ラグビーと歌
書き手がご贔屓のスポーツジャーナリストで いつもラグビーについて 独特の愛情あふれる文章を書かれる藤島大さんは 「ラグビーは歌だ」 と語られます ちなみに 藤島さんが書かれたこの本は ラグビーワールドカップの歴史と 藤島さんのラグビーへの愛が 存分に味わえます 興味がある方は ご一読ください! さて 確かにラグビーが行われるスタジアムは 試合前も試合中も 色々な歌を楽しむことができます 試合前は 対戦国の国歌・ナショナルアンテムが斉唱され このときは かなりの緊張感があふれる ある意味で厳粛な時間が流れます ピッチでは 選手たちが横1列に並び隣の選手と肩を組んで 自分の国の国歌を 観客席のサポーターたちと一緒に歌いますが このときの選手の表情は 見応えがあるのですよ ある者は 口を真一文字に結んで かっと目を見開いてじっと前を見つめ ある者は 胸に拳をあてて 大きな声で歌い ある者は 少し目を伏せながら うっすらと涙を流す 国の代表として その栄誉を背負い これから試合に挑もうとする選手の意気込みが リアルに伝わってきて 見て 聴いている者の胸を打ちます この前紹介した マイケル・リーチさんの前に ジャパンのキャプテンをされていた 廣瀬俊朗さんは 外国籍の選手が増えた代表チームの 結束を高めるために 外国籍の選手にも 君が代の意味を理解してもらい 一緒に歌うように心掛けたそうです 確かに国歌斉唱の時間は とても大切な時間です 廣瀬さんは今回のワールドカップに向けて 君が代だけでなく スタジアムで試合する国の国歌を全て その国の言葉で一緒に歌おうという 「スクラムユニゾン」 という運動を仕掛けられています 良いことですね! また つい最近出版された 廣瀬さんが書かれたこの本も とても面白いです さて 歌に話を戻して 国歌はまさに 国の歴史や文化を表すものですから ナショナルアンテムには 最初のパートが その国の先住民の言葉で歌われることが 少なくありません ニュージーランドは マオリ族の言葉で 南アフリカは 原住民のコサ語 ズールー語で歌われます ちなみにこの国歌のルーツは アパルトヘイト・人種差別が行われていた頃に 黒人が歌っていた反体制の歌だったので 当初は白人が歌うのを拒否したという エピソードがあります ウエールズは ウエールズ語で アイルランドは ゲール語で 最初に聴いたときは いったい何語で歌われているのか ちんぷんかんぷんで ビックリしたものです(笑) 歌詞は 歴史上の独立の戦いの様子とか かなり血なまぐさい内容と表現が 多かったりします でも そうした歌詞が 選手のファイティングスピリットを かきたてる効果があるのかもしれません 書き手が好きなのは アイルランドのアイルランズコール この歌は 上に紹介したアイルランド共和国の国歌 ゲール語で歌われる Amhran na bhFiannとは異なります どうして そういう事態になっているかというと アイルランド島には 北にイングランド領の北アイルランド 南にアイルランド共和国 があり この国境線をどう扱うかが イングランドのブレクジットが うまく進まない最大の問題になっています しかし アイルランドラグビー協会(IRFU)は 北アイルランドとアイルランド共和国が 政治的に分かれる前から存在していたので ラグビーのチームでは 北アイルランドとアイルランド共和国の 区別がない つまり ラグビーのアイルランドチームは アイルランド共和国と北アイルランドの 混成チームなのです でも協会の主力メンバーは 北アイルランドの人たちなので 国歌としてAmhran na bhFiannを歌うのは 抵抗がある このあたりの事情を もう少し詳しく突っ込むと イングランドで生まれたラグビーが イングランドが支配していたアイルランド島に 持ち込まれたとき 多くのアイルランドの人たちは イングランド憎しの感情があったので ラグビーを快く迎えませんでした だからラグビー協会の主力メンバーは イングランドに近しい 北アイルランドの人だったのです このように 大英帝国の盟主であるイングランドと イングランドに屈服させられた アイルランド スコットランド ウエールズとの関係は とてもデリケートな面があります 今でもスコットランドやアイルランドの 国民感情の根底には 反イングランド意識があるようです そういうわけで アイルランドの国歌とは異なる ラグビーのアイルランドチームの応援歌として アイルランズコールが作られました アイルランド共和国の首都 ダブリンで行われるホームゲームでは 最初に Amhran na bhFiannが 次いで アイルランズコールが 順番に歌われます 最初に聞いたときは 国歌が2種類あるのかと思いましたよ!(苦笑) でも アウェイの試合では Amhran na bhFiannは歌われず アイルランズコールだけなので 今回 日本で開かれるワールドカップでは Amhran na bhFiannは聞けません さて 話が脱線しましたが 書き手はアイルランスコールの アーイルランド アーイルランド と連呼が繰り返されるサビのところで かなり涙腺が刺激されます(笑) それから スコットランドの フラワー オブ スコットランドも 荒々しいラグビーには不釣り合いの(?:笑) 優しいメロディ(歌詞は過激だけど)が素敵です また試合中には 観客席から 選手たちを鼓舞する応援歌が 地響きのように鳴り渡って聞こえてきます イングランドのホーム トゥイッケナム競技場で スゥイングローと呼ばれる応援歌が 自然発生的に観客席で歌われはじめて 会場全体を包み込んでいく様子は まさに圧巻です! この映像は トゥイッケナムでの イングランドとオールブラックス戦で オールブラックスのハカに 観客がスゥイングローで応えている場面 迫力があるでしょう? 太鼓や鐘を鳴らす応援もいいですが 歌の合唱による応援の方が 書き手は好きです ジャパンの素敵な応援歌ができないかなと いつも思ってるのですよ
高橋医院