農業革命と産業革命により 
ヒトの生活環境 食環境は
食物に渇望する環境から飽食の環境へと 
大きく変化しましたが

それ以前の700万年の歴史で
飢餓に備えるために
栄養を蓄える体質を有していた人類は
新たな飽食な環境に対応できず 
ミスマッチ病が蔓延し始めます

では 
具体的に食はどのように変化し
それが身体に
どのような影響を及ぼしたのでしょうか?

最初の類人猿は 
果実で腹を満たしていました

果実を食べる類人猿の姿

しかし 気候変動 乾燥化により 
アフリカでは森林が減ってきて
豊富な果物がなくなり 
食事環境が変化しました

森林を出て 
草原で生活するようになり
果物以外の木や植物の葉や茎も 
食べないといけなくなったのです

そして400万年前に
木の茎などの固い繊維質の食物でも
食べられるヒトの祖先が
自然選択で生き残るようになりました

草を食べる猿の姿

やがて人々が狩猟を行うようになると
植物が食事の大半になり 
狩猟により肉もたまに食べるようになりました

ここで 腸と脳のトレードオフ 
という現象が起こります

トレードオフと書かれたカード
腸と脳でトレードオフが行われているさま 

腸が小さくなり 
その代わりに 
脳が大きくなっていったのです

狩猟時代になり肉を食べるようになると
それまで繊維の多い食物の消化のため
大きな負担を強いられていた
腸の役割が減少し
エネルギーが
腸でなく脳で使用されるようになります

こうして

腸の代わりに 
脳が大きくなり始めたのです

大きくなった脳の姿

興味深いことに
そうした変化にともない
ヒトの身体は 
多量の脂肪を貯めこめる身体になっていくのです

そうなった原因は こういうことです

脂肪は
グラム当たりのエネルギーが
他の栄養素より高いので
脂肪の蓄積は 
エネルギーを溜めるのに最も効率的な方法ですが

脂肪の蓄積はエネルギーを溜めるのに最も効率的な方法であることを示す図

発達し始めた脳が 
常に多量のエネルギーを要求するので
身体は脂肪を豊富に蓄える必要性が出てきたのです

しかし
狩猟で動物を仕留めることは
そう頻繁ではないので
肉や脂肪が得られる機会は
そんなに多くありません

動物を追う狩猟民の姿

ですから

脂肪を得られるときは
それを体内に出来るだけたくさん
蓄えることができるように
ヒトの身体は 進化 適応し始めたのです

倹約遺伝子が選択されました

また 
脂肪の蓄積で体内のエネルギーが豊富な状況になると
脳が発達するだけでなく 
繁殖にも有利になります

繁殖は 
進化の方向性を規定する一番重要なことですから
そこに有利に働く 
脂肪を溜めこむような変化は
まさに自然選択される進化にほかなりません

他の動物より優位に立てる脳の発達を促し
最も重要な繁殖の面でも役に立つ

そんな 
脂肪をできるだけ多く貯蔵できる身体になるように
倹約遺伝子が石器時代に選択されたわけです

倹約遺伝子が石器時代に選択された状況を説明する図

しかし そのことが 
現代では仇になってくるのです



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