今日は 糖尿病性腎症の 
症状と対策について説明します

<症状>

かなり進行した状態になるまで
ほとんど自覚症状がないのが 
腎症の特徴です

腎症の進行にともなう自覚症状の変化についてまとめた図

ですから 厄介なのです

病期が進行してくると 
さまざまな症状が現れてきます

自覚症状をまとめた図

しかし
こうした症状が出てくる前に発見し 
治療を開始しなければなりません

そのために 
以下のような検査を定期的に行います


<検査>

@尿検査

タンパク尿をチェックしますが
 はじめのうちは 
 出たり出なかったりする場合が多いです

*タンパクが常に出続ける状態になると 
 ある程度 腎症は進行しています

検査についてまとめた図

@尿中微量アルブミン

*この検査により
 従来の試験紙法でタンパク尿陽性となる以前に
 異常を検知することが可能になりました

尿中微量アルブミンの意義をまとめた図

早期診断のマーカー
 透析 腎移植 eGFR半減 顕性腎症への
 進展リスクです

早期診断のマーカーであることを示す図

*糸球体における
 基底膜のアルブミン透過性の亢進 

 尿細管での再吸収の障害

 により生じ

 血管内皮細胞障害も反映します

*尿中アルブミン・クレアチニン比
 30 mg/g・Cr以上が陽性
 30~299 mg/g・Cr範囲が早期腎症

*この時期に
 血圧や血糖のコントロールなどを厳重に行えば
 腎症の進展が阻止できる可能性が高いことが
 わかってきたため

 この時期で発見することが
 大変重要と考えられています

この時期で発見することが大変重要と考えられることを示す図

*採尿条件で変動するので 
 複数回実施する必要があります

*高血圧 メタボリックシンドロームでも生じます

@eGFR

*腎機能を評価する簡便な方法です

eGFRの計算式

*eGFR(mL/min/1.73m2
= 194 x Scr(mg/dL)-1.094 x 年齢-0.287(女性はx 0.739)

という数式で計算され 
低い値だと腎機能の低下を示します

病期の進行にともなうeGFRの変化を示す図


<対策>

@まだ腎機能低下がみられない早期から 
 厳密な血糖コントロールを行えば
 腎症の発症・進展が抑えられます

@微量アルブミン尿の時期に発見して
 血糖コントロール 血圧の管理を徹底して 
 進行を予防するよう努めます

予防 治療についてまとめた図




@食塩摂取制限

*食塩摂取による血圧への影響=食塩感受性は
 正常アルブミン尿期に比し 
 微量アルブミン尿期以降で亢進しているので
 食塩制限は有効です


@高血圧のコントロール

*病期に関わらず
 腎症の進展抑制のために重要です

*降圧剤の
 アンギオテンシン変換酵素阻害薬 
 アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬
 その降圧作用とは独立して
 微量アルブミン尿 タンパク尿を減少させる効果があり
 他の降圧剤に比し有意な腎保護効果があり 
 腎症の進行予防に役立ちます

血糖 血圧 脂質のコントロールについてまとめた図

@脂質異常のコントロール

*脂質異常症治療薬の 
 スタチン フィブラート
 ともにアルブミン尿抑制効果を示す可能性が指摘されています

*スタチンは eGFR低下の抑制効果も期待されています
 

<糖尿病性腎臓病 という新しいコンセプト>

最近 アメリカなどでは

「糖尿病性腎臓病  Daibetic kidny disease : DKD」

という新しい概念が提唱されているので 紹介します

糖尿病性腎臓病 Daibetic kidny disease : DKDについて説明する図

海外では
尿タンパク陰性でも 
腎機能低下が進行する糖尿病患者さん
が急増していて

そのような患者さんは

*腎機能低下が高度になるまで 
 タンパク尿が出現しない

*タンパク尿が改善しても 
 腎機能低下が進行する

*腎機能が低下した糖尿病患者さんの66%が 
 正常アルブミン尿だった

といった特徴を有しています

尿タンパク陰性でも 腎機能低下が進行する糖尿病患者さんについて説明する図

そうした患者さんが増えてきた要因として

*血糖コントロールの向上 
 RA系阻害薬の普及などの治療法の進歩

*寿命延長による
 腎機能低下への動脈硬化性因子(腎硬化症)の関与の
 相対的強まり

が推定されていて

従来の糖尿病性腎症を内包する
より大きな疾患概念としての糖尿病性腎臓病

というコンセプトが提唱され

DKDのコンセプトを説明する図

より早期から
タンパク尿とともに
eGFRによる腎機能のフォローを欠かさないことが 
提唱されています

より早期からタンパク尿とともにeGFRによる腎機能のフォローを欠かさないことが重要であることを示した図

経過が長い糖尿病患者さん 特にお年を召した方では

タンパク尿だけを指標にするだけでなく
腎機能(eGFR)も
早期からcheckしていく必要があるようです


 

高橋医院