酵素の分類
たくさんの種類がある酵素は いくつかの視点から 分類されています <働きによる分類> 消化酵素 代謝酵素 の 大きくふたつに分けられます @消化酵素 摂取された栄養素を消化・分解し 吸収されやすい形にする酵素で *トリプシンは 1時間で300gのタンパク質を消化 *リパーゼは 1時間で175gの脂質を消化 *アミラーゼは 1日で300gの炭水化物を消化 する力を有しています @代謝酵素 エネルギー産生 呼吸 筋肉の収縮 体温調節 細胞や遺伝子の修復 毒素の解毒 免疫反応 などといった 消化以外の生命維持のために行われる 全ての一連の化学反応を司ります 消化酵素と代謝酵素を合わせたものを 「潜在酵素」と呼び 酵素の総合力としてとらえられます @消化酵素と代謝酵素のバランスが重要です 前回も説明しましたが 体内の潜在酵素の総量は決まっているため 消化酵素 代謝酵素のどちらかが多くなると もう一方は少なくなります そして 消化酵素の占める割合が小さい方が 健康には良いとされます 健康を維持しているのは代謝酵素なので 代謝酵素が欠乏すると 多くの病気が生じるのです しかし 現代の食生活は 多量の消化酵素を必要とします ファストフード 無酵素の熱加工食品 さまざまな食品添加物 白砂糖 トランス脂肪酸 などの摂取により 潜在酵素の多くが 消化酵素として使われるので 代謝酵素が不足してしまい その結果 老化が進み 寿命が短くなります ラブナーの法則という 生物の寿命は潜在酵素の消耗度に反比例する ことを証明したものがあり 過度な酵素消費が強いられる環境は良くない と考えられています 毎度のことですが 現代の便利な食生活は 見直す必要がありそうです <所在による分類> 酵素の存在部位により *生体膜(細胞膜や細胞小器官の膜)に結合している 膜酵素 *細胞質に存在する 可溶型酵素 *細胞外に存在する 分泌型酵素 に分類されます @膜型 エネルギー保存や物質輸送に関与するものが多く 生体膜の機能を担う重要な酵素が多い ATPアーゼ ATP合成酵素 呼吸鎖複合体 バクテリオロドプシン レセプタータンパク チャネル トランスポーター関連酵素 などが 代表的な膜酵素です @可溶型 細胞質に存在している酵素は 可溶型で水によく溶け その多くは 細胞質での代謝に関わっています 糖質 脂質などの栄養素を代謝する酵素が代表例です @分泌型 可溶型のなかで 細胞内で産生された後に 細胞外に分泌されるものです 胃や腸で食物を消化する消化酵素が代表例です <関与する酵素反応による分類> 酵素が関与する反応の種類により 下記の6種類に分類されます @酸化還元酵素 オキシドレクターゼ 酸化還元反応を触媒します *脱水素酵素・デヒドロゲナーゼ *還元酵素・レダクターゼ *酸化酵素・オキシダーゼ *酸素添加酵素・オキシゲナーゼ があります @転移酵素 トランスフェラーゼ ある化合物に結合している官能基(水酸基など)を 他の化合物に移す反応を触媒します *アシル基転移酵素・トランスアシラーゼ *アミノ基転移酵素・トランスアミナーゼ *リン酸転移酵素・ホスホトランスフェラーゼ があります @加水分解酵素 ハイドロラーゼ 加水分解反応を触媒します *エステラーゼ *グルコシダーゼ *ペプチダーゼ(ペプシン トリプシンなど) があります @脱離酵素 リアーゼ 化合物中に存在する基を脱離し二重結合を生じる反応 二重結合にある基を 付加する反応 を触媒します *脱炭酸酵素・デカルボキシダーゼ *脱アミノ酵素・アミノリアーゼ *脱水酵素・ハイドラーゼ があります @異性化酵素 イソメラーゼ ある分子が 原子の組成を全く変えずに 原子の配列のみを変化させて 別の分子に変換する異性化反応を触媒します *ラマターゼ *エピメラーゼ *ムターゼ があります @合成酵素 リガーゼ ATPのエネルギーを利用して ふたつの分子をつなぐ合成反応を触媒します *シンターゼ *カルボキシラーゼ があります 色々な聞いたことがない反応がたくさんあって ??かもしれませんが 体の働きは こうした多くの種類の反応により形成されていて 酵素がそれらの働きを助けて 生命活動が円滑に行われているのです こうしている間にも 酵素は体の色々な場所で働いているのです!
高橋医院