは繊維が少ないと増加していました


また5.9万人が参加したJACC studyでは
穀物 果物から摂取した食物繊維が多いと
冠動脈疾患死亡率が減少していました

このように
食物繊維の摂取により
糖尿病 循環器疾患 がんなどの
リスクが減ることが示されています


@摂取する食物が 穀物 野菜 果物により 
 効果に差異がある

興味深いのは
摂取する食物が 穀物 野菜 果物により 
効果に差異があることで

穀物の繊維は
糖尿病の発症を25%減少させますが

果物 野菜の繊維は有効性ない
という報告がある一方で
野菜は有効性ありとの報告もあります

摂取する食物が 穀物 野菜 果物により 効果に差異があることを示すグラフ

さまざまな報告を見ると

穀物由来の食物繊維は良好な効果があり
ついで野菜由来 果物由来と 
効果が減ってくるようです

面白いですね

食物繊維というと 野菜! 
というイメージがありましたが
王道は 穀物なのでしょうか?

食物繊維を多く含むライ麦パンなどの写真

特に精製していないパンや米が 
貴重で有効性があるソースのようです
高橋医院