今日は 糖尿病性腎症 の説明をします

腎症の説明図

<糖尿病性腎症とは?>

神経障害 網膜症と並ぶ 
糖尿病の細小血管症の三大合併症のひとつで

糖尿病発症後
10~15年を経過する頃から認められ

糖尿病の死因の約15%を占めます

@現在日本では 
 人工透析を行っている患者さんは約8万人おられますが
 そのうち糖尿病性腎症の患者さんは43.5%で  
 第1位です

人工透析の原因の1位が糖尿病性腎症であることを示すグラフ

また 
新たに人工透析を導入される原因の第1も 
糖尿病性腎症です

新たに人工透析を導入される原因の第1も糖尿病性腎症であることを示すグラフ


<他の合併症のリスクファクターになる>

*腎症患者は 
 心血管疾患の合併率が高く 死亡頻度も高い

*腎機能(GFR)低下とアルブミン尿は
 心血管疾患の独立したリスクファクターである

*網膜症 足病変の合併頻度が高い

ことが明らかにされています


<障害される部位>

糖尿病性腎症では 
腎臓の中心的な働きをする糸球体が障害されます

糸球体は
血液をろ過して老廃物を尿に排出する部分ですが

それを栄養する細小血管が 
持続した高血糖により障害されて
腎機能障害が生じてきます


糸球体の説明図



<自覚症状 他の臓器の機能低下>

腎臓の働きが悪くなると

*アンモニアなどの老廃物が溜まる

*水分が溜まり浮腫がおこる

*血液が酸性に傾く

*貧血が起きる

*カルシウム代謝に異常が起こり 骨がもろくなる

*血圧が上昇する

といった不具合が生じます

起きてくる自覚症状 病態のまとめ


<病期の進行と それに伴う尿所見 症状の変化>

病態の進行の程度により 下記の6期に分かれます

病期を示す表

@腎症前期

*尿中のアルブミン(通常は尿に漏れないタンパク質)
 は陰性

*腎機能(GFR)は正常 時に高値

@早期腎症

尿中にわずかにアルブミンが漏れ出す
 微量アルブミン尿を呈する

*GFRは正常 時に高値

@顕性腎症前期

*尿中タンパク質の量が増えて
 顕性蛋白尿の時期を迎え
 通常の検尿で検出できるようになります

*持続性タンパク尿は 1g/日未満

*GFRは ほぼ正常 60ml/分以上

@顕性腎症後期

*尿中に漏れ出す量が多すぎると
 ネフローゼ症候群となって
 体の機能の維持に支障を来す

*放置していると 次第に尿中の蛋白排出が増加し
 ついには1日何グラムもの量になります

GFRが低下し始め 60ml/分未満になる

*この時期になると
 一般には1~2年くらいのうちに腎機能低下が顕著となり
 腎不全となります

@腎不全期

*持続性タンパク尿

*腎機能のマーカーである
 血中クレアチニンが上昇してくる

*GFRが著明に低下する

*老廃物や不要物を尿中に排泄する働きの障害が現れる

*下肢の浮腫 心不全

*尿毒症(腎症で排泄できない毒素が体内に溜まってくる状態)を
 起こしてきます

@透析療法期

*人工透析や腎臓移植などの治療を受けるしか手がなくなります

腎症の経過を示す図

このように 
腎症の進行にともなって

徐々に尿にタンパク アルブミンが
漏れ出してくるようになり

腎機能が低下して 
自覚症状が出現してきます 


高橋医院