ルドンは 20代はじめに 画家を目指してパリに出て修行しますが

画一的な 写実ばかりを重視するトレーニングに馴染めず
失意のうちにボルドーに戻ります

そして故郷で ふたりの人物に大きな影響を受けました

そのひとりが 放浪の版画家 ロドルフ・ブレスダン

ord21

彼は自然描写が得意でしたが
目に見えない自然の神秘を描くことに熱心で

ord22

ルドンは彼から 見えないものを見る創造力の大切さを学んだそうです

もうひとりは 博覧強記の植物学者 アルマン・クラヴォー

ord23

ルドンは彼のもとで
顕微鏡を覗かせてもらい 未知の生命の世界を知りました

そして 目に見えない生命との出会いに 大きな刺激を受け
自然が有する不思議さのようなものを描くきっかけとなりました

いわば サイエンスとアートとのポジティブな関わり とも言えます

NHKの番組で解説していた方が

ルドンの自然観は
西欧的な人間中心の自然との関わり方ではなく
日本人の感性に近いものがある

と 興味深いことを語っておられました

またクラヴォーは 植物学だけでなく 芸術や文学にも造詣が深く
ルドンに ボードレールの詩集 惡の華 を
発刊直後に読ませたりもしました

ord25

彼はルドンの さまざまな領域への関心を導いたのです

実際 ルドンの 得体の知れない怪物のようなものを描いた版画には
当時の科学の最先端だった ダーウインの進化論 をもじったのか
「起源」というタイトルがつけられています

ord24

そして39歳で 石版画集「夢の中で」で やっと画壇にデビューします

ord26

それは 色彩を一切使わない モノクロの世界でした

彼の前半生は 不思議で 怪奇的な作品が多く
独特のモノトーン モノクロの世界を表現していたので

黒の時代 と呼ばれています

ord27

暗闇に浮かぶ目玉

ord28

ヒトの頭を付けた植物

ord30

黒い怪物 昆虫

ord29

水のなかでうごめく 原始生命のようなもの

そんな奇妙なモチーフが 好んで描かれました

不思議な ファンタスティックなイメージ
内面的で 引き篭もった スピリチュアルなイメージ

まさに 自然の神秘 生命力 見えないモノ を
描こうとしていたようです

黒は ルドンにとって とても重要な色でした


彼は 黒を
最も本質的な色彩で 優れた精神の代理人と見做し

見えないものを表現するための色 心や精神を表す色
と考えていたそうです

ごまかしがきかない 誠実な気持ちの表れとしての黒

色彩は 見えるものを表現できるが 心や精神は表せないから
色彩に引きずられてはならない

とも語っていたそうです

ord32

この作品 気に入りました!

うーん 黒というと
色々な絵の具を混ぜ合わせるとできてしまう色 といったイメージで

黒という色について そんな風に考えたことはなかったので
かなりびっくりしましたが

なかなかの奥深さを 有しているのですね!

ord31

さて この時代のルドンの作品は ごく一部の人々にしか評価されず

しかもそれらは 芸術としての評価でなく
オカルト的な評価に過ぎませんでした

それでも 彼の作品を芸術的に高く評価する人もいて

例えば ポスト印象派のポール・ゴーガンは

ルドンの描くものには 本質的に人間的なものがある と評価し
心の声が聞こえてくる 生命の輝きがある 

と 讃えたそうです

 

高橋医院