香水香道の話題が続いたところで
香りについて
少し異なった視点から書かれた記事を
読みました

和食のだしと香りの関連

ミシュランの星を持たれる
京都の老舗料理屋さんの三代目の
高橋拓児さんが語られています

高橋拓児さんの写真

高橋さんは

和食の真髄は椀であり
椀を開けることは
そこに華やかな舞台を
つくり出す演出でもある

蓋を開けた途端に
白い湯気が立ち上がり
だしの香りがほのかに広がる

開けてから食べ終えるまでの
儚い芸術作品のようなものだ

と言われ

鱧のお椀の写真

その椀の決め手となるのが 
香り高いだし

と指摘されます

出汁を引いている様子

ああ~ なんだか想像しただけで
口内に唾液が出てきそうです(笑)

ちなみに
香りと最も密接に関係しているのは湿度
香り成分が空中の水分と結びついて
空気中にとどまるからだそうで

冬は乾燥していて湿度が低いので
椀の口は狭く比較的背の高いものが選ばれる
これによって少しずつ香りが立つように
工夫されているとか

湿度と香りの関係を示した図

うーん いきなり 奥が深いですね!


高橋さんが感じるだしの香りのイメージは
自然そのもの

森羅万象の複雑な香り
かすかで落ち着いた 
大地に近い香りが 
だしの味わいを引き立たせる

森林の写真

幽玄かつ大地に還るイメージがあることから
輪廻の思想を連想させる

こうした香りも
我々の死生観を生み出す土台に
なっているのかもしれません

海辺の写真

プロはそこまで
イメージを極められるのですね!


そして 高橋さんはちょっと苦言を呈されます

最近は
味つけの濃いものをおいしいと思う人も
増えていて
そうなると素材本来の香りを
楽しめなくなってしまう

料理人も客が喜ぶものを
作った方がいいので
その人に合わせて料理をお出ししますが
それでは本当においしいものを味わう機会を
失ってしまう

本物をもっと
お客さんにも知ってほしい

うーん 
なにかと醤油や塩をかけたがる人には
耳が痛いお話です(苦笑)


ここで
秀逸なインタビューアーの佐々涼子さんが
話を少し転がします

香りというのは
とらえどころがなく
うまく説明できないものも多い

味覚は
甘い 苦い 酸っぱい 塩辛い 旨い 
の五味

視覚は
赤 黄 青
の3種類のグラデーション

といった基準により
人は比較的明確に認知していますが

嗅覚はもっと複雑で

例えば 
五感に関する受容体の遺伝子の数は
視覚では10個ほど
聴覚ではもっと少ないのに対し
嗅覚は1000個ちかくもあると言われています

五感に関する受容体の遺伝子の数を比較したグラフ

また 
嗅覚を感じる受容体は400種類もあり
一般の人でも
約1000種類もの匂いを嗅ぎ分けることができ

プロの料理人にいたっては
約一万種類の匂いを嗅ぎ分けられる可能性が
あるそうです

だから逆に
香りは 
人によって感じたり 感じなかったりと
かなり個人差があるそうで

香りの評価 
特に美味しさとの関連については
個人が経験により培ってきた感性が
重要な役割を果たすとか

高橋さんは
料理人として香りのエキスパートになるなら
本気でやって15~20年
それでもまだまだでしょうと言われます

うひゃ~ 修行の道は厳しいですね!

修業している板前さんの姿

話が長くなりそうなので 
次回に続けます

 

高橋医院