中央区・内科・高橋医院の
お酒と健康に関する情報 


アルコール性肝障害のお話をしたので
お酒に関する話題を続けましょう

世の中には お酒が強い人がいます

どんなに飲んでも
ほとんど酔っぱらわず顔すら赤くなりません

「ザル」とか
もっとすごいと「ワク」とか呼ばれますね(笑)

ザルとワクの説明

一方で ちょっと飲んだだけで
すぐに顔が真っ赤になる方もおられます

お酒を飲むと顔が赤くなる人の説明

採血をする時に
腕をアルコール綿で消毒すると
それだけで皮膚が
真っ赤になってしまう場合もあります

世の中 不公平ですね?(笑)


どうして そんな不公平が起こるかというと
いつかご紹介した遺伝子多型によるのです

体質は突き詰めれば遺伝子多型
というお話もしましたが

お酒に強い 弱いも
体質 つまり遺伝子多型が関与しています


でも その話に入る前に
楽しく飲んだお酒が
体内でどのような運命をたどるか説明します


<アルコールの吸収>

アルコールは
胃で20% 小腸で80%が吸収されます

アルコールが吸収される場所

胃での吸収は
胃の中に脂肪分があると遅くなります

知り合いの「ワク」さんは
飲む前にチーズなどを食べて
胃壁を脂肪で覆っておけば絶対に酔わない
と豪語していました(笑)

胃壁を脂肪で覆う方法


ちなみに
アルコール濃度が高いと吸収は速まります

だから 最初からウイスキーとかジンといった
アルコール度の高い蒸留酒を飲むと
酔いが回るのが速くなりますからご注意ください


さて 吸収されたアルコールは
体中の全ての臓器の水分の中に均等に分布します

もちろん脳にもしっかり行くので 酔っぱらう!(笑)

酔っぱらう理由

で 体が大きい人は小さい人に比べて
体内の水分量が多いから
同じ量のアルコールを飲んでも薄まるので 酔いにくい

そして女性は男性に比べ
体内の脂肪が多く水分が少ないので
同じ量のアルコールを飲んでも酔いやすいのです


<アルコールの代謝>

アルコールは主に
ADH ALDHという2種類の酵素で分解されます

ADH ALDHによるアルコールの代謝



@アルコール脱水素酵素(ADH)

アルコール(エタノール)を分解して
アセトアルデヒドにします

この過程で
NADがNADHに変換される反応が同時に起こります

NADはニコチン酸(ビタミンB3)を主成分とし
肝細胞が行うさまざまな代謝の過程で起きる
酸化還元反応の補酵素として働きます

アルコール代謝におけるNADの補酵素そしての働き

ですから アルコールをしこたま飲んで
それを分解するためにADHがとても忙しく働かされ
同時にNADが枯渇してしまうと
さまざまな代謝に不都合が出てきます

特に大きな悪影響を受けるのが脂質代謝系で
脂肪酸を分解するβ酸化が滞り
肝細胞内に中性脂肪が蓄積して
脂肪肝や高脂血症になってしまいます


@アセトアルデヒド

分解産物のアセトアルデヒドは
二日酔いの原因物質です

二日酔いの原因物質であるアセトアルデヒド

不安定で反応性に富んでいるので
強い有害作用があり
生体内のタンパク質や脂質を変性させて
肝臓を傷害します


@アルデヒド脱水素酵素(ALDH)

アセトアルデヒドを分解して酢酸にして
最終的には 水 二酸化炭素 ATP 
に分解されます

エネルギー分子のATPが熱産生に利用されるので
お酒を飲むと体が温まるのです

ALDHによるアルコール代謝


@チトクロームP450
:MEOS(ミクロゾームエタノール酸化酵素系)

アルコールを代謝する第3の酵素で
ADHが50~90%を代謝し
残りをMEOSが代謝します

MEOSによるアルコール代謝

慢性的な大量飲酒で活性が上がる特徴があり
血中アルコール濃度が上がってから(酔いが進んできてから)
働きます

MEOSが働かざるを得ない状況は
酒量が増えている状況で
これが続くとアルコール耐性になりお酒に強くなります

MEOSの増強とアルコール耐性の関連

またADHと異なりフリーラジカルを産生するので
直接的な肝傷害を起こしてしまいます

以前にも説明しましたが
MEOSは薬物も代謝するので
アルコールと薬を一緒に飲むと薬の効きに影響が生じます


次回は お酒が強い人 弱い人 のお話をします
高橋医院