今月初めに
おしっこの話をしましたが
それに引き続いて今日から 
尿を作る腎臓の病気の解説をします

読み手の皆さんは

慢性腎臓病 

という病気をご存知ですか?

Chronic kidney disease 

略して CKD と呼ばれています

ckdの宣伝ポスター

そもそも 
腎臓の病気そのものが 
あまりポピュラーではないので
一般の方には馴染みがないかもしれませんが
最近 特に 
生活習慣病との関連から注目されています


<慢性腎臓病・CKDとは?>

腎臓の働きが徐々に低下してきてしまう 
さまざまな病気の総称で
単純にひとつの病気の名前を
表すものではありません

ckdについて説明した図

@2002年にアメリカ腎臓財団が提唱した 
 新たな概念

慢性的な腎臓病は 
自覚症状が少なく 
気付かれるのが遅いので
透析が必要なほど悪化して発見される人が 
あまりに多い

そこで 
より早く発見して対処することの重要性を
喚起したい

という目論見のもとに 
この病態概念が提出されました


<日本人成人の  8人に1人(13%)がCKD>

日本での患者さんの数は
1330万人ほどと推定されています

日本人の8人に1人がCKDであることを注意喚起する図

実に8人に1人!

意外に多くの患者さんが おられるのですよ!


<生活習慣病の腎臓バージョン >

糖尿病 高血圧などの
生活習慣病が背景因子となって発症することが多く
生活習慣病の腎臓バージョン 
と見做されています

生活習慣病の腎臓バージョンであることを示す図

だからこそ 
生活習慣病が急増している現代社会において
CKDが注目され始めているのです

<症状・病態>

自覚症状がない 
 
それなのに
徐々に腎臓の働きが低下してしまいます

腎臓は 
その働きが半分くらいになっても無症状で
30%くらいまで低下しないと 
自覚症状は出てきません

つまり 症状がないのが最大の特徴で
気づかないまま放置され 
病気が進んでしまう例が多いのです

症状がないのが最大の特徴であることを示す図

自覚症状がないので 
健診などで尿や腎機能の異常を指摘されていても
継続受診しない患者さんが多く

自覚症状が出て再度受診したときには
既に腎不全で手遅れなことも
少なくありません

だからこそ CKDの怖さについて 
認識していただきたいのです

@病態

腎臓の中心的な働きを行っている
糸球体 という
血液をろ過して尿を作る部分が
ゆっくりと壊れていくのが 
その病態です

糸球体の働きを示す図

糸球体の毛細血管が傷つくこと
などが原因で起こり
その毛細血管のダメージには
高血圧 糖尿病 脂質異常症 肥満 
などが関与しています

糸球体が障害されると
タンパク尿が出る 
→ 徐々に腎機能が低下する 
→ 腎不全になり透析に至る
という経過をとってしまいます


<臨床経過>

腎障害が進行すると 
尿毒症の症状が出てきます

@尿毒症

腎機能障害のために
老廃物や余分な水分が排泄されずに
体内に溜まってくる状況で
吐き気 かゆみ だるさ むくみ 
などの症状を認めます

ckdの進行度を示す図

@高血圧と悪循環を形成して進行する

腎障害の進行にともない
腎臓で産生されるレニンという
血圧を上げるホルモンの分泌が高まるため
高血圧になります

すると動脈硬化が進み 
腎血流量が減るので
ますます糸球体の毛細血管が壊れていく 

という悪循環が形成されます

@透析 移植へ

最終的には末期腎不全になり 
透析導入 腎移植が必要となります
透析患者さんの数は27万人で 
年間1万人ずつ増えているのが現状です

ckdの進行度を示す図


<心血管疾患のリスクファクターである>

@CKDは心血管疾患発症の危険因子である

CKDの患者さんでは
心筋梗塞などの心血管疾患の発症リスクが
3倍も高まります
腎機能が低下すればするほど 
リスクは高くなるのです

ckdは心血管疾患発症の危険因子であることを示すグラフ

CKDの特徴である 
蛋白尿・アルブミン尿は
心血管疾患発症の独立した危険因子で
蛋白尿の増加に従って 
リスクは高くなります

特に 
糖尿病や高血圧を原因とする
CKD患者さんでは
腎炎を原疾患とするCKD患者さんよりも
 
心血管疾患発症リスクが高いことが
明らかにされています

@CKDと心血管疾患の
 危険因子の多くは共通している

CKDは動脈硬化の進行により生じますし 
それ自体が動脈硬化を促進します

CKD患者さんでは
高血圧 脂質異常症 睡眠時無呼吸症候群などの
心血管疾患のリスクを高頻度に有しています

心血管疾患患者さんは
CKDを合併する頻度が高く
逆にCKDは
心血管疾患の独立した予後規定因子になっています

ckdと心血管疾患が深い関係にあることを示す図

こうしたことから
心血管疾患患者さんでは 
CKDの有無を確認する必要があります



高橋医院