酵素は
生体内でどのような働きをしているのでしょう

<酵素の働き>

@生体内での酵素の役割

消化酵素により
 食物から摂取した栄養素を代謝する

代謝酵素により
 生命活動に必要なさまざまな化学反応を触媒する 

ことです

酵素の体内での役割についてまとめた図

生命現象は多くの代謝経路を含み
それぞれの代謝経路は
多段階の化学反応からなっています

細胞は1個当たり100万回の異なる化学反応を
同時に連続して行っています

@細胞内での酵素反応

生命活動に関わるさまざまな化学反応を担当するために
細胞内ではとても多くの種類の酵素が働いています

*酵素の働きがなければ
 膨大な数の連続した化学反応が円滑に遂行できません

*それぞれの酵素は
 自分の形に合った特定の原料化合物(基質)を
 外から取り込み

 担当する化学反応を触媒し 生成物を外へと放出し
 
 そして再び
 次の反応のために別の基質を取り込みます

*こうしたさまざまな反応により
 生命活動が維持されていきます
 

細胞内で起こっている酵素反応についてまとめた図

上の図に示されるような
複雑で入り組んだ多くの化学反応が
細胞の中では同時進行で行われていて
酵素がそれを助けています

@酵素反応のスピードは とても速い

*ひとつの酵素が1分間に合成・分解する分子は
 平均3600万個とされ
 1分間に4億回の反応を行う酵素もあります

*代謝活動が盛んな肝細胞には
 数百種類の酵素が存在していて
 それぞれが1秒間に100万回の反応を行っています

ひとつの細胞のなかで
とてつもない数や種類の酵素が
ものすごいスピードで化学反応を行っていることを
イメージできるでしょうか?


<基質特異性 反応特異性>

これだけ多種多様な生体内の化学反応を
間違えのないように
秩序立てて円滑に進めるため
酵素は高度な基質選択性と反応選択性を有しています

つまり 酵素は 厳密に

*細胞内で 必要なときに
 必要な原料だけを選択し(基質選択性)

*特定の反応のみを触媒して
 目的の生成物だけを産生する(反応選択性)

のです

基質特異性について説明した図

@基質特異性

*酵素は 作用する物質を選択する能力を持ち
 その特性を基質特異性と呼びます

*基質特異性は
 鍵と鍵穴のような立体構造に基づいていて
 ぴったり合った物質だけが基質になるのです

*基質が酵素に結合すると
 酵素は立体構造の変化を起こし
 安定した構造をとるようになります

*この構造変化により
 酵素が触媒反応に適した形になり
 化学反応がスムーズに促進されるようになるのです

@反応特異性

*酵素は1つの化学反応しか触媒しません
 これを反応特異性と呼びます

*消化酵素などいくつかの例外を除けば
 1つの酵素は
 生体内の複雑な代謝経路の1か所だけを担当しています

*これは 生体を恒常的に維持するための重要な性質です


<酵素が働くのに適した条件>

酵素が役割を充分に発揮するのに適した
pHや温度があります

これらの至適条件は
酵素が機能できる立体構造をとることができる状況なのです

@至適pH

*普通は 中性のpH7付近で最もよく働きます

*胃のタンパク分解酵素のペプシンは pH1.5と例外です

至適pHについて説明した図

*至適pH以外の状況だと
 酵素の立体構造が変化するので機能できなくなります

@至適温度

*普通は 35~40℃です

至適温度について説明した図

*温度を上げると酵素反応は速くなりますが
 60℃を超えると構造変化が起こり
 変性して失活してしまいます


<大切なのは立体構造>

酵素は 大切な機能を有するタンパク質です

タンパク質がその機能を発揮するためには
適切な立体構造をとることが必要です

今日説明した 基質特異性も 至適pH 温度も
酵素が充分に機能を発揮できる立体構造がとれることと
関係しています

ここが タンパク質の興味深い点です

 

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