酵素の共同因子
多くの酵素は 円滑に機能を発揮するために その働きを助けてくれる共同因子を必要とします <共同因子とは?> 酵素分子の中には しばしばタンパク質以外の低分子物質が含まれています それらは共同因子と呼ばれ 酵素の働きを助けてくれます *配合団 *補酵素 有機化合物 *補助因子 ミネラル・金属イオン の3つのグループがあります @単純酵素と複合酵素 共同因子の有無により 酵素は「単純酵素」と「複合酵素」に分けられます *単純酵素: タンパク質だけでできている酵素 ペプシン アミラーゼ リパーゼなどの消化酵素が代表例です *複合酵素: タンパク質以外の共同因子との複合体 酵素の大部分を占めます 複合酵素のタンパク質部分はアポ酵素と呼ばれ 非タンパク質の共同因子が結合するとホロ酵素と呼ばれます 複合酵素は 共同因子がないと活性化しません また 共同因子としてミネラルを必要とする酵素は 金属酵素と呼ばれます では 各グループについて詳しく説明します <配合団> 酵素のタンパク質にしっかり結合した分子です *カタラーゼにおける ヘム *コハク酸デヒドロゲナーゼにおける FAD などが代表例です <補酵素> 10種類ほど存在し そのほとんどがビタミンB群です @補酵素が結合すると 酵素の働きは活性化されます *酵素が反応するとき 基質と一諸に共存することが必要とされ 酵素反応の進行によって基質とともに消費されます *補酵素と酵素の結合は共有結合ではなく ゆるやかな結合です @補酵素が働く反応 *酸化還元反応 *官能基の転移 などです 加水分解反応などの比較的単純な化学反応では 補酵素は必要とされません ちなみに 官能基 とは 有機化合物の構造の基礎である炭素骨格に 結合する原子集団で 水酸基 アミノ基 カルボキシル基 カルボニル基 などがあります 有機化合物の炭素鎖の *どの場所に *どのような官能基が結合しているか によって その化合物の反応性や性質が規定されます また 化学反応の際は 官能基に特異的な酵素の働きにより 有機化合物間で官能基の移動がなされ 化合物の性状が変化します @ビタミンBから出来ていることが多い *食物から摂られたビタミンB群が 体内で修飾を受けて補酵素に変わり機能を発揮します *エネルギー産生につながる タンパク質 糖質 脂質の三大栄養素の代謝反応に 深く関与します 三大栄養素の代謝反応を簡単に復習すると 下図に示されるように *糖質は 解糖系を経てピルビン酸からアセチルCoAになり *脂質は 脂肪酸に分解され β酸化によりアセチルCoAになり *タンパク質は アミノ酸に分解されて それぞれ代謝の最終ステップである TCA回路に流れ込みます 補酵素は これら各栄養素の代謝のさまざまな反応を 円滑に行えるようヘルプし 生体内でのエネルギー産生を支えます @ひとつの補酵素が さまざまな代謝系に対応し得ます *例えば コエンザイムA(CoA)は 置かれた状況により TCA回路 β酸化 の いずれにも関与します @補酵素の種類と機能 *ビオシチン: カルボキシ基化を行う 原料はビオチン *コパミド補酵素: アルキル化などを行う 原料はB12・コバラミン *テトラヒドロ葉酸: 炭酸基転移を行う 原料は葉酸 *チアミンピロリン酸: アルデヒド転移 脱炭酸を行う 原料はB1・チアミン *ピリドキシサルリン酸: アミノ基転移 ラセミ化 脱炭酸などを行う 原料はB6・ピリドキシン *コエンザイムA: アシル基転移を行う 原料はパントテン酸 *NAD NADP: 酸化還元を行う 原料はニコチンアミド ナイアシン *FAD FMN: 酸化還元を行う 原料はB2・リポフラミン <補助因子:ミネラル・金属イオン> Mg Mn Zn Ca Cu Fe などのミネラルは 種々の酵素分子に取り込まれ 補助因子として触媒作用に関与します @関与する反応 *加水分解酵素を含め 補酵素よりも より多くの種類の酵素の働きを補助します @補因子の種類と機能 *亜鉛 アルコールデヒドロゲナーゼ カルボキシペプチダーゼA などの酵素を補助し 細胞分裂 成長 エネルギー産生に関わります *Mg ATPアーゼなどの酵素を補助し ATP産生に関わります *Cu 抗酸化酵素SOD チロシナーゼ アセトアルデヒド脱水素酵素 などの酵素を補助し 抗酸化反応などに関わります *Ca タカアミラーゼなどの酵素を補助し 代謝反応などに関わります *セレン グルタチオンペルオキシダーゼなどの酵素を補助し 抗酸化反応などに関わります などがあります 来週からビタミン ミネラルについて説明しますが 今日解説したように それらの多くが 補酵素 補助因子として酵素反応に関わっていることを 覚えておいてください
高橋医院