前回 CKDにおける蛋白尿の重要性に
ついて説明しましたが
蛋白尿についてもう少し説明します

<蛋白尿の重要性>

@自覚症状が乏しい早期のCKDでは 
 検尿だけが発見の手段となり
 蛋白尿の程度により 
 重症度が評価されます

@随時尿での蛋白尿の評価

尿中クレアチニン濃度で補正した量
(尿蛋白/クレアチニン比(g/gCr))
で行い

*正常(0.15 g/gCr未満) 表の横軸のA1

軽度蛋白尿(0.15~0.49 g/gCr) 表のA2

*高度蛋白尿(0.50 g/gCr以上) 表のA3

と 重症度が評価されます

(糖尿病では 蛋白尿の代わりにアルブミン尿で評価します)

ckdの重症度分類表

<なぜ尿に蛋白がでてくるか?>

尿に蛋白が出る機序には 
以下のようなものがあります

@糸球体の透過性亢進

慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症などの
糸球体性病変による

主にアルブミンが漏れる

@尿細管での尿蛋白再吸収の低下

間質性腎炎などの尿細管障害による

主にβ2ミクログロブリン 
α1ミクログロブリンが漏れる

@骨髄腫などの血中異常蛋白増加

糸球体での濾過量増大
尿細管での再吸収能を超える量の
低分子蛋白の尿中へ漏出
主にB-J蛋白などが漏れる

@膀胱炎 腫瘍などの下部尿路疾患

血液の尿への混入による

蛋白尿の意味について説明した図


<蛋白尿の病的意義>

これまでの検討により 
以下のことが明らかにされています

@蛋白尿を有する患者さんでは
 尿蛋白が陰性の患者さんに比し予後は悪い

@蛋白尿の量が多いほど 
 末期腎不全になりやすい

@蛋白尿 血尿ともに陽性例(1+以上)は
 10 年間で約3%が透析導入されている

蛋白尿の有無 持続時間が末期腎不全進行に関与することを示すグラフ

こうしたことから
尿蛋白 糖尿病での尿中アルブミンは 
CKDの予後の指標と考えられています


<生理的蛋白尿>

激しい運動をした後 
発熱の後 
ストレスのかかったとき
起立したとき

などでは
蛋白尿が一過性に陽性となることがあります

また 健康な人でも 尿中にわずかに蛋白が出ています

生理的蛋白尿について説明した図

したがって

*1日150 mg以上の蛋白尿が

*持続的に排泄されている場合

に 初めて病的な蛋白尿と評価します

ですから 
健診などで蛋白尿の存在を指摘された場合は

*何回か続けて認められるか?

*早朝の安静時の尿でも認められるか?

といった評価を行い 病的意義の有無を判定します


<尿蛋白の検査法>

試験紙法を用いて行いますが 
外来で簡単に行える検査です

尿蛋白1+では30 mg/dL
尿蛋白2+では100 mg/dL
の量が推定され

尿試験紙法で1+以上は 
尿異常として蛋白定量を行います

CKDを疑った場合は 
試験紙法による蛋白尿定性を繰り返し検査します

試験紙の結果の写真

<血尿との関連>

血尿も 蛋白尿と並んで重要な所見です

顕微鏡的で観察される軽度の血尿は
蛋白尿とは独立した末期腎不全の危険因子であり

同程度の蛋白尿では 
血尿を伴うほうが末期腎不全のリスクが増加します

血尿と蛋白尿の関係を説明した図

ですから
蛋白尿 血尿が両方陽性の場合は
片方だけ陽性よりも要注意なので
必ず受診してください

また40 歳以上の無症候性血尿では
尿路系(腎臓や膀胱など)の悪性腫瘍の可能性が高いため 
注意が必要です






高橋医院