芸術家は奔放?
美術館の企画展の終盤 特に最終日はとても混雑することが多いので できるだけ期間の中盤あたりに行くように 心掛けていますが この企画展に行くチャンスがなかなかなくて 今回はパスかなと思っていたのですが やっぱり行きたくなって 最終日に混雑覚悟で出かけました といっても もう一昨年のことになってしまいましたが (ストックしてあるネタを順不動で公開しているので ときどき すごく古い時期の話題になり恐縮です:苦笑) 渋谷の文化村美術館で開催されていた ラファエル前派展 プレ・ラファエル 19世紀中盤 産業革命を成し遂げ 世界に冠たる覇権国として栄華を極めていた ヴィクトリア王朝のイングランド 科学的な合理性が最も尊ばれたその時代 絵画の世界では ロイヤル・アカデミーの権威主義が全てを支配し アカデミーが範として掲げたのは ラファエル以降の古典主義の絵画 そんなアカデミーのもったいぶった権威主義に 反旗を翻した3人の若き画家 ジョン・エヴァレット・ミレイ ウィリアム・ホフマン・ハント ダンテ・ゲイブリエル・ロセッテイ 彼等によって作られた結社が ラファエル前派兄弟団(P.R.B.) 彼等は ラファエル以前の 中世の初期ルネッサンスの画家達の プリミティブな画風を尊び 因習的なものや自己顕示的なものを排し 自然を注意深く観察して忠実に描くことを 旨としました その後 3人の結社はあっという間に分裂しますが ロセッテイのもとに バーン=ジョーンズとウィルアム・モリスらが集い 後期ラファエル前派グループが結成され 彼等の運動は その後の時代に一世を風靡した象徴主義絵画に 多大な影響を及ぼしました ひとことでいうと 19世紀の合理主義を好まない ロマン主義的な心情を持った若者たちによる 権威主義へのプチ反乱で ムーブメントとしては 大きく育ったリ長続きはしなかったけれど その後の絵画の流れに重要な影響を及ぼした というわけです 書き手は 何をかくそう 象徴主義絵画のファンなので 象徴主義の誕生に影響を及ぼした ラファエル前派だから 見逃すことはできないというか それほど積極的に見に行きたいわけではないけれど かといって無視はできない プレ・ラファエルに対しては そんな中途半端なスタンスでして(苦笑) で 予想通り 最終日だけあってかなり混雑していましたが 客層は若い人が多くて 男女比だと女性の方が少し多いかな? ラファエル前派のファンは そんな構成なのでしょうか? ラファエル前派に親しみがある方は P.R.B.の3人のどなたの画風がお好みでしょう? ロセッテイのファンが多いのではないかな と推測していますが 個人的にはミレイの画風に魅かれます 彼のオフィーリアを初めて見たときは かなり感動した というか ドキッ としました! ミレイの画風は ロセッテイのそれとは対照的で 技巧が確かで とても美しい 特に彼が描く女性には ロセッテイが描く このプロセルピナのような強烈な個性はないけれど そこはかとない品を感じます 書き手は 若い頃はロセッテイの方が好みでしたが 今回の企画展を見て 改めてミレイの作品の美しさを再認識しました で 今回 いちばん気になったのが この作品 チャールズ・エドワード・ペルジーニという イタリア生まれのイギリス人画家の シャクヤクの花 という作品 きれいです ミレイの作品に似た美しさを感じました この画家のことは知りませんでしたが ディケンズの娘さんと結婚されたそうな あと ウォーターハウスのこの作品も気に入りました エコーとナルキッソス 右側の 水に写った自分の姿に見とれている少年は ナルシスト の語源になった ギリシア神話に出てくるナルキッソス 寝食を忘れて 自分の美しい姿に見とれているうちに 水仙になってしまう有名な(?:笑)少年です で 初期ルネッサンスの画家達が描いた 敬虔なキリスト教精神に基づいた絵画を 範とした彼等ですが なんと 私生活は敬虔とは程遠く ミレイは ラファエル前派の擁護者となった 美術評論家のラスキンの奥さんを ラスキンと一緒に旅行しているあいだに 口説いて略奪婚するし ロセッテイは 恋多き男として 友人関係にひびが入るほどの数々の浮名を流し ハントは 奥さんの妹に二股かけたりで うーん さすがに 芸術家は奔放?(笑) あ 品のないオチで 申し訳ありませんでした(苦笑)
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