今日から
微量栄養素である
ビタミン・ミネラルについて解説します

微量栄養素の主たる働きは
生体内で
さまざまな化学反応を行っている酵素を
助けることです

ですから まず
 微量栄養素が働きかける酵素 
について解説します


<酵素とは何か?>

@触媒作用を有するタンパク質です

酵素について説明した図

触媒とは 
それ自体は変化せずに 
化学反応の進行を速める物質
のことで

酵素は触媒なので
それ自体は
反応の過程で消費されることはなく
反応の前後で変化することもありません

酵素の作用について説明した図

@数多くの酵素が発見されています

1833年
フランスでの
アミラーゼ(ジアスターゼ)の発見が最初で
すぐあとの1836年には
ドイツでペプシンが発見されました

現在では
2万種類以上の酵素があるとも言われており
タンパク質分解酵素だけで
9000種類以上あります

そして
細胞を作るために
1万3000種類の酵素が働いています

たとえば
肝機能の血液検査でお馴染みの
AST ALTは 
タンパク質を分解してアミノ酸を作る酵素ですし
γGTPは 解毒に関係している酵素です

AST ALTの酵素作用について説明した図


<酵素の機能>

食物を消化する段階から
 栄養素吸収・分布・代謝・排泄に至る
 あらゆる過程に関与しており
 生体が物質を変化させて利用する反応に
欠かせません

エネルギー産生 細胞の新陳代謝
 組織や遺伝子の修復 毒素・老廃物の排泄など
 さまざまな生体反応に関与しています

酵素の役割についてまとめた図

このように

酵素の働きがなければ
生きていくための生命現象が維持できない

と言っても 過言ではありません


<酵素の性質>

@特異性と選択制

*作用する物質(基質)が1種類だけ(基質特異性

*進行させる反応も1種類だけ(反応選択性

という性質を有しているのが最大の特徴です

基質特異性 反応選択性についてまとめた図

基質特異性は
酵素と基質の立体構造の親和性に依ります

酵素(下図のA)の基質結合部位と
構造的に親和性がある基質(下図だとB)は
酵素に結合できますが

親和性のない基質(下図のC)は
結合できません

基質特異性を説明した図

この特異的な性質により
生命維持に必要なさまざまな化学変化を
起こさせることが可能となり

代謝に関与する化学反応の数だけ
酵素が必要となります

@スピード

反応のスピードが非常に速いのも
酵素の大きな特徴です

酵素反応のスピードを示すグラフ

グラフが示すように
反応速度が急速に立ち上がっていきます

@適応分泌

酵素の多くは
前駆物質のような不活性型として作られ
必要時に体内で活性化されます

*必要なときに 必要な分だけ 
 分泌される

*身体が食物にふさわしい種類の酵素を選択して
 適量を分泌させる

こうした機序により
体内で適切な酵素反応が行われます

ちなみに酵素は
睡眠中に作られることが多いようです

睡眠 大事ですね!


<寿命と産生総量>

@寿命がある

酵素には寿命があり
短いもので数時間 長くても数十日です

@生涯で産生される総量に限りがある

一生の間に産生される
酵素の総量は決まっていて

この総量が潜在酵素」と呼ばれます

150歳分くらいはあると言われていますが
加齢とともに産生量は減っていき
40歳を超えると急激に減少しますし

また加齢により質も変化し力が衰えます

加齢により体内酵素量が減少することを示すグラフ

体内で作られる潜在酵素は

消化酵素
 :食物の消化・吸収に関わる 

代謝酵素
 :エネルギー産生 解毒などの生命活動に関わる 

に大別されます

潜在酵素についてまとめた図

@無駄遣いされている

現代生活は 酵素を無駄遣いさせています

*ファストフード 加熱調理食物 スナックなどの
 悪しき食習慣

*喫煙 大量飲酒

*ストレス

などは 
必要以上に消化酵素を消費させてしまい
体内の消化酵素と代謝酵素のバランスが
乱れてしまいます

体内の消化酵素と代謝酵素のバランスが乱れていることを示す図

この点については あとで詳しく解説します

<医療での活用>

酵素は実際の医療の現場にも貢献しています

@血液検査

上述した肝機能検査で用いられるAST ALTのように
酵素が存在する臓器から
血液中に逸脱した酵素の量を計測して
病気の活動性を評価できます

逸脱酵素の量による病気の活動性の評価を説明した図

@治療

酵素作用を調節する治療薬は
日々の診療で用いられています

酵素による調節の失調が病気の原因である場合や
コレステロールや尿酸が体内で作られ過ぎる場合は
酵素活性を抑制する治療薬が有効です

高血圧に関与する
 アンジオテンシン変換酵素を阻害して
 血圧を下げる
 アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)

アンジオテンシン変換酵素阻害薬の働きを示す図

インスリンを分泌させ糖尿病を改善するインクレチン
 分解してしまう酵素のDPP-4の作用を阻害して
 インクレチンを働かせるDPP-4 阻害薬

DPP-4 阻害薬の働きを示す図

*肝臓でコレステロールを合成する酵素の
 HMG-CoAを阻害して
 コレステロール合成を抑える
 スタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)

HMG-CoA還元酵素阻害薬の働きを示す図

*尿酸を合成する
 酵素キサンチンオキシダーゼを阻害して
 尿酸合成を抑えて尿酸値を下げる
 キサンチンオキシダーゼ阻害薬

キサンチンオキシダーゼ阻害薬の働きを示す図

などが 良い例です

こうしてみると
生活習慣病の治療薬には
酵素阻害薬が多いことがわかります

 

高橋医院