アルコール依存症
中央区・内科・高橋医院の お酒と健康に関する情報 健診などで肝機能異常を指摘され 心配で来院される患者さんは多くおられます その原因でいちばん多いのは 脂肪肝ですが アルコール性肝障害も少なくありません ついつい 飲んでしまうのですよ と 正直に告白される方が 意外に多くて さらに なんとかして アルコールを止めることができませんかね? と 相談される患者さんもおられます 実際 世の中には アルコール依存症で苦しんでおられる患者さんが おられます 多くの読み手の方にとっては 縁遠い世界かもしれませんが アルコール依存症について解説します <アルコール依存症とは?> ひとことでいうと 大切にしていた家族 仕事 趣味などよりも 飲酒をはるかに優先させる状態 です 具体的には *飲酒のコントロールができない *離脱症状がみられる *健康問題等の原因が飲酒とわかっていながら 断酒ができない などの症状が認められます 飲酒してはならないような状況でも 強い飲酒欲求(飲酒渇望)に苛まれますし 連続飲酒 つまり 起きている間は チビチビと飲み続けてしまうことになり それが中核症状となります この連続飲酒は 離脱症状を防ぐための自己防衛 という側面もあります アルコール依存症の患者さんは 国内に約80~100万人おられますが 受診率は10%未満で 実際に治療を受けている方は 4万人に過ぎません また 予備軍とも言える アルコール多飲者・乱用者は980万人もいます 日本の成人人口の10%弱が アルコール依存症予備軍で 約1% 100人に1人が アルコール依存症 ちょっとびっくりですね! さらに アルコール依存症を発症するまでの期間は 男性と女性で異なり 男性に比べて女性では 半分程度の短期間で発症するといわれています つまり 女性の方が依存症になりやすいので要注意です (この点については あとで詳しく説明します) <診断> アルコール依存症の診断は ICD-10診断ガイドラインに沿って行われます 過去1年間に 以下の項目のうち3項目以上が 同時に1ヶ月以上続いたか または繰り返し出現した場合は アルコール依存症と診断されます *飲酒したいという 強い欲求・渇望・強迫感がある *飲酒の開始 終了 あるいは飲酒量に関して 行動をコントロール・抑制することが困難 *禁酒あるいは減酒したときに 離脱症状が出現する *それまで飲んでいた量では酔えなくなり 徐々に酒量が増える(耐性の増大) *飲酒にかわる楽しみや興味を無視し 飲酒中心の生活を送り 飲酒や それからの回復の時間に 1日の大部分の時間を消費してしまう *明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず 断酒しない できない 皆さん 大丈夫ですか? <離脱症状> アルコール依存症に特徴的なのが 離脱症状です 離脱症状には *中枢神経がアルコールに依存していることで生じる 身体的な離脱症状 *否認(本人が問題を認めない)や 自己中心性(物事を自分の都合のよいように解釈する) などの心理的な離脱症状 が認められます さらに 暴言・暴力 徘徊・行方不明 妄想などの精神症状や 行動異常を伴うこともあります 主な身体的離脱症状としては @軽〜中等症 *手のふるえ 発汗(とくに寝汗)心悸亢進 高血圧 嘔気 嘔吐 下痢 体温上昇 さむけ *睡眠障害(入眠障害 中途覚醒 悪夢) 不安感 うつ状態 イライラ感 落ち着かない @重症 *けいれん発作 振戦 *幻聴 幻視 幻覚(天井に虫などが見えるなど) 見当識障害(自分のいる場所や時間が分からなくなる) などがあります 手のふるえなどの早期離脱症状は 飲酒を止めて数時間すると出現し 幻視 幻聴 見当識障害などの後期離脱症状は 飲酒を止めて2~3日で出現します そして患者さんは 離脱症状による不快感から逃れるために さらに酒を飲み続けることになってしまうのです
高橋医院