ダイエットして摂取カロリーを制限したサルは
生活習慣病にならず 長生きする

カロリー制限で長生きしている猿

そんなセンセーショナルな実験結果が報告され

長生きしたサルの遺伝子解析から 
長寿遺伝子なるものが同定され
一時期マスコミで大騒ぎになったことを 
覚えておいでの方も多いと思います

この長寿遺伝子の正体が
今日解説する サーチュイン遺伝子 です

サーチュイン遺伝子の説明図

<サーチュイン遺伝子とは?>

サーチュイン遺伝子は 
すべてのヒトが持っているもので

ヒトでは 
SIRT1~SIRT7 の7種類が
同定されています

SIRT1~SIRT7の説明図

7種類のサーチュイン遺伝子は
それぞれ細胞内での局在・役割が異なり

7種類のサーチュイン遺伝子の細胞内局在を示す図

SIRT3~SIRT5は 
ミトコンドリアに存在しています

SIRT3~SIRT5のミトコンドリアでの局在を示す図


<サーチュイン遺伝子が持つさまざまな働き>

老化のスピードをコントロールする遺伝子で
主に老化に関連する遺伝子群の
転写を抑制しますが

それ以外にも多種多様な働きがあり
さまざまな臓器で さまざまな機序で 
臓器特異的な作用を示します

*細胞を修復するタンパク質を活性化する

*ミトコンドリアの制御により 
 生命維持に必要なエネルギー量を調節する

*テロメアを保護し 短くなるのを防ぐ

*インスリンの生成やその伝達経路を制御する

*動脈硬化を抑制する

*脂肪細胞の生成を制御する

*記憶調節 アルツハイマーなどの神経変性疾患
 加齢に伴う病気にも関与する


こうした まさに多種多様な機能を有しています


サーチュイン遺伝子の多種多様な機能をまとめた図


<サーチュインタンパクによるエピジェネテイクス制御>

サーチュイン遺伝子から翻訳される
サーチュインタンパク
ヒストン脱アセチル化酵素

サーチュインタンパクはヒストン脱アセチル化酵素であることを示す図

エピジェネテイクス制御で説明しましたが
ヒストンに付いているアセチル基を
切り取る働きを有しています

アセチル基が切り取られると
ヒストンとDNAの結合が強固になり 
ヘテロクロマチン構造になるので
遺伝子発現を開始させる転写因子が
DNAに近づけなくなります


ヘテロクロマチン構造 ユークロマチン構造の差異を示す図

こうした
遺伝子発現のエピジェネテイック制御を行うことで
老化 炎症 生活習慣病などを促進する遺伝子の
発現を抑制し

その結果として寿命が延びる 
と考えられています


サーチュインタンパクがエピジェネテイック制御により老化 炎症 生活習慣病などを促進する遺伝子の発現を抑制することを示す図


<サーチュイン遺伝子の活性化>

サーチュインタンパクは 
体内のあらゆる細胞で発現しています

しかし 残念ながら
サーチュイン遺伝子は普段は働いておらず

働かせるためには 
スイッチをオンにする必要があります


サーチュイン遺伝子のスイッチをオンにする必要を示した図

サーチュイン遺伝子を活性化させる方法としては

*適度な運動

*カロリー制限

*長寿遺伝子を活性化させる
 抗酸化成分・レスベラトロールを摂る

といったことが 明らかにされています

サーチュイン遺伝子のスイッチをオンにする刺激をまとめた図

赤ワインには 
ポリフェノールのレスベラトロール が含まれていますが
活性化に必要な量を赤ワインの量に換算すると
1日にボトル100本前後となり

赤ワインを飲んで
サーチュイン遺伝子を活性化するのは
残念ながら非現実的です


また 冒頭に紹介したサルの実験で明らかにされたように
カロリー制限をするとサーチュイン遺伝子が活性化され
30%のカロリー制限を7週間すると 
ほぼ100%活性化されます

ヒトでもカロリー制限で寿命が延びるかは 
今のところ不明ですが
メタボリックシンドロームの患者さんは
サーチュイン遺伝子がオンになっていないことが
報告されています

ただし 
ヒトでこれだけのカロリー制限を
持続するのは困難ですし

途中で一度でもカロリー摂取量が戻ると 
またスイッチがオフになって
振り出しに戻ってしまいます

サーチュイン遺伝子を活性化させるのは 
なかなか困難なようです





高橋医院