はしか(麻疹)にご注意
最近 当院には 「麻疹(はしか)の予防接種はできますか?」 という問い合わせが 大人の方から何件かきています 沖縄で麻疹が流行していることが ニュースで報じられていますし 先日は 厚労省から ワクチン接種の勧めが呼びかけられました そこで 急遽 麻疹(はしか)について 解説します <麻疹とは?> 麻疹は 麻疹ウイルスによって引き起こされる 急性の全身感染症です @感染力が強く マスクでも予防できない 感染経路は 空気感染 飛沫感染 接触感染で ヒトからヒトへ感染が伝播し その感染力は 他のウイルスに比べ非常に強いのが特徴です 麻疹に対する免疫を持っていない人が感染すると ほぼ100%発症します 麻疹は感染力が強く 空気感染もするので インフルエンザなどと異なり 手洗い マスクのみで予防はできません ちなみに書き手は 亡き父が小児科医をしていたので 小さいときに 麻疹のお子さんの患者さんが来院された際に 診察室に連れていかれ 強制的に感染させられた記憶があります まさに 同じ部屋にいるだけで感染してしまう 空気感染により 強制感染させられたわけですね(笑) <流行> 毎年春から初夏にかけて流行が見られ 発症する患者さんは 0~1歳が中心ですが 最近は 20歳以上の成人例の割合も増加しています @どうして大人の麻疹が増えているか? かつては 小児のうちに麻疹に感染し 自然に免疫を獲得するのが通常でしたが 後述する麻疹ワクチンの接種率の上昇で 自然に感染する人は 少なくなってきています このように 麻疹そのものが減っているので ワクチンを1回接種しても その後の感染者との接触による 免疫強化(ブースター効果)が得られず 時間経過とともに 免疫が徐々に弱まって来ている人がいるため 成人での発症が増加している可能性があります @海外に行って感染して 日本に持ち帰る人が多い 平成27年3月 世界保健機関西太平洋地域事務局により 日本は麻疹の排除状態にあることが 認定されました しかし その後も 海外からの輸入例を発端として 集団発生事例は起こっています 東南アジアなどからの帰国者や 訪日客が持ち込む例が 相次いでいるのです 2018年の動向としては 海外から訪れた人が感染源となって 麻疹にかかる人が 沖縄を中心に急増しています 台湾からの旅行者が感染源で 訪日前にタイを旅行しており そこで感染したとみらます 4月20日時点で 沖縄県内でこの旅行者と接触のあった人 その家族 同僚など 患者数は計67人に上り 沖縄に行った名古屋市の男性も麻疹と診断されました そのため 人の行き来が増える連休に感染が広がる恐れがあり 専門家は適切なワクチン接種を勧めている状況です <症状 臨床経過> @潜伏期 感染すると 約10~12日の潜伏期を経て 発熱 咳 鼻水といった 風邪のような症状が出現します @カタル期 2~3日熱が続いた後 39℃以上の高熱 倦怠感 咳 鼻水 くしゃみ 咽頭痛 結膜充血 などが出現し 2~4日間続きます この時期は 最も感染力が強いので 要注意です カタル期の後半 発疹出現の1~2日前には 口の中の奥歯の対面の粘膜に 隆起した1mmほどの白色斑点(コプリック斑)が みられるのが特徴です @発疹期 カタル期の発熱が1℃ほど下降したあと 半日ほどして 再び39℃以上の高熱が出現する 二峰性の発熱がみられます それと同時期に 特有の発疹が出現します 発疹は 耳後部 頸部 前額部から始まり 翌日には 顔面 体幹上腕 2日後には 四肢末端に及びます 初めは 鮮紅色で扁平 徐々に隆起して 融合して 不整形な斑丘疹になりますが 一部には健常な皮膚も残ります 発疹が全身に広がるまで 39~40℃の高熱が3~4日間続き 症状はカタル期もよりも ひどくなります やがて発疹は 次第に暗赤色となり 出現順序に従って退色します @回復期 発疹出現後 3~4日すると解熱し 全身状態も改善してきます 発疹は退色しますが しばらく色素沈着が残ります @合併症 予後 肺炎 中耳炎を合併しやすく 患者1,000人に1人の割合で 脳炎が発症すると言われています 死亡する割合も 先進国であっても1,000人に1人と言われていますので はしかは 命の危険も伴う 意外に侮れない疾患と言えます その他の合併症としては 10万人に1人程度と頻度は高くないものの 麻疹ウイルスに感染後 特に学童期に 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という 中枢神経疾患を発症することもあります @麻疹を疑うポイント 麻疹の患者さんとの接触の有無 が重要で *症状が出現する10~12日前に 麻疹患者さんとの接触があったか? *人が多く集まる場所にいかなかったか? *麻疹が流行している国に行かなかったか? 初期のカタル期でみられる 普通の風邪と似たような症状があり 上記の条件にあてはまる方は 麻疹の感染を疑い 早目に医療機関に連絡してください <治療> 残念ながら 麻疹に特異的な治療法はありません 発熱などの症状を和らげる治療が中心になります また 感染から回復期までの1か月間は 免疫機能低下を招くので 細菌の二次感染に注意が必要です 最大の防御策は 平時のワクチン接種です ワクチンについては 次回 詳しく説明します
高橋医院