おたふくかぜの合併症
おたふくかぜの解説を続けます <症状> 基本的には軽症です 2〜3週間の潜伏期(平均18 日前後)を経て 唾液腺の腫脹・圧痛 嚥下痛 発熱を 主症状として発症し 通常1 〜2週間で軽快します 唾液腺腫脹は 両側 あるいは片側の耳下腺に みられることがほとんどですが 顎下腺 舌下腺にも広がることがあります 通常は 48時間以内にピークを認めます 接触 あるいは飛沫感染で伝搬し その感染力はかなり強いとされています ただし 感染しても症状が現れない不顕性感染も 30〜35%にみられます 鑑別を要するものとして 他のウイルス (コクサッキー パラインフルエンザ)などによる 耳下腺炎があります 反復性耳下腺炎も おたふくかぜと鑑別すべき疾患で 耳下腺腫脹を何度も繰り返すもので 軽度の自発痛がありますが 発熱を伴わないことがほとんどで 1〜2 週間で自然に軽快します <診断> *臨床症状 *おたふくかぜの既往の有無 *ワクチン接種の有無 *周囲の流行状況 *ムンプス以外の耳下腺腫脹を呈する疾患の除外 などにより 診断します 確定診断のためには 唾液 尿 髄液などからの ウイルス分離または遺伝子の検出 EIA 法による血清IgM抗体の検出 またはペア血清での IgG 抗体価の有意な上昇(通常2倍以上) などが用いられます <合併症> @中枢神経合併症 無菌性髄膜炎および脳炎の頻度は それぞれ1〜10% 1%未満で 前者は予後良好ですが 後 者は後遺症や死亡につながり得ます @聴力障害 ムンプスウイルスの内耳感覚神経障害により 難聴をきたします 多くは片側性で 永続的な高度の感音性難聴を呈します 幼少児に多く見られます わが国の疫学調査では 1000人に1人の頻度で発症すると 報告されていますが 近年の耳鼻咽喉科学会の調査では もう少し多いとされています @精巣炎・卵巣炎 思春期以降に感染した場合に 発症することがあり 精巣炎・精巣上体炎および卵巣炎の合併頻度は それぞれ25 % 5%といわれています 多くは片側性で 不妊を来す例はまれです @膵炎 合併頻度は数%という報告が多いです <重症度・予後> 一般的に予後良好ですが 感染力が強く 種々の合併症を呈することがあります 耳下腺腫脹は 発症3日目頃がピークで 通常7〜10日で軽快します <治療> ウイルスそのものに対する 有効で特異的な治療法はなく 発熱 疼痛 経口摂取不良などに対する 対症療法を行います 発熱 疼痛に対しては 必要に応じて解熱鎮痛薬を使用し 経口摂取不良に対しては 脱水の程度に応じて 経口補液療法や輸液療法を行います
高橋医院