今日は CKD
の診断と重症度分類を説明します

<CKDの診断>

CKDの診断基準は 
以下のようになっています

@腎機能のGFRが
 60 ml/分/1.73m未満と
 低下している

@蛋白尿が認められる
*0.15 g/gCr以上の 
 蛋白尿

*30 mg/gCr以上の 
 アルブミン尿

このどちらか 
または両方が 
3か月以上続くこと

ckdの診断についてまとめた図

経過としては 
まず蛋白尿が出て 
次第にGFRが落ちてきます

ですから 
蛋白尿の段階で早期発見して 
手を打つことが大切になります

<GFR・腎機能>

一般的に腎機能の評価は

*血中クレアチニン値 尿素窒素値

*糸球体濾過量(GFR)

で行われます

@クレアチニン

*筋肉中のタンパク質が
 分解されてできた老廃物

*ほとんどが糸球体で濾過されて 
 尿に排泄されます

腎臓の働きが低下すると 血液中のクレアチニンが増加する機序を説明した図

*腎臓の働きが低下すると 
 血液中のクレアチニンが増加するので
 肝機能におけるAST ALTのように 
 腎機能低下の血液マーカーになります

*筋肉量が多いほど高くなるので
 年齢 性別 体格差などで値が異なり 
 個人差が大きくなります

@血中尿素窒素 BUNタンパク質の燃えカスで
 尿に排泄されるので 
 腎機能が低下してくると
 血中の値が高くなってきます

BUNについて説明した図

*消化管出血 脱水などの 
 腎臓以外の原因でも増加するので
 腎機能評価としての意義は 
 クレアチニンより劣ります

@GFR

*腎臓の機能を示す指標です

*血液をろ過して尿を作る糸球体が
 1分間にどれくらいの血液を濾過し尿をつくれるか
 を表します

*値が大きいほど 腎臓の働きは良好ということです

@eGFR

*GFRを厳密に求めるのは煩雑ですが
 血清クレアチニン値 年齢 性別から
 下記の計算式でeGFRを求めることができます

*eGFR = 194 x 血清クレアチニン値1.094 x 年齢0.287
 (ml/分/1.73m)(女性は x 0.793)

*標準体表面積(体格を反映)1.73mで補正し
 筋肉量の多寡を反映させています

eGFRの計算式

*腎機能の指標として 広く用いられています

*健常人は100 ml/分/1.73mですが
 CKDのステージが進むにつれ 
 徐々に低下していきます

*60未満だと 精密検査が必要になります

*短期間でなく 
 年単位での変化を評価することが重要です

<GFRの値と病期のステージ>

@ステージ1
 
*90以上と正常

@ステージ2
 
*60~89と軽度低下

*この時点では 
 自覚症状はありませんが 
 タンパク尿 血尿が出てきます

@ステージ330~59とさらに低下し

*夜間頻尿 血圧上昇 貧血
 といった症状がみられます

@ステージ3b

*GFR が45未満の状態

*全死亡 心血管死亡
 末期腎不全への進行 
 急性腎障害の罹患率
 が急激に増加し
 尿毒症に伴う合併症も発症し始めます

@ステージ415~29と高度低下
*倦怠感 むくみが出てきて 
 透析 腎移植の準備が必要となります

@ステージ515未満の末期腎不全の状態で

*食欲低下 吐き気 息苦しさ 尿量減少
 などの症状があり
 透析 腎移植の適応となります

GFRと病期のステージの関係を示す図



<尿蛋白>

@自覚症状が乏しい早期のCKDでは 
 検尿だけが 発見の手段となります

@随時尿での蛋白尿の程度の評価
尿中クレアチニン濃度で補正した量
(尿蛋白/クレアチニン比(g/gCr))で行い

*正常(0.15 g/gCr未満)

*軽度蛋白尿(0.15~0.49 g/gCr)

*高度蛋白尿(0.50 g/gCr以上)

と 蛋白尿の程度が評価されます

尿蛋白とCKDの重症度との関連を示す表



<CKDの重症度>

@重症度分類の指標

*GFR
 
 上述したステージで
 5段階に評価されます
*尿蛋白ACR(アルブミン/クレアチニン比)
 
 多寡により 正常 微量・軽度 顕性・高度 
 の3段階で評価されます 

の両方の程度を組合わせて分類されます

@CKDにともなう 
 死亡 末期腎不全 心血管死亡発症のリスク
 の評価
軽い方から重い方に
緑 黄色 オレンジ 赤
の4段階で評価します

ckdの重症度分類を示す表

@CKDとなった原因により 
 尿蛋白の評価の指標が異なる

*糖尿病では 
 尿アルブミン定量 または 尿アルブミン/Cr比

*糖尿病以外では 
 尿蛋白定量 または 尿蛋白/Cr比

が用いられます

糖尿病性腎症の解説で説明したように
糖尿病では 
尿中蛋白よりもアルブミンの方が
重要視されているからです
 
@GFRと蛋白(アルブミン)尿の程度の組合せ

この組合せで 重症度が評価されます

*GFRがステージ2より良ければ
 尿蛋白が 
 正常なら緑 
 微量・軽度だと黄色 
 顕性・高度だとオレンジ

*GFRがステージ3bより悪いと
 尿蛋白の程度に関わらず 
 オレンジ 赤になります

このように 
GFRが正常や軽度低下の状態であっても
尿蛋白の程度により 
重症度の評価は異なるわけで

このことからも 
尿蛋白の重要性が示唆されます

 
高橋医院