質問に答える「脂肪肝・NASH」
別の企業の健保組合さんは 「あなどるなかれ お酒を飲まない人の脂肪肝」 というタイトルの企画をされ その取材に来られました 前回ご紹介した アルコール性肝障害について取材された健保組合さんは 工場などで勤務される中高年の男性の社員さんが多いので そうしたテーマになったのでしょうが 今回の企業さんは 社会のトレンドに敏感な会社なので 最近巷で色々と評判になっている 「脂肪性肝炎・NASH」に注目されたようです 肝臓の病気に関するテーマの取り上げ方も 企業や健保組合の個性が出ていて面白いですね! さて「NASH・脂肪性肝炎」は NHKが3月末の日曜夜9時のゴールデンタイムに スペシャル番組を放送していた まさに旬な話題で あの番組を見て当院に相談に来られた患者さんも 少なくありません このブログでも既に解説しましたが 健保組合さんからの質問は *脂肪肝とはどのような状態なのですか? *放置すると危険なのでしょうか? *どのような症状が現れますか? *他の生活習慣病との関わりはありますか? *どのように治療するのでしょう? といったものでした NASHって 最近 耳にすることが多いけれど いったい何なの? ということですね!(笑) 例によって そうした質問にお答えする形で取材が進みました @脂肪肝とはどのような状態なのですか? 端的に言うと 肝臓に余計な脂肪が貯まっている状態で お酒を飲まないのに脂肪肝になる場合を 非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)と呼び 日本人の3人に1人が該当すると言われています どうして肝臓に脂肪が貯まるかというと 過剰な栄養摂取により まず内臓脂肪が貯まっていきますが 脂肪の量が内臓脂肪の蓄積能力を超えると 本来は脂肪が貯まらない肝臓や心臓に 「異所性脂肪」として脂肪が貯まってしまうのです @どんな人がNAFLDになりやすいのでしょう? *昔から太っている 最近急に太ってきた *夜食を食べる *早食い ストレス食い まとめ食いが多い *偏食傾向があり 野菜や魚はあまり食べない *甘いもの 脂っこいものが好き *カロリー 塩分を摂り過ぎ *運動不足 *不規則な生活をしている 上記の項目にあてはまるものが多い方は 要注意です ちなみにNHKの特番では *夜食を食べる *通勤や買い物などの移動に車を使う *ジュースなどの甘い飲み物を飲む *20歳の時と比べて10Kg以上太った または最近太った *肉 魚 卵 豆製品など タンパク質の多い食物をあまり食べない *平均睡眠時間が6時間未満 といったことが リスク因子として取り上げられていました @放置すると危険なのでしょうか? NAFLDの10~20%の人では 脂肪が貯まるだけでなく そこで慢性的な炎症が起きてしまい 脂肪性肝炎(NASH)という状態になります 慢性炎症が続くと そこに線維が蓄積してきて NASHの5~20%の人は 5~10年の経過で肝硬変に進行し 肝がんが生じることもあります @どのような症状が現れますか? 症状がないので厄介なのです 血液検査でたまたま肝機能異常を指摘されて わかることが多いのですが あとで説明するように ベースに肥満や糖尿病があることが多いので そうした方は気をつける必要があります またNAFLDからNASHに進展しているかどうかは 原則的には入院して 肝生検検査をしないとわかりません @他の生活習慣病との関わりはありますか? 特に糖尿病と“腐れ縁”があるので 要注意です 糖尿病の患者さんの62%でNAFLDを認め 糖尿病のコントロールが悪いと NASHに進行しやすいと言われています 一方 NAFLDと診断された方は 健康な方に比べて糖尿病になるリスクが 3.5倍も高い このようにNAFLDと糖尿病は腐れ縁ですが 生活習慣の改善 減量により 両方の病気を一気に改善させることができます @どのように治療するのでしょう? 現在のところ NAFLDからNASHへの進行を止めるのに 有効な薬はありません しかし 薬を飲まなくても 痩せれば改善するのです! 最近言われているように 現在の体重の3%を減量できれば 多くの場合はNAFLDの肝機能異常は改善しますし NAFLDの原因になる高血糖 脂質異常症も改善します このように NAFLDは生活習慣病の肝臓バージョンですので まずは生活習慣病にならないようにすることが肝心です 肥満気味の方は 月1Kg トータルで3%の減量を試みて その体重が維持できる 自分にあった生活習慣を見つけてください ということで 脂肪肝のポイントは 糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病と 直結していること 仮に脂肪肝になってしまっても 生活習慣を改善すれば 薬を飲まなくても良くなることです 最近 当院を受診される脂肪肝の患者さんは多いです そうした皆さんと一緒に 生活習慣のどこがマズいのか どうすれば改善できるか 対策を練っていきたいと思っています
高橋医院