おとなのおたふくかぜ
幼少時にかかっていなかったり ワクチンを接種していないと 大人でも おたふくかぜになってしまいます しかも 大人がおたふくかぜに罹ると 子供と違って重症化しやすい傾向にあります 大人は子供に比べると免疫力が高く 免疫が おたふく風邪のウイルスに対して 強く抵抗するため 炎症などがひどくなってしまう と考えられています <大人の症状> 高熱や頭痛がひどくなり 熱が39度まで出る場合があります 耳の下が腫れあがるだけでなく あごや頬まで炎症が広がり 食事を取るのもままならなくなる ひどい場合は 下痢 頭痛 うわごとなども 出てくるといわれています また 一時的に難聴となってしまう場合もあります 基本的には片方だけに 現れるといわれていますが 症状が重いときには両方の耳 が聞こえづらくなります おたふくかぜが治るとともに 回復するようですが まれに難聴が後遺症として残ることがあります <大人の合併症> @髄膜炎 大人になっておたふくかぜになった場合 特に注意したい合併症が 無菌性髄膜炎です 髄膜炎は 子供もかかりやすい病気ですが 大人になっておたふくかぜになると 約1割の確率で出てくる可能性があります 髄膜炎は 脳や脊椎に炎症が起こる症状で 頭痛や吐き気とともに熱がでます また 意識障害やけいれんなどもでることがあります @膵炎 発熱とともに 腹部の圧迫感や吐き気がある場合 軽い膵炎にかかっている場合もあります こちらは2万人に1人の割合で発生しているようですが 放っておくと腹膜炎になる可能性もあります このように 髄膜炎や膵炎の可能性がある場合は おたふくかぜが治ったとしても 症状が続いてしまいます 耳の下の腫れが引いても 4〜5日も症状の改善がみられないときは すぐに医療機関を受診しましょう @睾丸炎 卵巣炎 大人のおたふくかぜは 睾丸炎・卵巣炎など合併症が出やすいのが特徴です 男性なら約20〜30% 女性なら約7%といわれています 睾丸炎になると おたふくかぜ発症後およそ3〜5日目に 陰部が約5倍にまで膨れ上がり 疼くような痛み 発熱、頭痛、吐き気が出ます 通常は1週間程度で 自然に症状がおさまりますが 症状が長期化したり 片側だけでなく両側の睾丸で腫れや炎症が起こると 睾丸の中の精子をつくる細胞が死んでしまい 無精子症 不妊の原因となります 睾丸炎から生殖能力の障害に発展するのは 10%程度と報告されていますが 睾丸に痛みや腫れが現れて症状が長引く場合は 早めに泌尿器科を受診しましょう <妊娠への影響> 女性の場合は 卵巣炎になったとしても 不妊になるとは断定はされていないようです しかし 妊娠中におたふくかぜになると 低体重児出産や流産などのリスクは 高まるといわれています 特に妊娠3か月までの妊娠初期では 流産の危険性が高まります 但し 妊娠中におたふくかぜにかかっても 胎児が先天性奇形をもって生まれてくるリスクは ほとんどありませんし 母体に後遺症が残ることも ほとんどありません 他のワクチンと同様 妊娠中は おたふくかぜのワクチン接種を受けられません また ワクチン接種から2か月間は 避妊する必要があります ですから これから妊娠の予定や可能性がある人は 早めにワクチン接種を受けておく必要があります うがい 手洗い マスク 人ごみを避ける 他の人からの感染に注意するなど 基本的な予防が 妊婦さんのおたふくかぜへの唯一の対策です また 家族に ワクチン接種を受けてもらうことも大切です 妊婦がいる家庭では 妊婦以外の人がワクチン接種を受けるべきです おたふくかぜは 家庭や集団施設で流行しやすいので 妊婦さんと一緒に生活している人が学校や会社で感染し 家で妊婦さんにうつしてしまう可能性も 十分に考えられます ということで これから妊娠の予定や可能性がある人や その家族は 早めにワクチン接種など おたふくかぜへの対策をとりましょう <大人もワクチン接種を> おたふく風邪の最も有効な予防法は ワクチン接種です ワクチン接種で 約90%の方が体内に有効な抗体を獲得することができますが ワクチン接種で体内にできた抗体の効果があるのは 約8〜10年です このように ワクチン接種による 抗体持続期間や抗体力価は 終生免疫と同じではありませんが ワクチン接種により おたふくかぜにかかりにくくなり かかったとしても ほとんどの場合は軽い症状で済みます また 子供の頃にワクチン接種を行っていても 上述したように 大人になり結婚して子供ができる頃には 体内の抗体は徐々に減少し 感染のおそれが出てきます したがって おたふくかぜのワクチン接種は 時期を分けて2回受けることが推奨されています 2回受けることで 自然にかかった場合と同じくらい 有効な抗体を体内に作ることができます 幼少時におたふくかぜに罹ったかわからない場合は おたふくかぜの抗体検査を受けることで 体内におたふくかぜへの免疫があるかどうか 調べることができます 特に 女性は 妊娠する前には抗体検査を受けて免疫の有無を調べ 免疫がない場合はワクチン接種を受けましょう おたふくかぜワクチンの軽度な副反応として 接種部位の痛み 微熱 軽度の耳下腺腫脹 を呈する場合があります わが国では 1981年より 国産おたふくかぜワクチンが 任意の予防接種として使用されています 麻疹や風疹のワクチンは定期接種ですが おたふくかぜのワクチンは任意接種です おたふくかぜによる難聴の出現頻度が 従来の報告より高い可能性があり そうした点からも ワクチンの定期接種化が望まれています 厚労省の感染症分科会予防接種部会などで おたふくかぜワクチンを 予防接種法の対象となる疾病ワクチンに 加えるか検討されていますが 未だ 定期の予防接種の対象疾患とはなっていません
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