当院に定期的に来院される
愉快な中年の白人男性がおられますが

つい先日 来られて

まず
書き手が座るイスと患者さんが座るイスの距離が
ソーシャルディスタンスより短いと言われ
患者さんのイスを後ろに引いてから
(このあたりはこだわります:笑)

こういうご時世だから 
薬は2ヶ月分欲しいな
それからクロロキンもちょうだい

と言われました

クロロキン?
アフリカにでも行くの?

ドクター 知らないの?
最近 欧米では 皆 
新型コロナウイルスが怖くて
いざというときのために
クロロキンをお守り代わりに持っているのだよ

クロロキンを持っているマスクをした人

えっ そうなの?

勉強不足の書き手は
BCGについで 今度はクロロキンの
勉強をすることになります(苦笑)


クロロキンは
元来 マラリアの薬で
構造が類似したヒドロキシクロロキンは
一部の自己免疫疾患の治療に用いられていて

最近は 
新型コロナウイルスへの効果が
注目されています

クロロキンの説明図



昨日 お話ししたように
新型コロナウイルスの治療薬として
既に他の疾患の治療に使われている薬が
色々と試されていますが

試されている治療薬をまとめた表

クロロキンも その有力候補のひとつです


どうしてクロロキンが
新型コロナウイルスの治療薬候補に
なったかというと

中国で行われた基礎実験で
クロロキンには抗ウイルス作用があることが
明らかになったからです

実験室で シャーレで培養された細胞に
新型コロナウイルスをふりかけると
ウイルスは細胞に感染して増殖します

クロロキンのウイルス増殖抑制効果を示す図

最下段の緑に見える細胞が
新型コロナウイルスが感染して
増殖している細胞ですが

その上に見える3段の細胞では
クロロキンが投与されていて
下から上にいくにしたがい
クロロキンの濃度が増えると
緑の感染細胞が減っているのがわかります

このように
クロロキンは濃度依存性に
抗ウイルス作用を示すのです

抗ウイルス作用は
新型コロナウイルスだけでなく
インフルエンザウイルスなど
他のウイルスでも認められます


また 
このグラフはさまざまな条件下での
クロロキンの抗ウイルス作用を示すもので

クロロキンの抗ウイルス作用を示すグラフ

ピンクのバーは
新型コロナウイルスを感染させる前に 
細胞をクロロキンで処理し
そのままクロロキンを含む培養液で
培養を続けた場合

緑のバーは
新型コロナウイルスを感染させる前に 
細胞をクロロキンで処理し
クロロキンを含まない培養液で
培養を続けた場合

紫のバーは
細胞をクロロキンで前処理せず 
新型コロナウイルスを感染させ
クロロキンを含む培養液で
培養を続けた場合で

新型コロナウイルスが細胞に感染する前から
クロロキンで処理し
ピンクのバーで示す
感染後もクロロキンが存在する場合が
新型コロナウイルスの抑制率がいちばん強く

ウイルスが感染した後に
クロロキン処理した紫のバーでも
ウイルスを抑制するけれど 
抑制率は低くなることがわかります

このように クロロキンには
新型コロナウイルスの
感染予防 増殖抑制作用があり

さらに詳しい研究により
新型コロナウイルスが細胞に感染し
内部で脱殻して自らのRNAを放出する過程を
クロロキンは抑制することが 
明らかにされました

クロロキン作用機序を説明する図


こうした基礎的なデータをもとに
実際に新型コロナウイルスに感染した患者さんに
クロロキンが投与されました

クロロキンを投与した患者さんの臨床経過図

すると 赤の折れ線グラフで示すように
クロロキンが投与された群では
投与開始後 日を追うごとに
PCRでウイルス陽性の患者さんが
減ってきました

フランスで行われた検討では
紫で示すクロロキンだけでも効果がありますが
緑の折れ線グラフで示す
抗生物質のアジスロマイシンを併用した群では
さらに良好な効果が得られました

クロロキンとアジスロマイシン併用の有用性を示す臨床経過図


日本でも 
新型コロナウイルスに感染したふたりの患者さんに
クロロキン投与が試みられ

クロロキン投与後に
CTで肺炎像の改善を認め

CTで肺炎像の変化を示す図

発熱も改善しました

クロロキン投与による発熱の改善を示す臨床経過図

ということで 中国 フランス 日本などで
クロロキンの新型コロナウイルスに対する
治療効果が認められたことから
各国でクロロキンの臨床試験が開始されています

開始されたクロロキンの臨床試験について説明する文書

次回も このお話をつづけます

 

高橋医院