以前 
栄養素としての脂質の解説をしましたから

今日から
脂質が関与する病気
の解説を始めます

<「脂質異常症」という病名になった理由>

昔「高脂血症」という名の
健康関連業界の売れっ子がいましたが

いつのまにか「脂質異常症」
という名前に変わっていたのを
ご存知ですか?

なぜ名前が変わったのか?
今日はその説明をします

昔は脂というと
全てワルモノ扱いされていました

脂をたくさん食べると
肥満になるし 心筋梗塞や狭心症になる

だから
体内に脂が過剰に蓄積する病気は
高脂血症と呼ばれていました

肥満で突き出た腹部

しかし 時代は変わり
善玉脂肪酸・悪玉脂肪酸の項で説明したように

今は 
脂の「量」でなく
「質」が問われるようになってきました

「量より質」と書かれた看板

全ての脂が健康に悪いのではなく
なかには健康に良い脂もあることがわかってきて

健康に悪い脂が体内にたまることは
もちろん良くないのですが

健康に良い脂が少ないことも
体には悪いことが 
明らかにされたのです

つまり

動脈硬化を改善するHDLコレステロールが
低い状態も
健康を害する重大な病気であることが判明しました

体に良い脂が少ないことも
忌々しき病気である

だから
脂が高いことが悪いというコンセプトの
「高脂血症」は正確でなく

体に悪い脂が溜まる状態
*高LDLコレステロール(LDL-C)血症
*高中性脂肪(TG)血症

体に良い脂が足りない状態
*低HDLコレステロール(HDL-C)血症

この3種類の病態を合わせて
脂質異常症と呼びましょう
ということになりました

脂質異常症の定義を示す図


高脂血症から脂質異常症に
名前が変わったのは
こうした理由に依るものです

高脂血症から脂質異常症に名前が変わった理由を説明する図

<日本には脂質異常症の患者さんがどれくらいいるか?>

さて その脂質異常症
日本ではどれくらいポピュラーなのでしょう?

疫学調査によると 
全人口の中で占める割合は

*高LDL-C血症が28%

*高TG血症が22% 

*低HDL-C血症が8%


日本人の1/3が脂質異常症であることを示すグラフ


ほぼ3人に1人という高頻度です


性別 年齢別の脂質異常症の割合を示すグラフ

意外なことに 
女性の方が男性より2.5倍も多いという
データもあります

上のグラフを見ても明らかなように
特に高齢になればなるほど 
女性の患者さんの数が増えてきます

また 男性に比べて女性の方が
昔に比べて患者さんの数が
増えて来ていることもわかります

何回もお話ししているように
女性は閉経後にLDL-Cや中性脂肪が上昇しますから
要注意です

<日本人の血中脂質値は
 昔に比べて増加しているか?>

@LDL-C値

日本人の血中LDL-C値は 
年々増加傾向にあります

食生活が欧米化し 
肉を食べる頻度が増え 
魚は食べなくなった影響が大きい

男性は20~30歳代から上昇し 
それ以降はそのまま高い値で推移し

女性は40代から上昇し 
50代以降にピークを迎えます

性別 年齢別のLDL-C値を示すグラフ

@中性脂肪値(TG)

中性脂肪(TG)値は 
LDL-Cよりさらに増加率が高い

男性は30歳代から 
女性は40代以降に増加し始め

特に中年男性での著明な増加が特徴的で

20~40代女性では 
むしろ減少しています

性別 年齢別の中性脂肪値を示すグラフ

しかもオヤジでは
血中TG値とBMIの間には 
しっかり正の相関関係があります

デブのオヤジは 中性脂肪が高い!

@HDL-C値

善玉のHDL-Cは 
逆に加齢とともに減る傾向にあります

男性は20代で減少して 
そのまま横ばい

女性は50代から減少し始めます

性別 年齢別のHDL-C値を示すグラフ

脂質異常症の実態を 
イメージしていただくことができましたか?

では 脂質異常症だと 
どうしていけないのでしょう?

その理由を次回説明します
高橋医院