「尿が変な色をしているので
 心配です」

「このところ
 おしっこに泡がたつのが
 気になるんです」

そんな訴えで
当院に来られる方は少なくありません

尿検査の様子

そこで 尿について説明しようと思います

<尿はどのようにして出来るか?>

@尿の意義

普段 何気なく意識せずに
出している尿ですが

尿にはとても大切な役割があります

それは 
体内から害になる老廃物を排出すること
です

尿は体内から害になる老廃物を排出していることを示した図


@糸球体

尿を作る腎臓には
1分間に1リットル 
1日に1.5トンもの大量な血流が
運ばれています

運ばれた血液は 
腎臓の中にある糸球体という部分で
ろ過され
尿のモト(原尿)が作られます


糸球体でのろ過を示した図

糸球体は 
腎臓の働きの中心的な役割を示すところで
さまざまな原因でここが痛んでくると
腎臓の病気が起こってきます

@尿細管

腎臓では
血液を糸球体でいったんろ過して
尿のモトを作ると

尿細管という別の部位で
尿のモトから必要なものを
再吸収します

尿細管で 
捨てるべきもの 
再利用すべきもの
の鑑別を行っているのです

尿細管での再吸収を解説した図

水分 塩分などの電解質は
99%が再吸収されますし

ブドウ糖 アミノ酸などの栄養素の多くも
再吸収されます

一方で
後述するアンモニアなどの老廃物は
そのまま尿に排泄されます

こうして最終的に
尿が作られ排出されますが

尿細管での再吸収を解説した図2

1日の尿量は1.5リットルで

*腎臓に運ばれた血液量の
 1000分の1

*糸球体で濾過された原尿の
 100分の1

にしか過ぎません

腎臓が 
いかに大変で重要な仕事をしているか
イメージできましたか?

腎臓での ろ過 再吸収についてまとめた図


<尿を作る意義 尿の働き>

@体内の水分量の調節

ヒトの体が尿を作る大きな意義のひとつが
体内の水分量を一定に保つことです

体内の水分が足りなければ
尿は濃縮されて出る量が減りますし

逆に水分が多ければ
尿はたくさん作られて
薄い尿が沢山出るわけです

再吸収による水分調節について説明した図

このように 
主に腎臓と脳が協力して
尿の量を調節して
体内の水分バランスを整えているわけです


@老廃物の排泄

もうひとつの尿の重要な意義が
老廃物の排泄です

尿には

*電解質
(ナトリウム カリウム カルシウム リンなど)

*代謝老廃物

などが含まれていますが

前述のように
電解質の多くは再吸収され
老廃物は捨てられます

老廃物に含まれるものは

*タンパク質が分解されて生じる
 窒素酸化物

*尿素 尿酸 クレアチニン(筋肉の崩壊物)
 ホルモンの分解物

*薬の代謝産物

などです

老廃物について説明した図

@アンモニアと尿素

なかでも重要なのが 尿素です

なぜ 尿素が重要かというと

ヒトの体内では 
さまざまな場面で
有害なアンモニアが作られます

たとえば
食餌に含まれるタンパク質に含まれる尿素が
腸内細菌によって分解され
多量のアンモニアが産生されますし

脳などで生成され
血中を輸送されたグルタミンは
腎臓 腸管 肝臓などでグルタミナーゼにより
グルタミン酸とアンモニアに分解されます

こうして出来たアンモニアには
神経毒性があり

神経細胞のエネルギー産生を低下させたり
神経伝達物質を低下させたり
ひどい場合は 
脳浮腫を来たしてしまいます

そこでアンモニア
肝臓で尿素回路により尿素に変換され
尿素は水によく溶けるので
腎臓で尿中に排泄されるのです



体内で尿素が作られる過程と腎臓からの排泄について説明した図

ちなみに 
尿を放置しておくと
尿中の尿素が微生物により分解されて
アンモニアになって臭います

このように 腎臓は
体でいちばん働く代表的な
老廃物の排泄器官であり

尿は 老廃物の排泄という
重要な使命を担っているわけです


 

高橋医院